中央高さん強かったね、の横溝くん
横溝です。一試合目は敗戦投手。
二試合目は記念代打で最後の打者、三球三振でした。こっちも負けでした。
いやーーーー、やられたやられた。
彼女が男子だったら二年後は優勝候補もありうるよ・・・
「だから野球の公式戦はせぬと言っておろう!」
なんで彼女は時代劇みたいなシャベリなの?
「うん、これでもよくなったんだ」
そうか?まあ、マモルが言うならそうなんだろう。
しかし、バッティングもピッチングも桁外れだとは流石に想像してなかった。
あんなん打てるかっつーの。あとレーザービームな?
一試合目、7回表は先発先輩でなく彼女が登板してきた。サウスポーのオーバースローかスリークオーターだろう。
ランナー関係なく、基本セットでクイックなのでどっちかわからない感じだ。
間合いが速くテンポがよい。それでいて綺麗に四隅に投げわけてくる。
スピードガンの数字では max 138km/h というところだけどもっと速く感じた。
一試合目から全部ストライク。三球三振 x 3。9球で試合終了。バツゲームにされました。
二試合目、一番DH彼女。OH!強烈!7回なのに彼女が5打数5安打5本塁打って成績で試合進行はお察し下さい。
二年生と一年生ピッチャーだったからこっちもそれなりに打てたけど、一人で10打点以上なんてのがいるんじゃなかなか勝ちづらい。
そして最後、7回裏に登板してきて、同じく見事な9球セーブ。マジのオータニサーンじゃないっすか。
よく考えたらマモルと同学年だから、彼女も入ったばっかの一年ピッチャーだったな・・・
・・・
そういや、マモルさ、一試合目、セカンドで「やめてくれー」って言ってるように見えたけどなんだったんだ?
「あー、あれはなー、マイティさん、悪い癖があって、連続でポール際にファールを打ってピッチャーを潰すんだ」
え?あ?ん?あーー、そういうことか。フルスイングだから審判もスリーバントにしようがないな・・・
「そう、練習試合で相手チームにそれをやったらあまりにもあんまりだろ?、だからやめてくれーって言ってたんだ。ウチのピッチャーなんて30球やられて泣いてたぞ?」
「そういう意味だったのか?私には通じてなかったぞ?」
「でも二球目はセンター場外まで飛ばしてたじゃん」
「やや内だったが、高さ的にはホームランボールだったからな?」
場外まで飛んだの?!しかし、あの『打たれた瞬間!』を30球連続はキッツいな・・・
「あー、セイヤ振りかえりすらしなかったもんなー。ま、『打った瞬間』打球だったからか?」
まあ、振り向いても無駄ってのは理解してたし、念の為、後ろ向こうかと思ったら、ウチの審判役メンバーがもう腕回してたからな。
「「あー」」
しかし・・・ストライクゾーン・・・打てるとこって意味ね・・・広いな。手足が長いから当然っちゃ当然なんだけど、普通は外が届いても内が窮屈になるもんだけどなー
「モル、そうなのか?」
「普通はそう。マイティさんは例外」
ん?モルってのはマモルの略称なんだろうけど、マモルはなぜ同級生にさん付けしてる?
「とにかく偉そうで、かつ本当に偉いんだ。そして異常なほどにピッチングとバッティングが上手い」
「相変わらず失礼な言い方だな」
野球については完璧にわかる。態度についてもわからなくはないが、本当に偉いというのは?
「中央高が進学校というのは知ってるだろう?入学式の後、午後から翌日一杯まで合計10時間で500点満点のテストがあるんだ」
はあ?入学式後すぐテストが10時間 ?大変なところだな・・・
「で、500点満点で、一年生は平均100点、二年は200点、三年は300点くらいが平均らしい」
それは随分な難易度ってことだな。じゃあ、マイティさんは400点くらいってことか?
「暫定495点」
はあ?ほぼ満点?!そんなん可能なのか?あと暫定ってなんだ?
「全教科99点を目指したらしく、社会でわざと間違った形跡があるって社会の先生がいてさ、99点とは認めん、100点だ!!って言ってるんだよ」
先生が上に修正したがるとかあるのか?それに全教科99点って満点より難しくないか?
「おれにはどちらもできねーけど、全教科きっちり99点に揃えるのは難しい気がするよな? ウチの高校では途中退出のときは全部埋めるってルールがあるんだ。 だから、全部埋めて途中退出してんだからわざと99点を狙わないと無理なはずなんだ」
「・・・」
「な、わざとやったでしょう?と言っても絶対何も答えないんだよ」
恐しいな。ゲームなんかでシバりを入れるって遊び方もしたことはあるし、弟が小さいころは対戦ゲームなんかも自分は基本技シバりなんてのをやったことはあるけどな。
そんなん遥かに越えた、超ハードモードを楽しむみたいなことをテストでやってんのか・・・途中退出ってのは多いのか?
「いや、三年まで入れた全校生徒で彼女だけだ。仮に全部埋めれたとしても普通は見直すよ。ちなみに一年で全部埋めるどころか半分埋められたら、もう、神だよ」
語彙が少なくて悪いが、マジか、しか言えねーな。そらそーだよな、見直すよな。オレの場合はなんとか赤点回避、だけどな
「それはオレも変わらねえ。今日アナウンスをしてくれたスピシスの松本さんにも、あと原田さんにも頭があがんねぇな」
まあ、野球小僧がよくも中央高に入ったもんだってのはこの県のシニア界隈じゃ有名だからな。
「そうそう、マイティさんがいるからそれほど高く見えないが、桜井さん、金髪長身美少女がいただろ?彼女が断トツの学年二位なんだ」
なんだそりゃ、断トツの二位ってのは・・・まあ、こちらの超長身モデル美少女さんが500点のうち495点?なら、多分全校一番。
だから、実質学年一位相当の二位ってことか?
「概ねそんな感じ。オレらみたいなヤツラ向けに生徒が講師をやる補講があるんだが、彼女は数学の補講で英語を話すんだよ」
は?どういう事だ?
「だから、英語で数学の内容を優しく説明してくれてるんだろうけど、正に豚に真珠や猫に小判のことわざ通りだ」
帰国子女で日本語が苦手なのか?
「金髪にしてるが生粋の日本人だ。だよな?マイティさん」
「うむ、ユカにしてみれば、両方勉強できれば一挙両得、くらいの心持ちだろう」
その一挙両得はどちらもある程度のレベルが必要で、そのレベルが無いから補講を受けている側ではないかと思うぞ?
「そうなんだよ。ここに超絶級天才がいるので目立ちにくいが、彼女も天才か努力の秀才かはともかく並の人間じゃないな」
ああ、あのふわ~っとした話し方の子な・・・そっちもそんなに凄いのか・・・
しかしまあ、美少女様の多い環境だな・・・
「まあ、クラスの女子、ほぼ全員がカワイイか美少女かどちらかに属すといっても過言ではない」
ほぼ?
「そこに美少女様じゃなくて美女様がいるだろ・・・16歳になったばっかには見えないと思う」
まあ、高一なんだから誕生日来て16歳か・・・
「モル、大概にせい!駄弁るだけであれば私は帰る!」
そうだぜ。反省会とかしないのか?こっちはなんつーか反省も難しいんだがな。
それにほぼ三年チームだったから分析も意味ないしな・・・
「そうだぞ!私にはもう一つこの練習試合の意図が見えぬ!!これでは私のフリーバッティングではないか!!!」
いや、ウチのピッチャーはオレも含めてフツーに頑張って投げてたんでフリーバッティングとまで言われるとキッツいもんがあります・・・
「あ・・・そのような意味ではござらぬ。何のベンチ指示も無かったことを指しておる。普通は右打ちとか進塁打とか、ランナーが走るのを待てとか逆にエンドランとか、そういう指示があるものではないか?」
そういう意味か。まー、フリーバッティングかよってくらいに打たれたのは事実だから、まあ、フリーバッティングって思ってもらってもいいよ。しくしく
「セイヤ、わざとらしいウソ泣きはやめぃ。それにこの打力の人に何を指示するんだ? 好きに打て、でオールオッケーだろう?」
まあなあ・・・今日に限っては全弾スタンドインというかオレのはスタンドアウトというのか?場外だったからな?
「stand out だと『目立つ』だな。うむ。意味は通じるな。ま、場外ホームランと言いたいのなら、A home run out of the park や、The home run that left the stadium あたりなら通じるだろう」
あー、たしかにMLBの中継とか見てるとボールパークって言い方聞くな。パークの外か、スタジアムから去ったホームランね。なるほど。しかし発音もすごいね。
「カタカナ発音では通じぬからな。しかし英語でなく野球の反省会をするのではないのか?そうでないのであれば帰るぞ? しかし一応英語は分かるのだな」
カンタンな単語の羅列を言われれば、くらい。野球関係だから、わからない単語はあまりないし。でも、その文自体を思いつくのは無理。
マモル、そっちはしようと思えば反省会はできるだろ?
「反省会は第一だけでいいから、マイティさんたちは帰っていいよ。スピシスや中条さん一派、ウチのクラスの連中も。第二も帰っていいよ。道具だけは学校にもってって部室に置いてくれると助かる。第一は歩きと電車でも帰れるからな」
・・・
第一、要はレギュラーメンバーは15分程度の反省会をして徒歩で帰っていった。
ウチも一旦解散になったが、マモルとオレは残って立ち話だ。
で、マモルよぅ、この練習試合の意図は?その前に謎の単語を解説してもらおう。
スピシスってのは長身アイドルグループみたいな女子たちっぽいな。
「ああ、クラスマッチのバスケチームだ。スピードシスターズの略だ」
クラスぅ? 学年じゃなくてクラスであんな美少女チームができんのかよっ
なんとかさん一派ってのは『マイティさん』、じゃなくて『ゼロさま』と呼んでた、そっちもそれなりの美少女一団というのは想像が付くが・・・
「それはな、マイティさんのモデルのときの芸名だ」
モデルぅ? 確かに美女でスタイルもとんでもないがデカすぎないか?
まあ、欧米では普通とかそんなんか?
「そんなんだ」
後、第一、第二ってのは一軍二軍みたいな意味か?
「いや、うちは文化系と体育系とひとつずつ入るのが普通なんだ。でもどっちかをメインと宣言していて、野球部メインが第一、第二は、まあ、月に二~三回あつまるだけの同好会みたいな感じだ」
つーことはあの三番打者、反省会にいなかった、閣下先輩も第二ってことか?その割にはうまくないか?
「マイティさんも第二だから不思議でもなんでもない」
まじかあ!!女子だけど毎日練習してるからあんなんかと思ってたが、月に何回かであんなになるもんかあ?!
「部活とは別に、週一くらいで練習しているらしいがな。一時間くらい」
それだけかよ・・・で、この試合の意図は?
正直お前がいるから成立したんだぞ? お前がいなけりゃABだろうがお断りするくらい格の差があるのはわかっているだろう?
勝ちグセを付けに来たんじゃないかと思ってたんだが三年主体じゃあまり意味ないよな。
「認めてくれたそちらの監督には感謝しているよ。勝ちグセか、まあ、それもある。ABとは言え強豪高の一角に勝てれば一二年の自信にはなる。あとは三年の引退式も兼ねてる感じかな」
ヨソとの練習試合で引退式やるなよ!
「おまえらにもメリットあったろ?ウチみたいな変則ピッチャーとやる機会は少ないぞ?」
まあ、それはな・・・強豪高あっさり負けパターンのあるあるだしな。
しかし、全員サウスポーのサイドやアンダースローって変則徹底しすぎだろう?
「まあ、うちに来ている時点で野球より勉強優先なんだ。マトモなメンバー無しで勝ちにいく、立派な戦術だよ。それに、三年込み前提だが、それなりの打線になってはいるぞ?」
確かに苦労したな。だが、控えの層は薄そうだな。
「まあ、否定しない。三番や一番DHを第二に頼っているからな。で、圧倒的存在ってもの見たことないだろ? ドームでやったアメリカチームにもあんなのいなかったろ?」
いるかよ!!あんなの!!バッティングもすげえが、ピッチングもとんでもなかったぞ!!
なんだあの150km/h以上出てると思わせる138km/hってのはよ!!
変化球もよくもまあ右も左も曲がりやがって・・・
カスりもしなかったぞ!?
「オレにもあの球の正体はわかってない。オレも捕れるけど打てないんだ。あとコントロールが正確すぎるんで、逆球とか外せのサインがある」
動いてないときはミットがピクリとも動いてなかったもんな。
しかし、外せのサインもオレらへのバントのときの外せとはレベルが違うんだろうな。
「まあなww」
で、おまえも打てないんかいっ。
「そうだよ。今日の練習試合だけど、本当の目的は・・・」
なんだよ。溜めるなよ?
「彼女に野球の試合を好きになってほしかったんだ」
は?
「なあ、オレら随分と義務的に野球と付き合っていた時期もあるけど、普通に投げて打ってが楽しいってのはあるだろ?」
義務的・・・まあ、去年のアレやその前の選抜は義務的だな、確かに。
そうだな、今日もそれなりに楽しかったし、勝てればもっと楽しかったとは思うが、打たれても、打てなくても、悔しいはともかく、つまんないわけじゃないもんな。
「だよな。でもあんだけ投げれて打てるやつが楽しそうにやってないってのがオレとしては悔しい。だからって、厳しすぎる親とかコーチにやらされてイヤんなったっていうアレでもないんだよ」
ああ、ときどきいるな・・・でもあの飛距離と謎の速球は天性だろ?努力で身につくか? 恵まれた体格ありきじゃねーか?
「いや、少なくともある程度の努力がある。聞いて驚け、今日彼女が使っていたのは合成竹バットだ。公認のやつな?」
ウソつけ、あんな手のシビレるもんで打て・・・るんだな?
「ウソついてどうする。彼女に言わせれば飛びすぎるバットはつまらん、だそうだ」
マジかよ・・・もう何回マジかよって言ったか覚えてねーけど。
「もっと楽しく野球をしてほしいんだよ・・・」
なんか、彼女に片思いをしている男っぽいぞ?マモルよ。
「彼女の野球の才能に対してならそうかもな。恋愛感情は・・・野球ばかりしていてちょっとわかんねえな」
そこはオレも以下同文だ。ちなみにそういう意味でフリーなのか?
「いや、彼氏はいる」
あれの彼氏か・・・苦労しそうだな・・・
「滅茶苦茶苦労している。楽しそうだけどな。入学したときは身長はほぼ同じのヒョロガリだったが、今じゃ体の厚みもオレと大して違わねぇ」
大増量だな。ちゃんと筋肉か?
「おう、きっちり筋肉付けてやがる」
じゃあ、望薄ってやつか
「だから恋愛感情とは違うって。お姫様を崇拝する平の騎士とか木っ端侍のほうが近いと思うぞ」
まあ、分かる気がする・・・姫には楽しんでもらいたいよな。
「本当にな。野球は楽しいんだよ」
そうだな。でなきゃ、こんなんやってられねーよな。
まあ、あの姫に一発で場外を献上したオレも大概だがな・・・
「それは言いっこなしだ。みんな一度は『オレがやってた努力って何なんだ』って、そう思う」
お前もか?
「モチロンだ。あれは人外で天才すぎる例外だと思わんとやってらんないよ」
一度じゃないよな?
「月に何回か。だからウチの野球部はメンタル強いぞ」
なるほど、納得だ。
「だろう?」
いや、お前が、彼女に楽しんで野球をしてほしいってのが、今、納得できたんだ。
「今かよ!!」




