ハートの意味
柚菜子がオレの部屋のドアの前にいた…
「あー…柚菜子。」
さっきの独り言は、聞かれた?
なんか、言われる?
…
「ノックしようとしたら、ドア空いてて…ごめんね……てか、体育祭…あと、一週間だね!」
ホッ、どうやら聞かれていなかったようだ。
「うん…」
「で、さっきの独り言は、なに?」
⁉︎
やっぱり…聞かれてたやん。
「あー…、それは…なんだろうな。オレにもよくわかんねー」
「なにそれ?変なのー」
って、柚菜子が笑ってくれたからよかった。
「ねぇ、ナオ」
「ん?」
「わたしたちってさ…いつまで幼馴染なんだろうね?恋人ができたら…やっぱりお互いの部屋に行き来しなくなるんだろうね?」
って言いだした。
…
なぜ今、このタイミングでそんなこと…
「それは…そうかもだけど。でも、柚菜子は大丈夫だよ。まさかの展開になるかもだから、心配すんなって。」
「え?まさかの展開?」
「うん。柚菜子は、無敵ってこと」
意味わかんないけど、でも無敵ならいっかって、無邪気に柚菜子が笑ってくれた。
たぶん…これが柚菜子と幼馴染として、最後の会話になるんだろうな。
そしてこの笑顔は、これから冴木くんに向けられるんだ…。
柚菜子は、山田さんと冴木くんが両思いって勘違いしてるんだもんな。
きっとびっくりするだろうな。
好きな人が、両思い確定の人に告白して、自分はフラれるって沈んでからの、まさかの告白されるんだから、まさかのサプライズ的な感じで、好きな人から告白されるって、なかなかのびっくりだよね。
「よかったな、柚菜子。」
「えっ?なにが?」
なにも知らない柚菜子は、キョトンとしていた。
「すぐにわかるよ。柚菜子、オレはいつでも柚菜子の味方だからな。なんかあったらいつでも相談してよ?」
「えっ?なんか今日のナオへんー。あ、いつもへんか。」
「なんだと?」
「あはは、…はぁ…」
笑ったかと思ったら、いきなり暗い顔をする柚菜子。
…
教えてあげたい。
柚菜子は、両思いだから大丈夫だよって。
…でもね、それは冴木くんに悪いもんな。
「二人三脚…」
え?
柚菜子がいきなり、かなしそうに二人三脚とつぶやいた。
「うん?どうした?」
…
柚菜子は、少し青白い顔で
「二人三脚…楽しかったよ」
と、力なく笑った。
…
柚菜子は、二人三脚のあと完全にフラれると思っているから、こわいのかもしれないな。
「柚菜子…、柚菜子は無敵なんだって!大丈夫だよ。自信持ちなよ!あとさ、柚菜子…薬ある?頭痛いだろ?」
オレの言葉に柚菜子は、パッとオレをみて
「え、なんで頭痛いのわかるの?」
と、目をぱちくりさせていた。
柚菜子は、昔から片頭痛持ちだ。
だいたい柚菜子が頭痛いときは、顔が青白いのだ。
「ほら、水と薬」
オレが水と薬を手渡すと、クスッと笑い
「おかあさんみたいじゃん」
って言いながら、薬を受け取った。
そして、
「薬ありがとう。じゃ、体育祭頑張ってね。応援行くからね。ちゃんと見届けるね」
っていい、力なく手を振って帰っていった。
柚菜子に本当のこと教えてあげたかったけどね…
こればっかりは…ね。
あ、柚菜子って…前に山田さんが告白するってオレが言った後も、片頭痛発症してなかったか?
オレが余計なこと…言ってしまったばっかりに…
柚菜子は、冴木くんがよっぽど好きなんだろうな…。
☆ ♪ ♤ ★ ♧ ♦︎ ♯ ♢
わたしの名前は、柚菜子。
今日は、幼馴染のナオと放課後寄り道に来ているんだ。
なんだか、放課後デートみたいでとても楽しくてワクワクって感じ!
楽しいって喜んでいたら、ナオの同じ学校の人にあってね…
山田さんっていう人なんだけど…
なんだか、とっても可愛らしい人で…
ナオが…ナオが…その人のところへ行ってしまいそうな気がして、とても胸騒ぎがしたの。
わたしは、ナオが好き…
そしてその数日後…
わたしは、見てしまった。
ナオがあの山田さんっていう人と一緒にいたのを…。
まさか⁉︎って思ってナオに確認スタンプを送ったの。
みどり色のスタンプを。
色に意味があって、羨ましいとか嫉妬の意味があって、あと新しい出会いって意味もあるんだけど…
ナオの返信によっては…わたしは、ナオを諦めて、新しい出会いを求めにいこうって思っているの。
そしたら、ナオ…が、白いハートのスタンプを送ってきた…。
意味は…
あなたのことが好きでした。
もう過去形…なのよ。
それに白は…
愛がスカスカって意味もあるみたいで…
だから、ナオは…わたしを好きじゃないってことなの。
…
ナオ…
さようなら。
今までありがとう。
わたしは、新しい出会いを求めることにしたの。
続く。