創作の基本
今回は健が本格的にラノベを書き始めます
神戸の中心地、三ノ宮駅の地下へ続く階段の近くで俺は立ってスマホをいじっていた。
画面は当たり前のように小説投稿サイトが写っている
すると駅の出口からこちらに向かって手を降っている人影が見えてスマホを仕舞う
「待った?」
「いや、いま来たとこ」
恋愛系作品のテンプレのような会話をしながら俺達は階段を降りていく。
地下はスーパーと地下鉄の駅、更には他の地下街との接続通路があちらこちらに繋がっている。
まぁ、"ダンジョン"と揶揄される梅地下(梅田地下街)などよりは遥かマシだがそれでも迷いそうになる。
そんな地下街を尻目に俺達は定期を当てて地下街の駅に入る。
ホームには既に黒と緑、シルバーを基調とした車両が止まっている
「何とか間に合ったね」
「あぁ、間に合わないかと思った」
ドアが閉まって、発車する
なぜ、俺が朝から一葉先輩に会っているかと言うと……
実際に一葉先輩と過ごしてみて、それを小説に落とし込もうと考えたのだ。
その後は少し地下鉄に揺られて駅を出ると、学校までは坂になっている。
そしてこの坂こそ、俺と一葉先輩が出会った場所だ。
「出会ってからそんなに経ってないけど、なんか 懐かしい」
「確かにな」
あのガードレールのところにあったんだよな
俺は改めて見る
よくあそこで見つけれた物だ。
もしも柵の陰にあったら見つけられなかっただろう
「でもやっぱりこの坂はしんどいね」
「なんて言うか、もはや山登りだよな。これ」
「うん。かなり傾斜がキツイからそう感じるのかも」
そうこうしていると校舎が見え始めた。
さて後はこの会話をどう小説に落とし込もうか……
~放課後~
俺は再び生徒会室に居た
副会長が用事で居ないので手伝ってほしいと呼ばれて来た訳だが……コの字に置かれた机には前回の比じゃない量のプリントが乗っていた。
そして真ん中の机に一葉先輩は座っていて、いつもは長い髪をポニーテールにしてまとめていた。
「健君。ごめんね、手伝いに来てもらって」
「いや、別に放課後は暇ですし、それにこの量を一人でっていうのは無理があると思いますし」
「そう?なら良いんけど」
「じゃあ取り敢えずここ座りますね」
「あ、うん」
その後俺達はプリントの山を片付けながら話していた。
「やっぱり一から小説を書くのは難しいなって改めて思いました」
「一から?」
「はい。今まで二次創作は何回も書いたことあるんですけど、一からのオリジナル話は2回目くらいで」
「何か手伝えることがあったら言って」
「分かった」
すると一葉先輩がプリントから顔を上げて言う
「健くんってさ・・・・・わたしの、どういうところが良かったの?」
俺は思わぬ問いに黙る
定期入れを拾って、その時感じた気持ち。それがあったからヒロインになってほしいと思った。
まぁ、"見た目や声しか知らない"と言われればそれまでだが……
でも言われてみれば出会ってから色んな一葉先輩、会長姿以外の先輩も観てきた気がする。興味津々だったり、心配してくれたり……
そんな事を思っていると一葉先輩が口を開く
「私、地味だし、友達って言っても幼馴染の智佳ぐらいだし、だからって今以上にたくさん作ろうって勇気もないし」
気付けば俺は立ち上がっていた
「それが良いんじゃないですか!」
「え!?」
「生徒会室だけど物静かで優しくて、頼りになって、他人の心配も出来て、偶に見せる興味津々な所とか、照れてる表情とか、とにかくそんなギャップのある女の子に萌えない男なんて居ないですよ!」
俺は自分でも驚くくらい一気に告げた
でも完全に本心だ
アニメだって漫画だって、それこそラノベだって"ギャルゲー"の彼女だってそうだ。
可愛いだけじゃない。そこに普段見せない表情…つまりギャップがあるから萌えるし、推しになるんだと思う。
「そ、そうかな……」
一葉先輩は俯きこそしているが顔が耳まで真っ赤になっていて照れてるのは明らかだった。
その後も黙々とプリントを片付けた。
ガラガラ
「終わりました」
あれから1時間、俺の分は片付け終わり、一葉先輩の方を見る
すると一葉先輩も終わりかけまで来ていた。
「手伝いますけど…」
「もう少しで終わるから、先に下駄箱入ってて良いよ」
「は、はーい」
俺は言われた通り下駄箱へと歩き出す
にしても生徒会ってアレだけの仕事があるのか…一葉先輩にも貸した生徒会シリーズで読んだことがあったが、あの作品だと主人公がハーレムする為にこの仕事を放課後に一人でしてるんだもんな。尊敬するなぁ……
それから数分下駄箱で待っていると一葉先輩が降りてきた。
いつもの間にか髪型もポニーテールから戻していた。
学校を出て坂を下る。
俺はまたあの場所に視線を向ける
ここだよな……
すると手に何かが乗せられた事に気付く
それはあの時拾った定期入れだった。
俺が意味が分からず突っ立っていた俺に、一葉先輩は
「"あの日のやり直しだよ"」
一葉先輩は今しがた来たかのように前に立つ
「"すみません。拾っていただいてありがとうございます"」
あの時と同じ言葉を一葉先輩は俺に告げる
俺は慌てながらも冷静に答える
「こ、これ一葉先輩の?」
(あ、やべ)
癖で名前を言ってしまった
「はい、そうです。"木下健君"」
一葉先輩は俺のミスをカバーするように俺の名も言って、あの日のようにペコペコと頭を下げる
演技だと分かっていてもドキッとしてしまう。それぐらい可愛い。
(ん?)
今、可愛いと思った。これこそあの時書きたかった事じゃないのか!
そうだ。これまで過ごしてきて気づけた事。
そして現実とは違う。そんな一葉先輩も見てみたい。
現実で叶わないことを"創作"する
"なんだ、まるっきり創作の基本じゃないか"
今直ぐ書きたい衝動にかられる
「何か、お礼をしたいのですが…」
(あの時こんな事言われてないよな)
「あ、えーと」
「何も言わないなら無効」
一葉先輩が悪戯な笑みを浮かべながら言う
「じ、じゃあ、俺の"ラノベ"のヒロインになってください!」
あの時のやり直しとばかりに言い直す
「分かった、君のヒロインになってあげる」
「だから"健"君も主人公になって」
「一葉先輩、ありがとう」
あの時言えなかった言葉
その後、俺達は契約の証としてあの時出来なかった握手をした。
流石にキスを出来るほどの仲では"まだ"無いと思ったから。
最後までお読み頂きありがとうございます
今回は少し書くのに苦労しました。
ただ冴えカノ原作を読んで創作の基本を思い出したらスラスラと2日で書き上がりました。
次回もお楽しみに!




