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フライングガール!  作者: Jack...
8/18

原田凛音のユウウツ

といっても某有名ラノベとは関係ないよ、の、原田凛音です。


背が高いのがちょっとコンプレックスだと思ってたけど、もっと高い女子が多い1年B組に来て、幼馴染で腐れ縁?の桃花こと山田桃花といっしょにクラスマッチの女バスにエントリー?したところです。


しょーじき、人見知りです。打ち解けるまで基本、時間かかる・・・


なので、友人関係は桃花とだいたい一緒。桃花も私を連れまわしたがるし、私も桃花の影に隠れているのがラク。


背の高さこそだいたい一緒だけど、陽と陰。・・・とまではいわないけど、積極的なのと無難好きくらいの差はあるよね。


まぁそれこそ幼稚園から中学までずっといっしょだから性格もお互い把握してる。クラスもだいたいそう、ミニバスから中学のバスケ部も一緒、中学で学年トップクラスだったのも一緒。


まぁ、ここはこのあたりの学年トップクラスだけが受かる高校だし、中学のときに中央受けるって決めて、その時の中央高の先輩にこう言われたのも覚えてる。


中央高(ウチ)くるの?いいと思うよ。ここに来てちゃんと卒業すれば挫折を乗り越えるって経験が、みんなより一足先にできるからね。あなたたち、いままでずっと、1番2番3番くらいの成績なんでしょ?ウチは成績下位者、張り出しZ組といわれる赤点組も全員中学までは学年トップクラスだからね」


「だいじょーぶ。そんなにコワがらなくても。一時的にクサって赤点組になっても、ちゃんと勉強すれば平均点付近までは戻れるから。さすがに元学年トップ組だしね。」


「張り出しZ組というのは、中央高(ウチ)、定期テストのベストとワーストの30人の名前を張り出すの。左側が優秀者30名、順位そのまま、右側にワースト30名、アイウエオ順。ご丁寧にも右側は赤文字でねww。なので、ワースト側は順位はわからなくなってる。赤文字なので実際には赤点でなくても赤点組とか、習熟度別クラスの最下位的なモジりでZ組と言ったりするわけ」


「実際に赤点になるヒトもいるよ。いままでとは違う順位、カンタンに言うと中学ではクラストップだったのにイキナリ最下位になったりしてモチベなくして勉強しなくなっちゃった人とか。復活できないヒトもいるみたいだけど、補習を受けることも含めて、赤点さえ回避すれば卒業も大学進学もできるし。ま、中央高(ウチ)で下の中なら、偏差値50の高校なら上の下か中の上だからね」


当たり前の話だけど、学年トップクラスばかり320人合格するんだから、1位から320位まで容赦なく順位は付く。


下位の順位の人ほどショックを受けるのは容易に想像が付く。それが自分にも該当するんだ、という事は新歓テストを受けるまで気付いていなかったのかもしれない。それに気づかせるための新歓なのかも、とすら思った。


積極的な桃花と、引っ込み思案とまではいわないものの、無難な選択をしがちな私。成績は私がほぼ学年トップで、桃花は、ちょっと言いづらいけど何とか学年トップクラスに片足つっこんでもう片足で必死に蹴って付いてくのがんばってた感じ。


自分の復習にもなるからイヤじゃなかったけど、テスト前、塾の集中講座後、そして中央高入試前、何度も繰り返した『二人勉強会』がなかったら桃花は中央高(ここ)には来れてない可能性のほうが高かったと思う。


いや、恩を売りたいわけじゃないよ。対人関係では桃花に頼りっぱなしだったし、学力がないわけじゃないけど、スポーツと違って、勉強では理解するきっかけをつかむのがあまりうまくない彼女にコツを教えていたくらいの気持ち。実際、部活引退後は勉強時間は桃花のほうが多かったと思う。


逆に学力関係じゃなくてスポーツ、バスケに関しては彼女のほうがすばらしかったと思う。全国代表になれるレベルだとは思わないけど、中学の部活レベルなら県大会出場、運がよければ優勝くらいは狙えたと思う。実際中三のときは同じチームで桃花がキャプテン。


ポイントガード兼パワーフォワードの司令塔型オールラウンダー。私が3ポインター兼ディフェンダーの副司令塔。一応中学の部活では大きなほうだったので、桃花が攻めこんで点取ったけど、速攻で返されたときの守備の要的な存在で、速攻を止めれたときの攻撃の起点。


ミニバスを始めてからしばらく、小五のころから二人とも「大きな女子」だったので私達はみんなより少し、有利だった。でも桃花は単純にバスケが好き、そして私は背の高さが有利なスポーツだから好き、という違いがあったと思う。中学入学時は男子を入れても大きいほうだったけど、中三までにどんどん男子に抜かれていった。まぁ、バスケは男女別なのでそこまでは気にしなかったし、大きくて目立つのはいい加減飽きていたので助かった。

バスケが本当に好きになったのは中三のころ、つまり中学最後の夏だったんじゃないかな。


県大会の最終日(といっても連続していない二日間だけど)の初戦、ベスト8戦は知らない相手だったけど、実力拮抗してた。自分たちでいうのもなんだけど、本当にいい試合だったと思う。そのいい試合、最後私が3ポイントを打って、クルクルとまわったけどなんとかリムイン!!で、1点差。残り20秒ちょい。相手はブザービーター狙い?に来たけど中学部活でそんなの入るわけないし早すぎるでしょ。十数秒をドリブルとパスで逃げきった。速攻されて2点取られていたら負けだったかもしれない。


でも準決勝、三決、決勝と試合は続く。そこに挑めるだけの体力が足りなかった。


桃花は「あと二つ!!いけるいける!!」と言っていたけど、みんな難しいとわかっていた。コートは2つ、ベスト8なので、前半と後半で実質的な休憩時間が違う。リムにひっかかっただけのシュートが入ったのはラッキーだったかもしれないけど、トーナメント運は無かった。ウチは後半でしかも延長2回の激戦後。相手は優勝候補。前半で楽勝している。


それでも桃花は薄めたスポドリを浴びるように飲みながら「リオン、最後の3ポイントナイス!超ベストだよ!次も頼むね!!」・・・他のチームメイトにも同じように褒め言葉で激励してた。あー、こうゆう桃花のこと好きだよな。私。できないもんなぁ、自分では。もう無理でしょ、と口に出さないのが精一杯。態度には出ちゃってたと思う。


ベスト4の試合。もちろん負けた。でも収穫もあった。


1Qはまだ僅差でなんとなかった。2Q以降はどんどん差がついていく。理由はカンタン。疲れの差だけでなく強豪は層が厚い。相手はベンチ入り15人。こちらは試合に出しづらいレベルの部員を入れても12人しかいない。でも、走り疲れた選手を休ませるためにも全員出すしかないし、それでファールを取られてしまって点も取られる。ボコボコにやられるよりはフリースローされるほうが、いくらか休めるけど、点差は開く。

桃花は休んでいない。私もほとんど休んでいないけど、数分だけ下がらしてもらった。数分でも違う。


4Qの最後のタイムアウト。桃花は言った「ここまできたら気合だー!!。勝てる可能性は少ないけどゼロじゃない!!副主将のリオンが嫌いな言葉だからずっと言わなかったけど最後は気合と根性だーー!!」

自然と笑いが漏れ、私もつい笑い、そして円陣を組み、嫌いな言葉でしめた「桃花ー!!それは言わない約束だよー、みんなー円陣組むぞーーー!!笑顔と根性でいくぞーーー!!」「「「「「おー!!!!」」」」」


気合と根性で数分くらいは持ち直したけど、もちろん負けた。点差をこれ以上開かせないのが精一杯だった。自分もかなり遠いところからヤケクソ3ポイントを2本も入れた。

正直、桃花も私もみんなも、もう、ロクに走れないので攻撃で上がったら戻ってこれなかっただけ。

最後は相手にこっちのゴールにリバウンドを押し込まれて、時計見たら残り3秒。

万が一狙いでのブザービーター狙いも投げたけどもちろんカスりもせず試合終了だった。

でも、私の気合と根性も少しはあったってことだって信じたい。


負けたけど笑顔・・・は無理だった。がんばって笑顔を作ろうとしたけど、悔しくて泣いた。

私はそのとき、本当にバスケが好きになったんだ、と思う。


「・・・リオン、ごめん。限界来ちゃった・・・」


なぜ桃花があやまるの?と思ったが、こういうヤツだったとすぐ思いだした。


「桃花、私こそ、科学的な練習とかばっか言ってて・・・ただ単に量を走る練習も必要だったね・・・」


「でもさ、ここまでこれたしリオンの戦略も好き、うん、やっぱりあたしバスケ好き。結果はクヤしいけど・・・」


・・・


「それにね、さっき握手のとき、むこうのキャプテンに最後のネバり、ヒヤっとしたよ、と言ってもらったんだ。もう引退だけど、高校でもできるとしたら、科学的な練習、リオンの戦略、気合と根性、全部入りでやりたいね」


ずるいなぁー。桃花は・・・私はぼそっとつぶやいた。


「私もね、ミニバス以来、はじめてバスケが大好きって思えたよ」


「えーーーっ!!今???、6年か7年よ??今そんなこと言うの??リオン???」


その困惑はもっともね。私だってバスケが大好きになったの、自分でビックリしてるもの。


「でもさ、私、中央高志望よ? なーんも教えないとは言わないけど、勉強もがんばんないと高校でチーム組めないよ!」


「あーー!今それ言う??わかってたけど!!今それは、別の意味でメンタルに来るんですけどーー!!」


私もわかってて言ってるしね。それに私だって100%合格できる自信なんて無い。


           ・・・


さっき言ったとおり、私も勉強し、桃花は私以上に勉強してここに来た。

通称マイティという天才的恐怖神の噂は話半分にしても恐怖ではあったけど。


実際会ってみたら、怖い雰囲気はあるけど、内面は・・・いいかたおかしいけど人間だよね、って。


なので論理的に反論するだけで殴られたり蹴られたり、というのは無いと思い、気合を振り絞って話をしたら、ちゃんと話せる人だった。うん、桃花、気合って大事だね。


私、こういう人のほうが打ち解けられそう。地獄(ウラ)の副官的なポジションになって、にこにこジョージくんをえげつない事も平気でできる表の副官に育てるというミッションが与えられそうな気もするけど。

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