大道具志望の武庫川くん
武庫川康夫です。173cm 60kg。
高一ならデカいほうだろうと思って中央高に来ましたが、男子だけでなく女子でもオレより大きいのが普通にいてビビりました。
中央高といえば高嶺際!某知事が県立でやるレベルじゃないだろ!と怒ったことでも有名です。
そういうことを言われると逆効果というか、さらにやりたがるのが中央高のノリ!
過度な混雑を避けるためのQRコードでの入場システムとか、三年の劇を見れる抽選システムとか、なんか出来てました。流石理学部。
オレもそこに憧れてココに来たクチです。
教室外観のアーティスティックな造形、それも高嶺際の売りなので、今自分はそこに全力です。芸大はちょっと難しいと思うので、普通に私立の経済か経営学部、万が一で芸大・・・で受かるほど甘くないのはわかってますが、そういう志望です。
で、入ってみたらともかく忙しい。勉強するヒマが無い、と言いたいけど赤点だと色々学生生活に制約というか影響があるので、赤点を取らせないチームすらある。結局、勉強しまくりになったりしてますが、なんとか付いていけそう、ともわかったので安心?もしてます。
で、噂の、ザ・マイティ、ことマイティさん。美人!!デカい!!細い!!
まるっきりウソの178cmは冗談としても、公式プロフィールの、178.85 が、単位が書いてなくて、178cm 85mm という『なんだかなー』的な表記。つまり、186.5ということらしいんだけど、どう見てもそれよりまだ高そう。
最初からデカい自称183cmの赤池。初日はヒョロヒョロだったけど急激に細マッチョ化しつつある182cmのジョージ。
男子に比べて顔が小さいというのはあるにしろ、彼等より+3cm程度よりずっとデカく見えます。
それにスピードシスターズのアタッカーこと高橋さんもオレよりは明らかに大きい。
隊長こと桜井さんも公称した身長では1cmだけオレより低いはずだけど、近くに行くとオレよりちょっとだけ背が高い気がする。
図書委員こと松本さんも背だけで言うとあまりオレと変わらん。
血縁もないのに双子みたいな、ももリオコンビで、やっと明確にオレより低い。
といっても、並べば一応差があるな?という感じだけど。実際には自分から並びには行けない。
クラスメイトだから偶然近くに来ることはあるけど。
なんというか、スター感があるのだ。
マイティさんは実際にモデルとしてそれなりに実績があるらしい。
熱狂的なファンがクラスメイトにいるというのもすごいけど。
実際、大きさと見た目なら6人全員が三年女子にもまったく負けてなかった。というかデカくて美人揃いだったと言ってもいい。
なのでクラスマッチで優勝したときも、外観だけでいえば特に驚きはない、と個人的には思ったりしたんだよなー。遠くで見てたしな。
体の六割以上が足みたいなマイティさんは単体で凄かったけど、あとの5人、同時に出ているのは4人だけど、彼女達の動きもクラスマッチレベルとしては桁違い。マイティさん抜きの5人でも優勝できたんじゃないかとすら思えた。
特に桜井さん、普段のだらーっとした態度がウソのような機敏さ。
とんでもない体勢でパスを受け取り、瞬時に立て直して打ったシュートがキレいに入っていく。
その瞬間に見せた「イェィ!」と言ってるようなキラりと光る歯を見せつけるような笑顔。
多分、惚れた男子は一桁では足りないだろう。
オレ? オレは、「あれは見るもので惚れるものではないなー」って感じだ。クラスメイトだけど、別世界のアイドルだと思ってしまった。
HGIS で英語で数学を教える姿も見物だった。オレにはさっぱりだったが、一部の英語は凄いけど数学イマイチクラスターには通じていたようだ。
何人かが、流暢な英語で数学をやさしく丁寧に教えられてもなぁ・・・という目で見ていたらしい。
でも、「マイティさんならラテン語かドイツ語だよ~~、あー、フランス後かもーー・・・まーーだ、英語のほーがマシでしょ~~」と、歌うように言われて、みんなうんうんと頷くしかなかった。
オレら、その他大勢ズは、リオンさんが高橋さんとももかさんに追加補講をしているのを聞いて必死に着いていくのがやっとだ。
二人とも数学、英語とも得意とは言えず、あれがわかんない、ここもわかんない、と半泣きになりながらリオンさんに解説を求めてくれる。
それはオレらその他大勢ズの誰かもわかんないところなので、非常にリオンさんの追加説明、わかんないヤツに噛んで含めるような解説が役に立つのだ。
オレたちは、彼女ら三人のお陰で、なんとか平均点よりやや下が取れていると言っても過言ではないだろう。
ももリオコンビ、という呼び名と、彼女達二人は、個人として男子からも「さん」付けの名前呼びが定着した。
リオンさんはやや引っ込み思案っぽいが、コンビ内では遠慮がなく二人とも声が大きい。
そしてかわいい。ももかさんはフワフワ系の美少女に見えて口調は元気が取り柄の男子っぽい女子みたいな感じ。
普段の「リオン!!行くよ!!」という元気な様子と、勉強で困っているときの「リオン~~(泣)」からの抱き付き。
そこからの「桃花、待ってよ!」と「ももかぁ~」からのよしよし。
コンビ芸のごとく繰り返されるので、名字を忘れてしまうのだ。
リオンさんは普段は丁寧な口調の美少女だけど、前述の通り、ももかさんと高橋さん、リコさんへは呼び捨てで上から口調だ。まあ、講義中だけだけど。
このまま六人について語り続けてもいいけど、それは誰かがやるだろうから、高嶺祭に話を戻す。
オレは、高嶺祭の大道具、美術をやりたくて中央高に来た。増田は脚本がやりたい。水野さんは実行委員がやりたい。
赤池は野球が凄い。まあ、中学で日本代表なんだから当たり前といえばそうなんだが、そんなやつが見てもマイティさんの野球能力はとんでもないらしい。
どんだけ万能なんだよ・・・とみんな思ったに違いない。オレも思ったからだ。
現状を説明すると、放課後、というかSHRで増田が4案を発表し、彼曰くハチャメチャSF風という『中央子』案がよいのではないか、から、放課後の時間になったけどなんとなくほぼ全員が残っている、という状態だ。
増田が何部か印刷してきてくれたので、みんなで回し読みをしている。
小さな字で一案毎にA4一枚にまとめてあるので、あっちがいい、こっちがいいと言っている連中もいるが、演者が『これ』と言っているのでコレで決まりだろう。
そこでオレも手を上げる。
ちょっといいかな? 武庫川だ。オレも高嶺祭も一つの目的としてココに入ってきたクチなんだ。ちなみに美術、大道具全般志望な?
「あ、武庫川くん。美術で一緒の授業ね。絵がうまいよね?もしかして芸大志望?」
水野さん、芸大志望というか、希望ではあるけどそこまで甘くない。夢は普通のサラリーマンで、絵は趣味でいいかなと思ってるけど、高嶺祭ではそれなりにハッチャけたい。
「うん、そっち方面の才能・ううん?趣味?でもいいけど、やりたい人がいるのは素敵。やる気がある人がやるのが一番だもん」
とりあえずありがとうございますと言っておくよ。この案と、さっきの話を聞いて、美術というより大道具屋としてちょっと思ったことがあるんだけど聞いてもらえるかな?
「もちろん!!いいよね、増田くん、マイティさん?」「もちろん」「うむ」
マイティさん、ローラーブレードできる?得意とか曲芸をするとかじゃなくて、普通に速く走るほうで。
「うん?インラインスケートのことか?いわゆるローラースケートの中で直線に車輪が並んでいるものだな? 何度かやったことならある。周回路?を、それなりの速度で走るならできると思うぞ」
「ゼロ様ならお得意です!!ゴシックなお衣装で長~いお御足を伸ばしながらの」「マリカ!、黙れ!」「・・・」
やっぱできるんだ。モデルの撮影でもやっていたということなんだろう。
増田、水野さん、そしてマイティさん、映像の中でマイティさんを飛ばさないか? 中央子とやらは重力をある程度遮断するんだろう?
美術というか大道具としても妄想を現実化してみたいってのがあるんだよ
「飛ぶ?」「飛はずのか!」「うむ・・・インラインスケートだな?」
流石、話が速い。CG処理をどうするか、という話が残るけど、PCとかの機材もいいものなんだろうな、という仮定は合ってるかな。それでできるだろう、という希望的観測さ。
「まあ、それなりにいいものだ。何なら会社のGPUクラスターを使えなくもない」
GPUクラスターってのはわかんないけど、きっと凄いものなんだろう。
オレが触るのは問題あるから、ジョージかマリカさん、中条さんに足のサイズを測ってもらって、あとはすまないが短パンの状態で何枚か写真を撮らせてもらって、発泡スチロールでダミーの足を作るよ。
「うん、私にもわかったよ。片足のインラインスケートで高速走行、その足は緑色とかのタイツを履いておいてあとでCG処理、もう片方とダミーの足を水平方向にして、そっちは派手?な衣装か、別に黒でもいいかな? 普通のタイツでってことよね?」
「飛ぶシーン自体が長すぎなければCG処理もできなくはないだろうな・・・でも純粋にさあ、なんつーか、危なくないか?絵的に迫力あるスピード出すとさ・・・急にそこだけヘルメット被るってのもシーン的に繋がるかなあ・・・」
そうだよな。出演者を危険にさらすのはまずいよな・・・だめか・・・
「そこはマナブが脚本を工夫しろ。私がチャリ通をしているのは知っているだろう。そのままの状態で飛ぶシーンに繋げれば、ヘルメット、サングラス、エルボーとニーガードをしている状態だから、少々コケたくらいなら問題ない」
「ゼロ様はそんなことでコケたりしませんわ!!」「だから黙れ!マリカ!」「コケませんわ・・・」
「うぉ、ハードル上げてきたな・・・でも制約事項があったほうが書きやすいっちゃ書きやすい」
おお、それなら危険性は下がる・・・一応な。
本人が言うなら、できるとして、ダミーの足を付けた状態でスピードを出すのは普通に難しいよな。なので大道具だ。
夏休みに学校の廊下を使う。階段を最大限緩くなるようにスロープを作って、廊下の片側にインラインスケート用のレーンを作る。それをゴープロ的なもので撮るとの同時に何人かが廊下の逆の片側にしゃがんで下からマイティさんを撮るって考えだ。
「それなら、最初の数歩だけジョージにサポートしてもらえば行けるだろう・・・しかし、私が言うのもなんだが、私は見た目より重いぞ? 廊下まで来ればともかく、途中のスロープを耐えられるように作れるのか?発泡スチロールや段ボールでは無理ではないか?」
そこは信頼と実績のコンパネだ。流石に段ボールじゃ人の体重を支えられないし、階段から廊下に曲げるところは遠心力に耐える設計にしなきゃいけないんで、体重の二倍以上、耐荷重でいえば瞬間的には150~200kgを目指す。
カーブのバンク部分の裏側はかなりの向こうまで木材を組むことになるだろう。
「本人もやる気みたいだし、増田くんもストーリーを考えるのに必死みたいでダマっちゃったね・・・でも本当に大仕掛けな大道具だよ?武庫川くん。やれるの?」
水野さん、一瞬のためにセットを組むなんて経験はなかなかできるものじゃないさ。まあ、設計図的なものにはアテがあるし、やりたくてしょうがないぜ!
「やる気があるひとがやるのが一番・・・よね?ジョージくんはどう?」
「こうなったマイティさんを止めるのはちょっと難しいと思います・・・なんなら、安全性は僕が似た装備で試してからマイティさんにやってもらうことで担保しようかと思います。それまでに筋トレして増量しておきます!!」
うは、本当にマイティさんが大切なんだね。




