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異世界で屋台を開いたら、10番目の客が俺を故郷へ連れ帰るらしい  作者: ひろボ


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8/8

第8話 大食いのドラゴン娘が襲来。店の食材が危機に瀕する

 路地裏屋台『向』の八日目。今日も常連客はやってきたが、今回はこれまでの客とはレベルの違う厄介な客が加わった。


 正午を過ぎた頃、路地裏の入口に、鮮やかな赤い髪を持つ、かわいらしい少女が立っていた。見た目は十代前半だが、瞳は鋭く、全身から強力な魔力を発している。ドラゴン娘だ。


 少女は拓海を見るなり、目を輝かせた。


「あ! あんたが、あの噂の! 香りが最高だ! 私、お腹が空いた!」


「いらっしゃいませ。ご注文は?」


「えーっとね、ラーメンと唐揚げと、カレーライスと、パンケーキと、プリンと……全部! 大盛りで!」


 拓海は絶句した。今までで最も、桁外れな注文だ。常連客たちが食べる量を合わせたよりも多い。


「お客さん、うちの屋台、そんなに食材の在庫がありませんよ。特に肉と米は限りがあります」


「えー! ケチ! 私はドラゴンだぞ! ドラゴンが食べたいって言ってるのに、ケチな人間め!」


 少女はそう叫ぶと、ブシュッと鼻息を荒げた。その鼻先からは、熱い炎が漏れ出し、屋台のテントを焦がす寸前だった。


「わ、わかりました! あるだけ全部作ります! ただし、屋台は燃やさないでください! 代わりに、今日の新メニュー『牛丼』をサービスしますから!」


 拓海は慌てて全メニューの調理に取り掛かった。特に牛丼は、今日の仕込みのために、異世界の牛肉を大量に購入しておいた自慢の一品だ。


 牛肉を玉ねぎと共に醤油ベースの特製タレで煮込む。その甘辛い香りが路地裏全体に広がり、ドラゴン娘の興奮をさらに煽った。


 ラーメンの丼は特大。唐揚げは山積み。カレーライスはルーが溢れんばかり。そして、牛丼は丼二杯分に山盛りにされた。


 ファフナは、まるで何日も飢えていたかのように、それらを猛烈なスピードで食べ始めた。


「熱々だ! でも、美味い! 味が! 味が爆発してる!」


 彼女はラーメンを熱々のまま一気にすすり、唐揚げを骨ごと(拓海は慌てて制止したが間に合わなかった)平らげた。牛丼を一口食べたとき、彼女の目は最高潮に輝いた。


「この甘いタレと肉! そして米の組み合わせ! これは、今まで食べた何よりもエネルギーを感じる!」


 ファフナは、拓海が止めようとする間もなく、テーブルに並んだ全ての料理を、あっという間に完食した。その間、わずか十分足らず。


 拓海は、嵐が去った後のような屋台と、空っぽになった冷蔵庫を見て、頭を抱えた。


「在庫が完全に尽きた……。今日中に食材を仕入れに行かないと、明日は営業できない」


 思わぬところで、この屋台の最大の問題点である「仕入れ」の困難に直面した。


 ファフナは、満足げに腹をさすりながら、拓海に言った。


「ねえねえ、料理人! あんたの料理はエネルギーがすごい! 私、力を使いすぎていつも腹ペコなんだ。明日も来ていい?」


「明日ですか……。食材の仕入れからなので、時間がかかりますが」


「決まり! 私、あなたの常連になる! 私の名前はファフナ! また明日、大盛りを頼むからね!」


 ファフナはそう言って、満足げに笑い、小さな翼を使って路地裏の屋根の上から飛び去っていった。その背中には、可愛らしい翼が確認できた。


 拓海は空になった冷蔵庫を見て、改めてため息をついた。


(十番目の客が来る前に、屋台が飢えたドラゴンに潰されるかもしれない……)


 屋台の片隅で、頭の中でカチリと音がした。


『第八番目の客:ファフナ(ドラゴン娘)。カウントダウン、残り二人』


 十番目の客まで、いよいよ残りは二人となった。この危機をどう乗り越えるか、拓海は思案するしかなかった。


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