フライングガール---高嶺祭のクラス展示
水野です。
学くんが泣いています・・・
気持ちはわかります・・・
「うう・・・うん、シナリオ通りだし、すごくいい映像だよ・・・」
「はい、GPUクラスターを使わせていただき、全力で出力いたしました!」
全力ね・・・いつもニコニコのジョージくんだけど、今日は顔色も悪いし笑顔にも疲れが見えまくり・・・いつもはピシッと立っているけど、今日はややフラついているし・・・相当無茶したみたいね。
「ねえ、水野さん、GPUクラスターなんてものを使うと、元の動画よりすばらしい動画なんて作れたりするの?」
私には分かり兼ねます・・・ジョージくん?
「GPUクラスターというのは、AIや、画像合成などに使うGPUというものを搭載したサーバを一群にしたものだそうです」
それもマイティさんの持ち物なの?
「さすがにそれは無理なお値段だそうで、マイティさんのお父上の会社の資産だそうですが、寝かせていても無駄なので、理由があれば使わせてもらうことができるんだそうです」
そういえば、カントクから聞いたけど、安くなったけど億円単位の何かがあるみたいな話があったよね? それのこと?
「はい、そうです。CPUもGPUもメモリもNVMeのストレージもバリバリに積んであるそうです」
よくわからないけど、凄そうだってことだけはわかったわ。でも、ここまで別物の映像に仕上げる必要はあったのかしら・・・
「マイティさんもそうですが、よくわからないときは取り敢えず全力!という感じで、色々と教えていただいた会社の方もノリノリになった結果、こうなりました」
オープニングにした例のスライダーの滑走シーンは完全に別物・・・あれが元になっているのは、ターンの角度なんかで関係者ならわかるけど、服装がまったく別物よね・・・
ヘルメットなんかの自転車装備も全部消えてて白ロリ?衣装をなびかせてアルカイックスマイルで飛び始め、ターン後に分裂して色々な衣装で飛んでいるところをカメラ位置も変化させながら、最後は後ろ姿から前にパーンしてもう一度後ろ姿にパーンしたところで飛び去っていく・・・
確かにかっこいい映像だとは思うけど、元のアイデアもみんなのスマホで撮った動画も入れてスタッフロールの時間を稼ぐ、とはまったくの別物だよね。
スタッフロールを入れる時間は確かに充分あるよ。
それに、マリカ達、中条さん一派は物凄く喜びそうだけど・・・
「はい、葵さん、マイティさんの父上の会社の社員さんですが、『本編の話はまとまっているんだから、アタマで圧倒しちゃえ』だそうです。あ、アタマというのはオープニングのことです」
ああ、社員さんにヘルプをお願いしたのね・・・社会人だと忙しいでしょうに・・・よくお手伝いしてもらえたね。
「まあ、彼女にしてみればマイティさんは姫で妹でお嬢様にして女王陛下みたいなものですから・・・」
彼女?女性なの? そういうプログラミングとかエンジニアみたいなのって男性が多いと勝手に思ってた・・・たしかに葵さん、なら女性の名前でもおかしくないよね・・・でも名前呼びなの?名字じゃなくて?
「そうですね。マイティさんなんか年上の社員も名前で呼び捨てですから」
ふふっ、それはなんとかく想像できるわ
「それに、社員のみなさんも、基本は名前呼びですね。くん、とか、さん、は付けたり付けなかったりですけど」
「ジョージくん、細かくて申し訳ないが、基本、ということはそうでない場合もある、ということか?」
「はい。社長はマイティさんのお父上ですが、それ以外に唯一の管理職の女性がいらっしゃいまして、部長、と呼ばれています。確か、星川さんというお名前だと思いますが、社長もマイティさんも含め、全員が、部長、と呼んでますので」
唯一の管理職も女性なのね。でも映像作品的にはどうでもいいんじゃない?カントク?
「う・・・すまん。つい、気になって・・・」
何が気になるのよ?
「今では水野さんと普通にお話ができるようになって、それで充分に幸せを感じているんだけど、スピードシスターズやら、会社の人やら、ジョージくんは女性とお話が普通にできるんだって、少しうらやましく思えて・・・」
なっ・・・突然何言ってるのよ・・・まあ、カントクはカントクだから、それ以外で女子と話をするのがあまり得意そうでないってのはわかるけど・・・私は・・・何なの?
「・・・あこがれの人、ということでよろしくお願いいたします」
急にそういうこと言われると・・・普通に照れるんだけど・・・
で、ここまで盛り盛りのオープニングを作ったのはジョージくんで、マイティさんは手を出してないし、社員の葵さんもサポートしただけ、ってことでいいのよね?
「急に話を・・・いえなんでも・・・はい、ただ、コードを書いたのは僕ですけど、AIに結構ヘルプしてもらいましたし、画像生成AIへのプロンプト、AIに対する指示のことをプロンプトと言うのですが、プロンプトを作るAIにプロンプトの作成や精度向上を指示したりはしてましたが」
え・・・AIにAIを使わせるの?
「わりと普通だそうです。AIのことはAIに聞け、と言うらしいです」
知識豊富で優秀だけど人の気持ちや感情には疎い存在同士に、足りないものだけ指示してあげれば、あとはAI同士にまかせたほうがいい・・・みたいな?
「厳密には違いますが、概ねその認識で問題ないと思います」
知識豊富で優秀だけど人の気持ちや感情には疎い・・・っていうと、昔なら、ある人が思いだされるけど、今では、結構根回しもするし、人の気持ちに寄り添うところもあるってわかっているわ・・・
「はい、僕もその認識です。普通に高校生女子な面も一杯あります」
そういうエピソードってある?
「例えば・・・これを見せたら、『葵・・・気合い入れ過ぎだろう・・・ジョージ、元バージョンの画質だけ上げたオープニングも別に作っておけ』と言われました」
確かに・・・気にしい、な所もあるのねww
「いや、これを見てしまったら、そっちのバージョンを本編に使おうという気は無くなると思うよ?」
まあ、カントクもそう思うよね。そっちの技術もAIなの?
「はい、そうです。本編のほうはここまで気合を入れると終わらないので、AIというかGPUで補完やらなんやらして、映像の繋ぎがよろしくないところだけ、AIで途中を生成してます」
「あー、最初のほう、撮り方がまだわかってないころ、僕がカットを出す前にカメラが勝手に撮るのをやめちゃったところだよな。あれ、どうやったのかと思ったんだけど、AIで繋げたりできるんだ」
「できます・・・が、学校のPCとかでは無理ですね・・・正直、合計すると一般家庭の一年分ぐらいの電力をつかっちゃっていると思います・・・」
ええー?それって何十万とかにならない?流石に申し訳なくない?カントク?
「そうだな・・・でもそんな予算なんかそもそも無いし・・・」
「いえ、それは気にしなくてもいいです。そのために、太陽光発電所を作っちゃったりしてますから」
なんなの、マイティさんも、マイティさんのお父上も・・・
「そういう家庭なんですよ・・単なる裏山だったところに大規模な太陽光発電所を作ったり、それで余った電力で揚水発電所を作ってみたり、実証実験で使ったコンバインド発電機の払い下げを受けて、地域冷暖房システムまで組み込んだ小規模火力発電所を作ってみたりとか・・・」
それはマイティさん無関係よね。お父上のお話よね?
「はい、ただ、まだ無垢な子供だったマイティさんが、本来夢物語であろう、そういったことをそれっぽく父親に『おはなし』して、お父上が、もしかしたらできるかも・・・と思った可能性は否定しきれません。実行の主体者はお父上なのは確かです」
想像すればキリがないのもマイティさんらしいね・・・
「3種類も発電所を持っている会社っていうのも凄いよな・・・普通は自家発電にしてもディーゼルエンジンくらいだろう」
カントク?感動するところがズレてない?
・・・
そんな流れで、カントクが自分の資質に悲観したり失望しかけたりするレベルの映像作品がジョージくんから提出されました。
「ジョージくんには映像監督か編集監督くらいのクレジットを出そうか?」
カントク・・・良くも悪くも絵コンテ通りなので、普通に特殊効果、精々、CG監督でいいんじゃないですか? 卑下はよくないですよ?
「ああ、マイティさんもよく言ってるな・・・よし。演者も裏方も素晴しかった。僕のシナリオや絵コンテでの演出もそれなりだった、ということにしよう」
カントクの演出も素晴しかったですよ。これは私が自信を持って言えます!!
「ありがとう。憧れの人」
だから!!私は普通の女子です!!
「普通の女子に憧れるのはダメかな」
・・・もう、そういう意味と受けとっていいですよね?お友達++から始めましょう・・・
「!!・・・そういう意識はちょっと前からありました。よろしくお願いいたします・・・」
カントク・・・何となくはわかってましたが・・・
あーーーーーはずかしーーーーーー。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。でもね。今の私は実行委員!!高嶺祭が終わるまでは通常運転!!拒否しませんでしたけど密着も同然の距離感にも気をつけて下さいね!!
「はい、承知いたしました」
あと、脚本、本当によかったです!!二年後も期待しています!!
あーーーーーーーーー、すごい嬉しそうなのがさらにハズかしいーーーーーーー
でもうれしーーーーーーーーーーーー
これが恋愛なのかーーーーーーーーー!!
・・・
「おう、実行委員兼助監督、疲れてんな?顔赤いぞ?風邪引いたか?必要なら休めよ? 展示と教室装飾のほうはほぼ目処が付いたぞ」
武庫川くん・・・おつかれさまです。いえ、いろいろあって・・・体調自体は大丈夫。
「本番が本番だからな。おう、我ながら日本語がおかしいな。本番の日が大切だからな、体調にはお互い気をつけようぜ?」
そうね・・・まあ、体調は大丈夫だけどその通りだから気をつけるわ
これがダミーの足ね・・・めっちゃ長いね。
ソロバン君が言ってたけど、作ってて楽しかった?
「まあ、ソロバンのジグソー型紙よりは楽だったし、妄想が捗る」
また・・・まあ、美女なのは間違いないし、そういうものかな・・・
「言ってしまってからヤベえ、と思ったけどバカにしたりしないんだな」
思春期男子がエロに敏感なのはどうしょもないでしょ?うちには兄もいるし。慣れてるよ。
「しかし・・・作ってても思ったけど、脚、長えよなあ・・・」
だね。ゼロ様ラブのマリカだって、160cm以上あるはずなのに、くっついても怒られないから密着してるときは、おっぱいと話してるって言ってたし。
「まあ、言っても大丈夫っぽいから言うけど、胸もあるし、顔も小さいから・・・」
まあね。マリカも私も女子では大きいほうのはずなのに、スピードシスターズのちっこいコンビが私達より背があって、あとの3人は170以上なのに、マイティさんはさらに高いもんね。
マイティさんスライダーはここ、一番Gがかかるところだけ縮小展示ね。まあ、誘導路まで展示したら教室とびだしちゃうしね。
「だな、ソロバンの型紙、マジかよと思ったけど、実際組めたし、滑走できたからなあ・・・あれも途轍もなかった」
でも、その廃材を教室の外の装飾に使ったりしててなかなかやるじゃない?
「まあ、興味を惹かないと入ってもらえないし、逆に普通のアトラクションより、10分程度の映像を見て舞台裏展示ってのは、今時逆に新しい感じだよな?」
そうねえ。あの映像は凄いしね。
「本当にな。オープニングは、あれ、どうやったら、ああなるんだ? オレらが見ればあれを加工したんだろうな、とは思えるけど、どっかの本格的なスタジオで別に撮りなおしたと言われても納得せざるをえないぞ?」
あれね。CGなの。ジョージくんが命を削って作ったの。
「え・・・ぜんぜんCGには見えなかったぞ? マイティさんがあんな衣装で飛んでるから別に撮って合成かと思ったけど・・・それだとあの滑走に忠実なのが意味不明か・・・」
ジョージくん、結構マッチョになったじゃない?細めは細めのままだけど?
その映像を提出したときはちょっと・・・じゃないなー、メッチャ疲れて真っ青になってた感じでSSDを渡してくれたんだよ。
「あのニコニコと元気が取り柄みたいなジョージがか・・・オレには無理っぽいけど徹夜してあのクオリティのCG・・・CGにはまったく見えないけど・・・を作ったってことか?」
本当のところはわかんないけどね。
「あとさ、AパートとBパートみたいになってて、ジングルというか、CM入りと明けみたいなマイティさんが空中を髪の毛をフワーっと靡かせながら飛んでいく映像はいつ撮ったん?」
撮ってない。カントクも撮ってないっていってたし、なんか凄いコンピュータがあるみたいだし、ジョージくんがCGで作ったんじゃないかなって。
「凄いコンピュータ?」
あのオープニングも格安ディスカウントでも億円単位のコンピュータを使ったみたいだし。
「おくえんって・・・一万円札が一万枚の一億円って単位っつー意味?」
みたい。
「・・・すげえな・・・いわゆる札束が100枚だよな。あれが100束か・・・わりい、語彙が足りねえ・・・」
わかる。
・・・
でも実際、彼女は飛んでいたの。
考えてみれば、新歓から飛びまくっていた。
あんなのを一時間で書き終えてグラウンドを走るってそもそもおかしすぎる。
クラスマッチでは本当に飛んでダンクをしていたし、
クラブマッチではバッティングもピッチングもぶっ飛んでた。
撮影でも校舎の間を平気で飛ぶし・・・
オープニング映像ではコンピュータと電力で飛びまくっている。
・・・
ねえねえ、マイティさん?
「何だ?クミ」
いつの間にか撮った記憶のないアイキャッチが入ってたんですけど?
「あー・・・あれか・・・ジョージが『あるといいですね』と言いだしたので撮った。勝手に挿入して申し訳無い」
別に謝る必要はないかと。カントクがこれ、CGか?って言ってましたけど。
CGじゃないんですね・・・どうやって撮ったんですか、あんなの?
「ウチ、というか社員寮にプールがあるのだが、一番深いところは3mくらいあるのだ」
マジで深いですね。
「うむ。で、その深いところの上はは吹き抜けになっており、5mほどの高さがある」
え、まさか・・・
「そこで自由落下だ。先に落ちたジョージはカメラで私を撮っているからいつ着水するかわからず怖かったと思うぞ」
無茶しますね!!
「いや、カメラは防水のものだし、壊れなかったぞ?」
そっちじゃなくて!!。綺麗に垂直に落ちれなかったら危ないじゃないですか!
「まあ、事前にシミュレーションしたし、一応社員が何人か下で立ってくれていたからな」
いやいやいや、5mの高さから人が落ちたら、人間じゃ安全に受け止められないじゃないですか!!
「ああ、受け止めるのではなく、安全にプールに叩き込むほうだ」
んん・・・まあ・・・なるほど? 床や壁に当たりそうなら軌道修正するということですか? それならわからなくもないですけど・・・
「まあ、特に何も無く飛び込んだだけだったがな」
無事でよかったです・・・
ふわふわ~っと回っていたのも演出ですか?
「それは偶然だ。ジョージと私の回転が同期しなかっただけだ」
まあ、同期・・・はそうとう狙わないと難しいですし、回っていたほうが映像的にはよかったと思います。
「カントクには勝手に追加して申し訳無い、と言っておいてくれるか?」
もう納得済みですから。大丈夫ですよ。
展示のほうにもモニターを追加して、生のスライダー映像・・・ジョージくんが念の為に作ってくれた、通常版のさらに予備の、現場の音も滑走している脚も消してない、本当の生画像の画質向上版。完走時の拍手や指笛付き・・・と、ももかんちゃんの滑走シーンを交互に表示するものを追加しました。
そして、絵コンテや香盤表の拡大コピーを貼りまくりました。
まあ、そのまま貼っても汚い字を見せるだけなので適当に彩色してあります。
中央更生のおじさんたちもすこしユーモラスな感じのコワさにしてドンと貼り、
『協力』として、県警、市の治安委員会、中央更生(株)を大々的に入れました。
そこまでが映像ブースへの待ち行列で、時間になったら一定数で入れ替えの上映ブースです。
最後に上映ブースの出口側展示として、マイティさんのダミーの脚にわざとマンガっぽく書いたマイティさんの模造紙を細く切ったコンパネに貼りつけて、高さ130cmくらいの位置に固定するオブジェを置いて展示は完成です。
ローラーブレードだと、そのくらいの高さになっちゃうんですよ・・・彼女の場合ww。
入場者数は三位。一年での一位は取れませんでしたが、まあまあ来てもらえましたし、すごく好評でした。特にオブジェがwww
あ、映像もバッチリ大好評でした。まあ、あれは流石にね・・・
でも・・・アイキャッチのために、更に本当に飛んだりしなくてもいいじゃん、と思わないこともない私でした。




