吹田くんも木工が好き
吹田 浩二です。165cm 50kg。普通の男子のはずだけど、なんかこのクラスでは色々と感覚が狂いガチです。
一応宣言しておくと、大阪の地名にある「すいた」ではないです。
「ふきた」と読んでください。
これは自己紹介でも言ったと思うけど、もう遥かなる過去だよな。
「おう、吹田。一緒に大道具やってくれるのかい?」
もちろん。でなければ声など掛けないよ。彫刻もやるけど、単なる木工もどんとこいだよ。
「そりゃ助かる。実は結構な量の作業がいるんだよ。正直、二人でもしんどい」
まあ、一人でやるのの半分だろ?おれを頼れよ。武庫川。
「おれもいいかな?よければやるよ。絵を描くのも彫刻もできないが、ノコで直線を切るだけならそこそこ行けるよ?下絵を描いて来れればジグゾーで曲線切りも。あ、でもあまり複雑な形状は無理かもしれないな・・・」
神田くんだったか? 確かジョージと仲が良かったような・・・
「あいつもすっかりジョージが定着したな。まったくジョージっぽくないとおれは思うんだが・・・。あ、おれのことは神田でも浩一郎でも、郎を省略してコーイチでもいいよ」
そこ省略していいのか?まあ、カブらなければ識別可能とは言えるが・・・
「じゃあ、コーイチ、オレはヤスオでいいぜ」
いきなり省略呼びかよ。おれはコージだからコーイチの弟みたいに聞こえなくもないが、まあ、それでいいよ」
「まあ、おれとけー・・・ジョージが仲良くなったきっかけもケーイチロウとコーイチロウという名前の類似からだから、そっちが気にしないんならコーイチでかまないよ」
じゃあ、ヤスオ。なんか急に名前呼びもちょっとハズいが、すぐ慣れるかな。
ヤスオが大道具の取りまとめとして、おれ達は何をすればいいんだ?
「まあ、あせるな。いますぐできることはそんなにない。あるとすれば階段の型取りくらいだな」
そういえばさっき言ってた「コンパネ」ってなんだ?
「正確には知らないがコンクリートパネルかな? よく使うのは182cm x 91 cm の割と頑丈な合板だ」
「なるほど、話はわかった。僕も混ぜてもらおう。竹内だ。実は3D CADも多少は嗜むのでな」
おう、ソロバンか。暗算でも重宝しそうだが、そんな特技もあったのか。
「四人ならだいぶ楽になるな。ちなみに3D CADって強度計算とかできるのか?」
確かに人が滑るものだから強度は重要だ。
「できるできないで言えばできるが、多分無意味だ」
おいおい、できるのに無意味ってどういうことだ?
「あのさ、言いたくて言ってるわけじゃないんだ。作るのが自分たちだろう?しかも手ノコだろ?mm単位で正確に作れるわけないだろう」
あー、そういうことか・・・たしかに、多少のガタも御愛嬌って感じしか無理だろうな。皆もうなずいている。
「しかもだ」
なんだ?
「本来、強度計算というものは、軽量化、とかコストダウンとか、シビアに削りを入れる時に重要なんだ。戦前とか古いコンクリートのビルが頑丈すぎて建替に苦労したなんて話もあるだろう?強度計算より絶対的な頑丈さを優先した結果だ」
なんとなく聞いたことがあるような気もするな。
「どちらかというと自分たちに作れるのはそちら寄りだ。しかも用途を考えると簡単に作れる上に簡単に分解できないとならない」
「そう!そうなんだよ。さすがソロバン、計算が速い」
武庫川・・・じゃない、ヤスオ、それ、計算か?
「計算でなくて論理的帰結というやつだろう。形だって決まっている。階段の踊り場では路面は水平、だんだん斜めにしていって、廊下への直角カーブでは斜め45度のスリバチ型。そこからだんだん水平にしていって廊下に猛スピードでマイティさんを放出だ・・・木工でできるか?これ・・・」
うん、難しそうだ。ヤスオ、ケーイチ、どうだろう?
「おれはさっきも言ったとおり、まっすぐ切るくらいしかできないから、カーブ?バンクっていうのか、あーゆーのは難しいと思うぞ?」
「それはホゾ切りでまかなう。斜めの板に足を付けて踏んばらせるってのは難しい。しかも人が載るしな」
わかんねぇ。ヤスオ、メイン代われよ。
・・・
まあ、いいか。思考実験として聞いてくれ。
180cm × 180cm の底面積で、高さが90cmの木のカタマリがあるとする。
これの角を一つだけ、削ってコーナー、バンク部分として、そこにコンパネで路盤を繋ぐってのは理解できるか?
「まあ、できるな。ただ、1.8x1.8x0.9で、3.24だから水と同じかやや軽い比重だったとしても3トンを越える。運びようがないな」
そうだな。運べない。なので、これをコンパネで組むんだ。ホゾ切りをしてな。
コンパネ10枚×10枚の20枚を井桁に組めばよい。
「たしかに運べそうだね。それなら・・・でもコンパネってそれなりに重いよ?」
そこは力仕事だ。場合によってはさらに男子を徴用するしかないな。
「切る長さについてはどう考えている?」
切る中心のZ軸、縦の軸は動かないものと考えると、仮に板の幅を90とした場合、45度のとき、つまり上から見た円弧の位置でも45度の場合、幅、高さとも63.63cmになる。つまり格子状のコンパネと斜めの線が交差する線自体はわかる。たとえば16分割で作るとすると29度から2度ずつ増やして45度、そこから減らして29度だ。で、3D CADが使えるなら、それを格子状に落としてカット図を作ってほしい、ソロバン
「うう、僕に戻ってくるとは・・・」
「でもよ、それだと三角の板を量産して張るってことになりそうだけど、さっきソロバンが言った精度の問題で先端があわなくないか?」
その問題があるので、中心を仮想化したいんだ。そこもソロバンにお願いしたいんだが・・・
「ああ、中空化したいってことか、まあ、やればできるとは思うが、結構試行錯誤がいりそうだな・・・」
「おい、わかんねーから解説しろよ」
はいはい、コージ、コーイチもわかってねーよな?
「まあな」
つまり、コージの言った三角板になると精度の問題が出るってのはわかりきっている。
なので、中心から数センチ~十数センチは作らない。
そうすれば台形の板になるので精度の問題は相対的に緩和される。
で、先刻の思考実験に戻ると、四角柱をずっと45度で削るとすると、接触する円錐で削っているということになる。が、そうじゃない場合はどうなると思う?
「そうだな・・・さっきのZ軸と円錐の軸がかさなっていれば円の半径と円錐の高さが一緒なら・・・逆さまだけどさ・・・45度の通路が描けるし、そのときは63cmちょっとずつになるってのまではわかる」
そのとおり。
「あ、もしかして楕円にするのか?・・・あれ、楕円じゃだめか」
「迷走しておるようだな?」
お、御本尊登場っすか?
「御本尊とはなんだ?まあいい、走る本人から言わせてもらえば、上から入って下から出る構造にしてほしい。あと、クロソイド曲線くらいは学べ」
クロソイド曲線・・・聞いたことはある。道路に使ってあるやつでしたっけ?
「その通り。曲率一定の変化だ。感覚的に言えば、入りは緩く、だんだん強くという感じだ」
なるほど・・・
「厳密にはカッチリ東西南北ではないが、階段の下りを北から南、廊下を東から西へ動くとする」
はい。オレたちも東側の階段を使う想定でした。
「最初の板は階段のカタチのゲタを履かせた板で、上端は踊り場だが、この時点で気持ち斜めになってて大丈夫だ。西側が低い感じだな」
え、大丈夫なんですか?
「最初は両足で滑るので問題は無い。次の板、次の板と斜め度を増してよいが、傾斜は緩くしていってほしい。かつ、長方形から微妙に平行四辺形にして僅かに曲げてほしい、ゲタが高く、斜めになる感じだな」
わかりますが、それだと板と板の間に段差ができちゃいますよ?
「少なくとも中央の一点は数ミリほぼ段差無しだろう?それでよい」
まあ、そうですが・・・でも中央でなくやや外寄りにしたほうが・・・
「うむ、そうであるな 、50%、55%、60%、65%くらいの位置で繋がるのがよいだろうな。まあクロソイドになっておらぬが」
ああ、そうか、想定走行曲線もクロソイド曲線が望ましいということですね。
「うむ。で、コンパネブロックに繋がるわけだが、高いところで入って、低く出たい。単に円錐状に刳り貫くと廊下側では空中に出てしまうし、角度が付いたままで空中に放り出されたら安定して滑走できる自信は無い」
それはそうでした。配慮が足りずすみません。
「まあよい。なので上から見た場合、大文字のアルファベット、『J』を少し斜めにしたような形で、内側にもコンパネブロックの一部がある形に刳り貫いてほしい」
え、内側にも残して大丈夫ですか?
「あまり深くなるようなら内側の上のほうは切っておいて欲しいが、内側にも残したほうが構造が安定するだろうし、組み間違いにも気づきやすい。それに、踏板、走行路を嵌める際にも安定するはずだ」
なるほど・・・
「で、原理的にこの方式では出口の高さをゼロ、廊下に合わせることは出来ぬし、多少は角度も残るはずだ。なので出口にもコンパネの滑走路が最低でも一枚は欲しい。先端は鋭くカットして廊下に接地できるように」
ああ、意味わかりましたが、コンパネをそういう風に切るのは難しいですね・・・いえ、やりますよ。最悪気合のヤスリ掛けでなんとかします。
「それはありがたい。ではよろしく頼む」
・・・結局マイティさん頼りかよ・・・まあいい、ソロバン、図面引けそう?
「言ってることは理解できたが、何度か書き直さないとならないだろうな。コーイチ、コージ、1mm単位で正確な階段と廊下の採寸をお願いする。廊下の下の幅木みたいなやつも正確にな。あと、出口滑走路は二枚、3.6mくらいはあったほうがよさそうだな・・・あ、ヤスリがけは一枚で済むように書くつもりだ」
「1mm単位か・・・」「コンパネにやすりかよ・・・」
夏休みは忙しくなりそうだな。




