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フライングガール!  作者: Jack...
34/55

秋の学園祭の準備に取り掛かる水野さん

水野クミです。


160cm 45kg、一般的にはちょっと大き目女子のはずですが、ここでは埋もれてしまいそうです。


中央高の男女比は基本的に1:1、一クラス40人なので、多少の誤差はあっても20人ずつというのが例年の基本でした。


理由は不明ですが、今年は女子が多いです。このクラスも他の一年もだいたい男子15人、女子25人、計40人は変わらないものの、学年の約62.5%が女子です。


ちょっと誤差ってレベルじゃないけど、まあ、この比率で三年間やってくんだろうなと思います。あ、この学校クラス替えはありません。

どうしても馴染めないなどの理由で希望してクラス替えしてもらうことはできるそうです。


まあ、私も例のマイティさんがいたのには驚いたけど、噂とは違い意外と常識人・・・学力は破天荒で、体力も桁違いでしたけど。


兄とキャッチボールしたのが案外楽しかったくらいの理由で第二を野球部にしましたが、マイティさんはレベルが違いました。


私達が比較的経験のある・・・といってもキャッチボールくらいですが、そういう女子同士できゃっきゃとキャッチボールをしている横、野球のグランド・・・というかピッチャーマウンドに立って、上級生に剛速球を投げています。


「おーい、マイティさん!、投げたい気持ちはわかるけど、オレらにも打てる球を投げてくれぃ!」


などと上級生から声が掛かります。

彼女が「うむ」とばかりに頷くと、私には同じような「速い球」に見えて、違いがわからないのですが、野球部の皆さん、いわゆるユニフォームっぽい格好の人達には違うのか、ちゃんと打ち返しています。


あ、私達、第二はジャージです。マイティさんさんもジャージですが、なんかふわふわした帽子をかぶっていて、最初はとっても違和感がありました。


彼女曰く「日焼け対策に過ぎぬ」とのことで、女子的には「なるほど」でした。


中条さん、マリカさんともう呼んでますが、マイティさんのモデルモードの零さんというモデル・・・マイティさん本人なので、周りから見ると何の事やらっぽさがありますが、熱烈なファンで、『ゼロ様』と呼んで追っかけをしてます。


クラスメイトなんですが。


そんなマリカも第二は野球部。追っかけ目的ですね。


まあ、彼女のキャッチボールは、最初はひどいものでした。

そもそも目はマイティさん、ゼロ様を追っていて、こっちを見て投げてない。


こっちみろっつーの!マリカ!


「えっでも」


でもじゃない、こっちみて胸目掛けて投げなきゃ取れるとこに来ないよ!


長くなるので端折りますが、月二回、三ヶ月も経った今はまあまあのところに来るようになりました。


あちら、シートノックへの参加はハナからあきらめています。

兄が野球やっていた関係で硬式球のコワさは聞いています。


女子同士のキャッチボールもいくつか用意されていた軟式の球でやるようにしてます。


「クミ、軟式っていっても体に当たると痛いんだね・・・」


あのさあ、マリカ。向こうのほうばかり見てるからだよ?ちゃんと取れるとこ投げてるからね。


「ごめんごめん。硬式ってもっと痛いんだよね」


うん、石・・・とまでいわないけど固くて重い木のボールがぶつかってくると思えば近いと思うよ?


「ひえーー。ムリーー」


だよね。


そんなこんなの部活もそこそこに、早くも期末の足音が聞こえる季節となりつつあります。要は暑い夏が始まりましたってことです。


ウチの高校では文化祭、学園祭?のことを高嶺(たかみね)祭といいます。


高嶺祭は10月下旬に開かれるのですが、一学期はまもなく怒涛の期末テストのあとにすぐ夏休みなのです。


二学期は9月から始まり、各教科によって小テストがあったりなかったりします。が、わりとツメコミ教育が実施されます。今までもだけどww


10月に入るとすぐにHGIS期間が始まり、体育の日がある三連休の土曜日が体育祭、翌週の水曜日から金曜日が中間テストです。

そして次の週末がもう高嶺祭ということになります。


仮に10月1日が水曜日だとしたら、体育祭が11日、中間テストが15~17日、高嶺祭が24(学内公開)、25(一般公開)日です。


つまり授業がツメコミの9月、イベントがてんこ盛り+中間テストの10月に入ってから考える時間はありません。

例えば劇を演じるとしたら、舞台の製作などは高嶺祭の週の水曜、木曜の二日が事実上のお祭準備Daysなのでそこでやるしかないのですが、企画やストーリー作成、小道具の準備などは今ごろからやらないと間に合いません。

先輩曰く、いつまでやっても終わりが見えず、土壇場までワタワタするのが高嶺祭の醍醐味だそうですが。

なお、その前の月曜火曜は中間テストの返却と復習授業がありますww


と、言うわけで、一学期の期末テストの前に方針を決めておく必要があるのです。


私がこの高校に入ったのは学力的な話もありますが、この、高嶺祭に参加するのが目的のうちの一つでした。


中学生のころ、高嶺祭で見た先輩達の演劇!高校生で演劇部でもなく、普通のクラスの出し物なのに、笑いと感動の嵐。

見るには抽選だったり、並んだりしてチケット・・・無料ですが・・・を取ったりしないといけないので見れて3つが限界です。

抽選で外れて、まだチケットがある、つまり学校の中では相対的に評価がそれほどでもないクラスの劇でも、とても面白かったのにも驚きました。


講堂でやるので立ち見でよければなんとか入れる文学部演劇部の劇にも感動しましたが、クラス劇のほうが良くも悪くも突飛だったり発想がとんがったりしていて、何より役者との距離が近い・・・まあ、教室ですからね・・・ので没入感がすごかったです。


逆に教室だから観客席も詰め詰めにしても大して作れなくてチケット競争率が上がってしまう、というのもあります。


なので、入学してすぐに高嶺祭実行委員に立候補して、拍手多数によりクラスで承認されました。

といってもまだ、先輩方と一度顔合わせをして、過去三年分のプログラムを見せてもらっただけですが。


           ・・・


というわけで、今日のLHRは、実行委員の私、水野が仕切らせていただきます。

端的に言いますと、I-Bの出し物は何にしますか?という話です。


一応前提として教室劇は三年でないと難しいですし、普通できません。実際、二年の高嶺祭が終わってすぐ考え始めてなんとか間に合うという話を聞いてます。

三年のクラス劇で中心になる人達はそれこそ一年のときから準備しているような人も多いそうです。

で、内部的にオーディション的なものがあって、一定の水準に達していないと、上演させてもらえないとのことです。


次に飲食ですが、基本的に食中毒の危険性があるので、審査が厳しいです。

喫茶店的なものなら比較的OKが取りやすいですが、メイド喫茶にしろ執事喫茶にしろカブり易いです。


アトラクション系だと、迷路、お化け屋敷、最近はやりの脱出ゲームなんかになります。コースターとかシューティングもありますね。どちらにしろ、カブリはある程度覚悟の上なのは一緒です。


パフォーマンス系は体育館とか講堂の枠を取るのが一般的で、クラス展示でやるのは普通無理です。ずっと踊ってられないよね?


あとは展示系で、レゴですごいのつくるとか、バルーンアートとかになりますが特定の人に負担がかかりがちです。

モザイクアートとか、折り紙を集合させて巨大な絵を作るとかだと比較的負荷は分散しますけど、でも最終的にアートディレクター的な位置になる人の負担は大きいです。

一応、映画製作もここに含められますが、同上で、出演者、編集、監督などの主要スタッフをする生徒に結構な負荷がかかります。


「はいはいはいはい!!」


何、マリカ?あんまりいい予感はしないけど、どうぞ。


「ゼロ様のファッションショー! 巨大ポスター展示がメインで、ご本人登場は一回10分の一日三回だけ!!これなら負荷も集中しないよ!」


はあ、だからイヤだったんだけどなーー。


マリカ、それ、クラス展示じゃないよ?マイティさん展示だよ。もう公然の秘密みたいなものだけど、一応秘密・・・ですよね?マイティさん?


「うむ、どんなにバレバレでも秘密ということになっている。色々と契約上の制約もあってクラス展示に私の・・・ではなくマイティ・零-IIIの写真を使うのは・・・結構な金額を支払う必要があるな」


うわー、さすがにプロのモデルね。


というわけで、マリカ、却下ね?


「ううう・・・5万円くらいならアタシが払う・・・」


「気持ちは嬉しいがすまぬ。300万でも無理だ」


桁違いというわけね。


マリカ、それに一人だけ金銭的負担をするってゆーのもどうかと思うわよ?


「ううう・・・」


「発言いいか?」


はい、赤池くん。


「マイティさんなら、ウチでシートノックしてるのを撮るだけで結構いい映像になるんじゃないかと野球少年的には思うんだけど」


ああ、でもそれだけじゃ映画にならないよ


「まあまあの強豪高と練習試合を組んで、公式戦には出れない野球部女子が出場するのでよろしく、と、事前に言っておけば、普通は許可してくれる。で、7回制で、二試合やりましょう、ということにしておいて、二試合目の6回裏で代打満塁ホームランからのパーフェクトリリーフとかすれば、なんかサイドストーリを入れれば、短編映画だったら、なんとかならないか?」


「モル!私は目立ちたく無いと言っているだろう? それに対戦する前からホームランだのパーフェクトリリーフだの決めつけるな? できるかどうかわからんぞ!」


赤池くんがこっちを見ている・・・発言許可?とくに求めなくても大丈夫よ、という意味で私が頷くと


「あのな、マイティさん。自分のこと過小評価しすぎかもって思うよ? 正直、あなたのためだけに、高野連が特に許可したものであれば公式戦への出場を認めるってルールが出来ても俺達野球部員は驚かないよ?」


え?そこまで?という顔をしてしまったらしい。


「はあ・・・水野さん、あんた第二でキャッチボールしに来てるよね。中条さんはともかく、水野さんはお父さんかお兄さん、もしくは弟さんとキャッチボールの経験はあるよね。もしくはソフトとか?」


はい、兄としてましたけど。


「やっぱね。あれはちゃんとキャッチボールの投げ方を教わっていないとできない投げ方だよね。80mは無理かもしれないけど30~40mならしっかり投げられそうだから、その気になればシートでもレフトならできるね。内野だと硬球は怖いと思うけどさ」


怖いですね。兄からもデッドボールや自打球の痛さは聞いてます。

で、私のことはどうでもいいと思いますが?


「うん、でも見てるよね?彼女が本気で投げると俺達が手も足もでないの」


まあ・・・あれがそうだと言うんなら見てます。そのあとも速球を投げてて、そっちなら打ててるのも。


「まあ、球速は後のやつでも120kmくらいは出てるし、高一なら普通に速いっちゃ速い。でもあれなら食らい付けるんだよ。オレも先輩たちも」


うーん、やっぱ、違うんですか?


「違う。一応、オレ、ジュニアの世界選手権で日本のレギュラーで、アメリカのエースピッチャーから、金属バットだけど東京ドームでホームラン打ったこともあるの」


えっっ・・・なんで中央高来てんですか?強豪高からお誘いとかなかったんです?


「あったよww。でもここで体だけじゃなく頭も来て鍛え直して、いい大学に行って、大学デビュー、万が一プロになれたとしても大卒のほうがツブしが効くだろ?」


ああ・・・プロは成れたとしても活躍できるかは未知数ですからね・・・


「そう。でも中三の時であれば日本の硬式野球やっているキャッチャーの中ではベスト3に入る程度の打力があって、単純な筋力だけなら今現在のほうがある。でも、彼女の球は捕れるけど打てない」


どういう意味でしょうか?


「いわゆる、伸びる球ってやつ。たぶん綺麗なバックスピン。これを四隅に投げ分けられたらマシンで150や160の球を打ってるやつも・・・っていうか、そっちの打者、つまり強豪高で練習している打者のほうが手玉に取れる」


ああ、そういうことですが・・・ということは??


「一イニングの三者連続三振はオレとマイティさんの一年生バッテリーで取れちゃうんだ。初見の相手なら」


でも打つほうは?


「それはなーー、どちらかっつーーと、オレらが塁に出ていられるかどうかの問題で、それさえなんとかなれば、ホームランか、届かなくても走者一掃のツーベースなら高確率で打てるよ」


打てるんだ?マイティさん?


「うむ。ピッチングに比べれば圧倒的にバッティングのほうが得意だ!」

マイティさんのジャージでの投球イメージです。明らかに顔もスタイルも違いますが気にしたら負けです。


https://drive.google.com/file/d/1_ZeaxzEF55Tybnhbajjj5VcQZQxpbU1K/view

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