女バスクラスマッチの顛末
はい、ジョージこと片山津敬一郎です。もう、マイティさんからの呼び名で定着しつつあるので自ら名乗っていこうと思います。
183cm 55kgでしたが、入学以来目を付けられて、というか掛けられて、体力も勉強もマイティさんにシゴいてもらっています。その、「シゴいて」という表現は男子高校生として下半身的なことに捉えられる可能性もありますが、そちら方面、下ネタ方向ではなく、まぁ、一応健全な方向性です。いろいろあるのですが、それは長い自己紹介とともに別途お話する機会もあると思います。ある意味慣れてますので。
自分も特に体力の無いほうではなかったと思いますが、ヒョロガリ方面ではありました。今では体力づくりもさせていただいてますし、実はゴハンもマイティさんのご実家でお世話になっており、わずか1月半で体付きが変わりつつあります。
それどころか自分の母も今後の転職も踏まえ、一緒にお世話になっている状態です。
意味がわかりづらいと思うので先に話しますが、マイティさんのご実家は、地元の中堅SIer、コンピュータシステムの会社で、自宅というのも社員寮を兼ねてます。社長令嬢というわけですが、自分達だけ贅沢をするスタイルではないようで、マイティさんのご両親?(ちょっとだけ複雑です)は社員寮内の3LDKのちょっとだけ広い部屋、マイティさんは自分の部屋が欲しいと言ったら社員用の個室をアサインされたとのことで、今は他の社員さんと同じく個室に住んでいます。
自分も母といっしょに二人用個室を使わせてもらっていますが、元々の家も1K、6畳間に押入とミニキッチンとお風呂・トイレがあるだけの、「豪華」からは、かけ離れた古~いアパート住まいでしたので、高一で母と同じ個室というのも特に気になりません。ずっとそうでしたし、母も家ではほぼ下着のみでしたし、まだ比較的若い母で、若手社員のみなさんともあまり年齢差がないことですし。
そんなこんなで特にGW中はほぼ合宿のような形で、朝と午後に体力作り、その間に学力向上と食育みたいな生活を送り、その後も中央高に通いながら継続的に鍛えられています。なぜ私を鍛えようとしたかは、まだ完全には聞いておりません。
その一環で女バスのトレーニングのためのパス出しをさんざん練習し、最初はボールの大きさに戸惑う感じでしたが、クラスマッチの少し前までには選手としてでは微妙かもしれませんが、女バスのトレーニングをするためのマネージャーとしてはギリギリ合格点をマイティさんからもらえていた感じです。
ユカさんだけは中学からのつきあいとのことで、最初から練習になってましたが、残り4名の中で一番うまいリコさんも最初は苦戦していました。初心者のミツキさんは言うまでもなく、経験がある程度ある、ももか、リオンさんも苦労していました。
何をやっていたかというとシンプルで、「パスなりワンバンなりで自分に来るボールをほとんど見ずに止まらずに取れ」です。または、一旦止まって見たあと動き出して、「見ずに動きながら取って、3P打つならそこで止まってすぐ打て」です。パスがくるのを止まって待ってたら相手にバレバレである、ということなんですが、これはなかなか大変でした。しかし、できるようになると、パス出しする人が誰に出すのか相手チームにわかりづらくなるんです。全員走っているからです。
試合運びは基本、ワンパターンです。まず、マイティさんが圧倒的な突破力でダンク、練習では全て体育館とはいきませんでしたが、クラスマッチ本大会の体育館であれば、リングにぶらさがるダンクもできるので、序盤で何回か見せつけます。
複数人でマークに来たらマイティさんが起点となってパス出し作戦です。ユカさん、リオンさん、ミツキさんと3ポインターが3名もいるので常時2名は3ポインターが出てます。なので、マイティさんに2名マークが来た時点で絶対に一人はフリーです。これで高確率で3ポイントを狙います。
これはたまらん、とマンマークに戻ると豪快ダンクが待ってます。そもそもマイティさんも3ポインターなので、軽く振り切れば自分で打ってしまいます。
それだけでなく、マイティさん抜きの5人でも、普通に強いチームになってしまっているようです。リオンさんが下がってマイティさんポジションからのパス出しと攻撃指示、あと4名のうち二名が直接ゴールまで上がるタイプ、二名が3ポインターというなかなかの布陣ですからね。マイティさん抜きでも平均身長が169cmくらいですから、高一女子としては普通に大きいチームです。マイティさんが入ると、一気に174cmくらいになりますが。
結果だけ書くと、
一回戦 I-B : 2-D トリプルスコア ベスト16進出
二回戦 I-B : 3-A トリプルスコア ベスト 8進出
三回戦 I-B : 3-C トリプルスコア ベスト 4進出
準決勝 I-B : 2-E ダブルスコア 決勝進出
決勝 I-B : 3-E 余裕のダブルスコア 優勝
という結果でした。
・・・
クラスマッチではメンバーコールが独特で、一年生の場合は中学のときの実績、二年生以降だと高一以降の実績で呼ばれます。マイティさんは中三のときに一回だけ出て模試で欠場したのでアナウンスにも苦慮したようです。
「1年B組、女バス選抜チーム、スピードシスターズの紹介です。
キャプテン 通称マイティさん、自称178cm、県大会ベスト8進出の試合のみ出場、
リコさん、175cm,、県大会ベスト4進出
ユカさん、173cm、県大会ベスト8進出、マイティさんと同チーム、リコさんのチームにマイティさん抜きで敗退
ももかさん、165cm、県大会準優勝
リオンさん、165cm、県大会準優勝、ももかさんと同チーム、
ミツキさん、170cm、県読書感想文コンクール3年連続金賞。バスケの戦歴はありません、
平均身長 173cm、クラスマッチの高一女子としては非常に高いです。
マネージャー ジョージ君、183cm 63kg。
ミツキさん以外は、中学の部活で、レギュラー、スタメン、またはそれを押し退けて出場した助っ人です」
「我は押し退けてなどおらぬ」
まぁ、一試合だけ出てbest 8になりましたが、そこしか出場していないひとの紹介が例外的になるのはしかたないと思います。平均身長にはマイティさんの自称でなく、回りから見える身長を採用したようです。そう言えば、コールでもマイティさんだけ「通称」が付いてましたね。
試合ですが、クラスマッチなので、1Q=5分、ハーフ10分、インターバル2分という短縮形式です。
試合内容は基本的に王者の試合、というか、一、二、三回戦は、「弱いものイジメはやめにしない?」という感じで、トリプルスコアという終了条件を満たした時点で
「すみませーん、それなりに自信あったんですが、もう戦えないので敗北宣言しまーす」的な発言を相手チームからいただきまして打ち切り終了となりました。
特に二回戦は三年対一年ということで、軽く見下してきた感じの相手でしたが、まず、大きさに驚き、試合開始後には多彩な技やパワーに驚き、ハーフタイム時には心が折れてしまいました。
「みくびってすいませんでした。こちらの負けでお願いします・・・」
とのことでした。
決勝の二年のチームが女バスのレギュラーが5人中4人というチームで一番苦戦しました。といってもダブルスコアでしたが・・・
そして、そのあとの決勝戦もあっさり終了したあと、その二年チームのリーダーが突撃してきました。
「これが、つい一ヶ月半前まで中坊のチームかよ!しかも中央高に来るのに受験勉強でナマってたんじゃねーのかよー!!」
「先輩、でよいか?女子の物言いにしては少々品が無い。我は特に受験勉強はせぬが、新歓で見ての通りだ」
「ほんとにフザけてんなー!前閣下、三年の鳥居原の親戚らしいな!あれだってあたしらからすれば人外なのに、あいつは「閣下」陥落だな!!。どうすりゃ一年の新歓で490点代が取れるんだよっ!!」
「複雑な話は無い。我は小五の三学期から大学レベルの学習を続けているだけだ。すなわち4年強やっているので大学生というか大卒直後と年数だけなら変わらぬ」
「・・・あたしが心配してもしかたないかもしれねーけど、小学校でも中学でも浮いてなかった?」
「・・・それは今更だ。それよりもチームメイトを褒めろ。我の無茶な要求に答えらるなら、一年にしてスタメンかどうかはともかくベンチ入りメンバー主体のチームに勝てる、ことを証明できた」
「あー、メンバー紹介聞いたよ。みんな県大上位の実力者じゃん。よく集まったね!」
「そこは偶然だ。偶然で済ますにはちょっとどうかと思う集まりかたなのは承知しておる。が、それよりチームメイトを褒めてやってくれ。一応、無茶な練習をしてもらった認識はある」
「すごいよすごい。褒めるほめるホメる。あんなノールックのパスまわし、よくできるね。なんであんなフリーのところに3ポインターがいて、しっかり狙って打てるのかねー、ウチの新三年生でもちょっとムリだねー、あんなん。チーム名スピードシスターズだっけ?ほんとに速いね!爆裂スピードジャンキーズでもよかったんじゃない!」
「その名はちょっとダサい、という表現でいいのか?、先輩。戦術については、こういうと皮肉すぎるかもしれぬが、地方大会やクラスマッチならこれでいけるとの認識だ。世界大会では通用せぬ」
「・・・っおぉぉぅいぃ・・・ものすごい皮肉だね・・・あってるかもだけど。それより、みんな、バスケ部入らない?もし別のがメインだとしても第二とか兼部とかでもいいし、ウチは一年だからってレギュラー取らせないとかないし!」
「「「「「あーーーーー・・・」」」」」
「ヘ???なんかヘンなこと言った、あたし?」
「すみません、このチームのマネをしているジョージと申します。」
「はいはい、知ってるよ。女帝のスポークスマンらしいね」
「女帝ではなくマイティさんですし、またスポークスマンというのはちょっと違いますが、結論だけ申し上げますと、マイティさんは第一が理学部、第二が野球部の想定で、兼部もしないので、バスケ部には入りません。ほかのかたは誘ってくださっても結構ですが、ミツキさんは図書委員志望ですよね」
「まじかーーー。女帝が入ったらインハイ行けるかもって思ったんだけどなーーー」
「アタシらもさんざん思ってて何度も説得しようとしたのよ、既に」「でもーー、絶対行かないねーー」
「私は第一は文学部司書斑で委員会活動は図書委員、第二は運動系になるんでしたよね?まだ決めてはいませんけど・・・」
「やっぱそうなるよなー、経験者なら一緒にいったらどこまでいけるかって夢見るよなー・・・てゆーか、あんた未経験者の子か!!あれで未経験?第二決まってないならゼヒゼヒゼヒバスケ部にいらっしゃーい、ほかの子も大歓迎するよ!!」
「まあ、そうなるよな」「だよなーーー」「アタシらは行ってもいいけど、見てのとおり大きくはないしさー」
「何いってんのよ。高校女子で165あればフツーの部活のバスケならあるほう!!背、高いよ!!ま、インハイ常連高とかだと別だけどそれでもイチバンちびっことかにはなんないよ!高一で平均170超えてるスーパーシスターズが異常なの!!」
「スーパーになっちゃったね」「だねーー」「気持はわかる」「ね」「なのですか?」
「先輩、というわけで、マイティさんはあきらめていただければ幸いです」
「やっぱスポークスマンじゃん。で、他の子たちはいいよね!!」
「先輩、、最近では男女差をつけないためスポークスパーソンと言うことも多いようです」
と、言いながら、マイティさんを見る。
「然るべし。」
「え?叱るの?」「ちがーーうーー」「「「???」」」
「あのですね、マイティさんは、誘うのも入るのもご自由にどうぞ、といってますよ?」
「やっぱスポークスマ……パーソンじゃん!誘う誘う誘う!!!みんないらっしゃーーい!!」
「然れども!!」
「やっぱ叱るの?」「じゃーなーーーいーー」「「「????」」」
「いや、第二の話だ。皆、悪いことは言わぬ。第二は理学部にしておけ。ユカとリオン、ミツキ以外は特にな!!お主ら絶対試験対策などせぬだろう!何らか便宜を図ってやるので第二は理学部にせい!」
おっしゃる通りですね。具体名を出して申し訳ありませんが、リコさんはバスケはなかなかですが、勉強のほうは厳しそうです。
「ジョージーー、心の声が見えてるぞーーー、ももかんもみっちゃんも第二は理学にしとけーー。アタシもするしーー」
ユカさん、心の声は見えたりしませんよ。
「え、ももかんってアタシ?ミツキはみっちゃんなのにももちゃんですらないのアタシ?」
「いまふと思いついたーーーももかん。なんかいいだろーー」「ももかん」「「……」」「ん?わたしは桃花って呼ぶよ」
「僕もももかさん、と今まで通りに呼びますよ、多分マイティさんも。」
「あんまり救いになってないよ。それ。まぁ、その呼ばれかたはしたことないけど、試しに受け入れてみるか……」
「よし、ももかんも来い!!」「先輩いきなりそれヒドくない?!」
こんな感じで、無事、クラスマッチは優勝で幕を閉じました。まぁ、続きがあるんですが、それはまた今度。