表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で屋台を開いたら、10番目の客が俺を故郷へ連れ帰るらしい  作者: ひろボ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/31

第24話 最終危機。屋台の消滅を企む異世界の支配者

 路地裏屋台『向』の二十四日目。拓海が最後の常連客との交流を終え、十番目の客を迎える準備が整った矢先、路地裏はかつてない静寂と冷気に包まれた。神官クロノスのターミナル・ロックの魔力が路地裏全体を覆い、屋台の周囲の空気が重く澱んでいる。ターミナル・ロックのせいで、屋台の換気扇や照明は激しく点滅し、いつ完全に停止してもおかしくない状況だった。


 今日の午後の営業中、神官クロノスが路地裏に現れた。彼のローブの赤は血のように濃く、杖の先端から放たれる魔力は、路地裏の石畳を凍らせるほどの冷たさだった。クロノスは、路地裏に集まってきた常連客たちを冷たい目で見下ろした。


「拓海。貴様の料理は、人の心をあまりにも変えすぎた。帝国美食学院の主席を堕落させ、騎士団の規律を乱し、貴族に庶民の味を覚えさせた。これ以上の変革は、我々支配者層にとって脅威だ」


 クロノスは冷酷に言い放った。「貴様は、帰還の資格を持たないまま、この世界の秩序を破壊した。よって、私はこれ以上の混乱を防ぐため、貴様のターミナル(屋台)を強制的に消滅させる」


 クロノスは杖を掲げ、強力な消滅魔術を発動させた。屋台の周囲に、ねじれた闇の魔力が渦を巻き始める。その魔力の渦は、ただ屋台を壊すだけでなく、拓海が持っている異界の知識のすべてを、無に帰そうとしているかのようだった。屋台の鉄の骨格がきしみ、照明は激しく点滅した。


「十番目の客が来る前に、貴様の屋台は、この路地裏から完全に消滅する。そして、異界の知識も全て、無に帰す」


 拓海は、この魔術が本気であることを悟った。彼は咄嗟に、ファウストから託された結界魔術の起動符を握りしめる。しかし、一度起動させれば、屋台のすべての機能が停止してしまうかもしれない。それは、常連客との最後の別れを阻むかもしれないという葛藤が、拓海の心を一瞬よぎる。


「クロノス神官!止めてください!俺の料理は、この世界を良くしている!」


「黙れ。貴様の感傷的な料理は、秩序の敵だ」


 消滅魔術の渦が屋台に迫る。そのとき、常連客たちが、この危機に気づき、路地裏に駆けつけてきた。ザンバは剣を抜き、ファフナは鼻息を荒げ、バルカスは必死に屋台の鉄骨を支えようとする。


 そのとき、シルフィードが、銀の甲冑を纏い、十数名の騎士団員を率いて路地裏の入口に現れた。彼女の剣は鞘に収まっているが、その顔には揺るぎない決意が満ちている。


「クロノス神官!お止めください!我々騎士団の命令で、この屋台を保護する!」


 シルフィードの命令は、騎士団の古い慣習に対する、命がけの反逆だった。彼女は、個人の愛と、公的な使命が両立できることを、拓海のハンバーグから学んでいた。彼女は、この屋台を守ることが、愛する人間族の婚約者との未来を守り、騎士団の真の使命を果たすことだと確信していた。


 クロノスは驚愕した。「シルフィード!貴様、私の命令に逆らうのか!?」


「神官。騎士団は、帝国の秩序を守るために存在します。拓海の料理は、私たちに真の勇気と希望を与えた。あなたの言う『秩序』は、人の心を無視した古い慣習です。その希望を消し去ることは、秩序ではなく、暴虐です。この屋台は、すでに帝国の最も価値のある資産となった」


 シルフィードは、愛する者を守り、騎士団の使命を果たすという、二つの決意を胸に、クロノスに剣を向けた。彼女の決断に、十数名の騎士団員も剣を構え、路地裏の入口を固めた。


 クロノスは怒りに震えた。「愚かな!貴様らごときが、古代の遺産の管理者である私に逆らえると思うな!貴様の愛する者も、この秩序の崩壊で苦しむことになるぞ!」


 クロノスは、騎士団に向けても魔術を放とうとした。路地裏に集まった常連客たちと騎士団の間で、一触即発の危機が迫る。


 拓海は、もはや躊躇しなかった。彼は、ファウストの起動符を地面に叩きつけ、同時に、屋台のコンロの火力を最大限まで引き上げた。彼の目は、クロノスの脅威を恐れることなく、料理人としての情熱の炎を燃やしていた。


「俺は逃げない!俺の料理が、この路地裏と、皆さんの絆を守る!」


 ファウストの魔術が発動し、屋台の周囲に目に見えない強固な結界が張られた。クロノスの消滅魔術と結界が衝突し、路地裏全体が光と衝撃波に包まれた。常連客たちは、結界に守られながらも、クロノスの圧倒的な魔力に、顔を覆った。


 拓海は、結界が崩壊する寸前で、心の中で叫んだ。(クロノス、あなたの心を溶かすのは、この結界ではない!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ