リルさんの厨房改革を眺める菱沼くん
菱沼義之です。
HLS11年目、今年9月の卒業に向けて色々整理中です。卒業といっても転職ね。某Nで始まる通信系SIerへの転職が内定しています。
3月後半、4月前半の1ヶ月はマンスリーマンションを借りて東京で仕事してきました。
東京だと自費で借りるのがキツいだろうって?まぁ、それなりに溜めこんでますし、彼女と二人で一部屋でしたし、そもそも会社が負担してくれました。二人分の出張宿泊費より安い、という理屈です。
彼女、新井さんという同期と同時に転職です。あちらの会社からは「また、ペアで来たのか」と言われました。ウチではよくあることです。
こんな寮で11年もいっしょに暮していれば、いまさら性格の不一致も性の不一致もないです。お互いに数名ずつ同世代(上下含む)で試して、結局入社ペアに落ち着いたという形ですから。
一見、男子に嬉しい慣習にも見えると思いますが、この寮では女子のほうが、よりメリットがあるように思えます。理系女子でオシャレもファッションも楽しんでる人もいるでしょうが、感覚的にはそうでない人も多いです。また、170~180の女子、普通に男女交際的に不遇です。背の釣り合う男子と基本的に出会いづらい。
ここに入れば、ほぼ100%の確率で自分より10cmくらい高い男子がいます。少なくとも入社ペアはそうなるように組んでいます。それに、ここに入れた時点で男子側もハーレム狙い、とか、やりたいだけやれそう、みたいな奴は排除されています。肉食系だとしても、比較的ジェントルな態度を取れる男子でないと入社できません。
複数の女性とデキるというのはいいですが、同時に自分が一番だと思っている女性も複数の男性としているわけです。これが受け入れられないのであれば、ここでの生活は無理です。
女子との混浴や、ほぼ裸に近い格好でうろうろしていたり、密着して隣に座ってくる、というのも、すぐ慣れます。まぁ、密着のほうは不意に興奮しちゃうこともありますけどね。
男子も女子も首より下は全身脱毛というルールがあり、ミニスカでも下着を履いてない人もそれなりにいるので、良くも悪くも丸見えです。でも、入社できる人はインターンが終わるまでには落ち着きます。立たない、というわけではないですが。
女子には「今から入浴するところ」と言えば全裸でもよいという謎ルールがあり、それで隣にぴったりとくっついて座られたら「誘われてる?」と思いますよね。でも、そこまでは女子から誘っていることにはならないんです。
女子が抱き付いて、男子にキスをする、または股間を触る、男子の手を胸や股間に誘導する、など、積極的な身体接触をしてきたら、男子も誘われていると見做してかまわないんですが、曖昧な場合はしっかり意思を確認しないとNGです。
極端な例だと、男子が二名でエロビデオ的なものを見ているときに、二人の間に「よっこいしょ」と全裸の女子が無理矢理割りこんできて、「うはー男子とこういうの見ると興奮するねー」と言ってきても誘っているとは言えないんですよ。その時に両足を広げて両側の男子の脚に掛けて、両腕は男子の肩を抱えるようにしていたとしてもです。
ね、面倒でしょ?
高身長のため、恋愛初心者のまま大学院まで卒業してしまった女子も、ここに来ればお化粧もファッションもエロスもイチから教えてもらえます。同じ人間だったとしても、メイクやファッションのおかげであって美人になれば、回りの目も変わります。
街に買い物に出るだけであってもそうですし、大学や院の同窓会なんかでは絶句されるほど変われるそうです。それをちょっとコジらせてしまうと、
「自分を見て、触って、興奮している男子を見るのが好き」だけど、「今すぐしたいわけじゃない」。
という女子ができてしまい、ここにいる女子は大なり小なり、そういう性癖も持っています。もともと裸族もそれなりにいますしね。
で、そんな寮に、この会社にしては珍しい、というか初じゃないかな?中途採用社員が入寮してきました。
聞けば姫の彼氏候補の母親と聞いて、え、みんな裸族に呆れてすぐ辞めていった厨房のおばさんの再現では?と思いましたが、ぜんぜんおばさんじゃない。
特に初日は気合を入れてメイクしてきたとのことで、キラキラ女子でした。爪こそやってないけど白ギャルってやつ?と思ったほど。身長も165cmくらいで、ここでは一番小さな女子ですが、世間的には高いほうでしょう。翌日からはメイクは落ち着きましたが、ここの女子を見慣れた自分にはカワイイ娘、という感じです。
しかし、姫の同級生の母ということは高一の息子がいるということで、高三、17歳で出産しているとのことでした。4つくらい下なのか……10コ下と言われても違和感はないけどな、というのが最初の印象です。
姫からの紹介の内容では、割と貧乏な暮らしをしていたはずなのに、ちゃんとお肌とかメイクも綺麗なんだ?という疑問はFAQのようでした。
本業?ではないものの、女性として求められることを趣味と実益を兼ねてやっていたので、プチプラメイクを工夫したり、なるべく老けないような努力はしていたそうです。
姫は、そのことを「恋愛体質なのかもしれないな」と、述べてました。恋愛体質ね、良い言い方考えたもんだな。流石、姫。
で、そういう人材を採用したので、彼女には性病検査には複数回行ってもらう。結果が出るのに1ヶ月かかるので5月一杯は身体接触は禁止・・・なんてことを高一の女子から聞いている俺達はなんなの、という気分もしますが、そこは今更なので流します。
でも、一緒に息子も住むのにいいのか?とは思った次第です。
その息子、ジョージ君曰く「母はいきなり一人目の相手で妊娠してしまい、苦労して僕を育ててくれたので、母が望むなら恋愛でも何でも楽しんでくれるならむしろ嬉しいです。僕もまだ高一ですが、本は読むので、普通の人は何人もおつきあいをして、体の関係も持って、それから結婚に至るというのは知識としてはありますので」
まあ、よくできた息子さんで。高一でまだまだ細いが、高身長ではあるな。逆にそれに熱烈に抱き付いてキスをしようとしているけど息子に阻まれている、というリルさんはやっぱり30代の母親には見えない。流石にリルさんのほうが上には見えるが、恋人に見えなくもない。あー、弟が好きすぎる姉かな?。ま、母親なんだろうけど。
そのリルさん、弁当工場勤務ということもあり、今までこの寮の唯一の難点であった食事が見違えるように変わりました。
材料は社長に言えばなんでも買ってくれるし、厨房機材も揃っていて、できる人がやれば、今、60人くらいかな?の、食事も作れるか作れないかでいえば作れる条件はそろっている。
しかし、一気に60人もの食事というのを用意するというのは容易ではなく、金曜日の晩、土日なんかでも、なんとかボランティア提供、またはバーベキュー的なやつならまだしも、毎食なんて無理で、何度か厨房の人を雇っても自分達の痴態を見て逃げていくありさまでした。
朝、昼はお高めの個食の冷食、夜は数人~十数人単位でグループになって作ったりユーバーで取ったり、みたいな感じでした。
「こんないい厨房があるのにもったいない!!食材も正直しょーもないし、あ、これは悪くないから、しばらく昼はこれを食べてね!!で、明日の朝食食べるひとは手、上げて!!」
「これ」は個食の冷食、まあ、下手な弁当並の値段ですし。で、みんな朝御飯は食べる派なので手を上げます
「へえ?全員?朝飯抜きのひといないんだ。こういうお仕事の人っていそうな気がしてたんだけど。ま、たべたほうがいいよね!」
まあ、寮で生活していると、朝はランニングとスイミングで始まりますから、普通に腹が減ります。
「んー、なxxxしゅもわるくないけど、ずっとだと飽きるよね。とりあえず、全員分一緒はムリだけど、しばらくアリモンで全員分は作るから、朝から食べようね?」
????
「なに、あー、そうか、今の食材では60人分のいっしょの朝御飯はつくれないけど、はやいもんがちでよければ、テキトーに60人分は今週末くらいまでは冷蔵庫の内容で用意できるよ!
メイン?の肉とか魚とかが別になるってこと。肉でも鶏だったり豚だったり、魚でもメルルーサとかシャケとかいろいろね!」
そういう意味ですか。人数分は作れるけどみんな同じ朝定食は無理・・・まぁ、多少揉めるかもしれないけどいいんじゃないですか。
あー、リルさん、と呼んでいいですか?食材がしょーもないっていうのはどういうことでしょうか。
「ん?リル、でいいよ?どう見ても年上でしょ?実は若かったならあやまるよ!。んーとね。60人とかの材料はネットスーパーじゃなくてそういう業者に頼んだほうがいいの。60x3x3日、三日分で500人前より多いってことだからさ。マイティさんにはお願いしたから、お肉も野菜も今の工場の納入業者が来てくれることになると思う。ぶっちゃけ、下味を付けた肉や魚もお願いできるからね!ちょっと厨房機材をもてあましている風がすごすぎるよね!!」
そうですね。冷凍庫一杯の冷食と電子レンジがメインですね。ロースターとかフライヤーは、ほぼ使ってません。
「うん、見ればわかる。で、どなた?」
あー、菱沼と申します。部長を除けば一番年上なのが自分なんで、ちょっとお話させていもらいました。寮長とか、そういう存在ではないのですが、実質それに近い立場です。あと半年で転職の予定ですが。
「んーー、もったいない。がんばってメイクするから、アタシとも寝ない?抱きツブす気でもいいよ?190近いでしょ?」
いきなりそれかい。息子はいいっていってんだからいいんだろうけど。
一応、結婚予定相手が決まっているので、遠慮しておきます。
「そう?彼女に相談して一回くらいは・・・ま、それは置いといてマイティさんの許可をもらって弁当工場に肉魚野菜を入れてもらっている業者さんに、こっちにも入れてもらえる交渉をしてるから、楽しみにしててね。冷食はアタシも活用するけど、個食のやつはどんどん減らしていってね。食材、入れられないから」
まぁ、いきなりアレなこと言い出してますが、ちゃんと調理はできるんでしょう。
リルさん、個食のやつは300以上在庫がありますが、みんなで食べれば一瞬です。
「そうね。食べない人がいても一日50ハケれば一週間もたないもんね。在庫はFIFOしてると思うけど、ちゃんと管理はしてなさそうだから、ある程度片付いたらチェックして、在庫一掃大判振舞い大会でもしようか?」
ちゃんと計算できるようです。FIFOとか、わかってるんだ・・・
「なんかシツレーなこと考えてない? 確かに底辺高卒だけどさーエクセルは絶対役立つからって使いかたはみっちり教えられたし、一日300食以上の弁当工場10年選手だよ? 在庫管理も含めて計算できないわけないっしょ」
大変失礼いたしました。おっしゃる通りですね。申し訳ありません。
「そんな頭下げなくたっていいって!~!」「ヨシくん、今のは流石に失礼だよ?タダでさえ背が高いんだから威圧感あるのに」
あー、新井さんに見られてしまいました。いやほんとごめん。
「・・・いあつかん?・・・ってなに?」
コントなら二人そろってコケるところだな・・・新井さん、聡子さんはうつむいてプルプルしてる。あれはツボに入って笑いをこらえてるんだろうな。
「新井と申します。リルさんとお呼びしてよろしいでしょうか?」
「リルでいいよ。アタシは基本、タメ口しか話せないし。しかしまー、背の高い美人が多い会社!」
そういう求人をしているんですよ。この会社は。サトコさん、みっともないところ見せてごめん。
「リルさん、私のことはサトコと呼んでください。ヨシくん、ホントに気をつけようね!」
はい、重々気をつけます。威圧感・・・というのはですね、例えば私でもいいですが、大きくて筋肉質の男性が上から見下ろしている、ですとか、大きな犬が吠えたり唸ったりしてこちらを見ているとか、恐怖を感じさせるような雰囲気のことです。一応説明するとこんな感じかな?サトちゃん?
「あー、おっきな犬ね、そうねそれがいあつかんね・・・でも、おっきなシマってる体の男の人は基本好きなんで、だいじょーぶよ? もしかしてこの子が彼女? 一晩レンタルとかの交渉は可能?」
いちいち下ネタ入れないでください。
「ヨシくん、何の話をしてるのよ!」
「いやー、彼氏、アタシの好みにピッタシなんで、よければ一晩、とか、なんなら二時間でいいから!ホラ、世間ではアタシはデカめの女だけど、ここならチビっ子でしょ?」
「・・・それくらいじゃないと、ここに住めないよね・・・というのは理解しました。うーーん、例の話があったから、検査結果が出たあとでならいいですよ。ヨシくんがいいならだけど」
おいおい、あっさり許可するのかよ
「いいじゃん。あと半年で私達は常識的な社会に出ていくんだから、それまでは楽しみましょ?ちゃんと避妊はしてね」
「するする。じゃ、あとはどうやってゆーわくするかだね。ヨシくん!」
まぁ、ここが異常な世界だってことは理解してますし、そこにすぐ馴染める人というのも得難い人材であることは間違いありません。
「じゃ、仕込みしておくから、みんなはリビング?あっちで適当に呑んだりしててねー、あ、仕込みといってもそっちの仕込みじゃないから安心してねっ!」
何を安心すればいいのかわかりません。
・・・
翌朝、自分たちは本当に驚きました。
寮の結束を高める、とかでなく、単に体を引き締めたい、くらいの理由で毎朝、寝起きのストレッチ兼ラジオ体操、体をほぐしてから15分走り(またはジムワーク)、15分泳ぎ、そしてストレッチと着替えをしてから朝食というのが、毎朝のルーチンです。
季節によっても違いますが、今は5:30~6:30くらいでそれをやっています。強制参加ではないのですが、みんな寮では薄着・・・というか布面積の少ない服装、男子はTシャツとボクサーパンツが多いですが、女子はさらに少なめ・・・なので、自分だけダルっとした体というのは耐えられないのか、ほぼ全員参加します。
朝食といっても今までは下手したらTKGのみとか、パンにジャムやバターを塗るとか、精々が冷食をチンしておかずをプラスする、くらいのものでした。
5:30ごろ、ここを通ったときには厨房に明かりもついてませんでした。それが、なんということでしょう。
「ほらー、並んでどんどん取ってってー、肉か魚は好みでいいよー。早いもん勝ちだよーー」
ワンプレートですが、肉または魚、野菜や豆などの副菜がいくつか載ったものが配られています。
炊飯器は今までも使われてましたが、中身は雑穀米でいい匂いもします。
ホテルのバイキング会場にあるようなスープジャーには味噌汁が用意されており、パンは勝手に焼けとばかりにトースターの前に置かれています。
これを・・・60人分を一時間もかからず準備できるものなの?
あと、なんかスパイシーだったけど味噌汁もうまかったし・・・。
気になったので、食事後に姫とジョージと三人で食事しているところに話し掛けてみました。
リルさん、どうやればできるんですか?
「ん、なに? もしかして朝ごはん? 炊飯器なんて自動だし、昨日のうちに仕込んでだけ。 副菜も冷蔵庫にほおっておけばできるやつを作ったり、市販品をバラしただけのもあるよ?ゴボサラとかね。 ロースターがあれば20人分くらいは一気に焼けるし、 スープ類はテキトーにつくっても大量なら味の調整はカンタンなんだよ。うまくスパイスを使えば塩分控え目にできるしねっ!」
そういうのも考えてるんですね。
「ちゃんと調理師だしねっ 国家資格だよっ!あとは運転免許くらいしかないけどさ」
正直、見直しました。昨日は本当にすみませんでした。
「色ボケおねーちゃんとでも思ってた?それもアタシだしマチガイじゃないよ!」「母さん!」
しかし、本当に親子には見えないですね・・・スッピンでも美人です。
「ありがと!でもここの美男美女の前にマジのスッピンはキツい!スッピンぼく見えるメイクはしてるよ」
そういうものなんですね。
「義之、女子のメイクというのは奥が深いのだ」
姫、姫からそういう話を聞くとは思いませんでした。
「あのな‥義之。私が何歳からモデルをやっていると思っているのだ?化粧歴はかなりあるぞ?」
そう言えばそうでした。




