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幼馴染にパートナーができたと報告したら…  作者: 猫の集会


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11/11

いってらっしゃい

 留学の前日、わたしは荷物の最終確認をしていた。

 

 …

 

 この部屋とも、しばらくおさらばなんだなぁ。

 

 

 グスッ

 

 いけない!泣いてる場合じゃないんだ。

 

 夢に向かって出発するんだ‼︎

 

 通訳の仕事するために、バリッバリのできる人になってやるんだから‼︎

 

 よし‼︎と、スーツケースのフタをしめた。

 

 

 と、同時にドアがコンコンとなった。

 

 おかあさんかな?って思ったら、

「柚菜子…オレ。ドアあけなくていいからきいてほしい」

 って、まさかのナオ⁉︎

 

「どうしたの?」

 と恐る恐る返事をした。

 

「明日、留学するんだよね?空港までお見送りしたかったけど、柚菜子が嫌がりそうだったから、だから…家にきちゃった。いってらっしゃいくらいは、言わせてよ。柚菜子、元気でね……いってらっしゃい。」

 

 ナオ…

 

 わたしは、ボロボロと涙をこぼすのが精一杯で、返事ができなかった。

 

 うっ…うぐっ…

 

 また、そうやって優しくするじゃん⁉︎

 

 なんでいつもそうなよ⁉︎

 

 ナオのバカ‼︎

 

 って思っていたら、階段を降りていく音がした。

 

 …ナオ。

 

 帰っちゃうんだ…

 

 わたし、まだいってきます言ってないのに…

 

「ナオっ‼︎」

 

 わたしは、ドアを勢いよくあけた。

 

 そしたら、ナオがわたしの部屋に戻ってきてくれた。

 

「柚菜子、久しぶりだな。てかさ、柚菜子…泣きすぎだろぅよ」

 って、ナオがわたしに笑いかけるから…そんな笑顔最後にみせられたら…わたし…

 

 

 …

 

「ねぇ、ナオ‼︎わたし…わたしね、もう闇堕ちしないから、だから‼︎だから…お願いがあるの。」

「えっ?闇堕ちって…ってか、お願いって?なに?」

「あのね…もう絶対言わないから、抱きしめてほしい。ほら、外国だと挨拶にハグするじゃない。そういう感覚でいいから…だから、ハグして…ほしいの。」

 

 ナオは、じっとわたしをみたかと思えば…クスって笑って

「ツンデレかよ?」

 っていいながら、優しく抱きしめてくれた。

 

 ナオ…

 

 ナオの抱きしめ方が、すごく優しくて…だからわたしは、涙がとまらなくなってしまった。

 

 

「なぁ、柚菜子。」

「なに?」

 わたしは、ナオに抱きしめられながら返事をした。

 

「オレのことキライなんじゃなかったの?」

「うん、キライ‼︎これからもっとキライになるよ‼︎たぶん留学から帰ってきたら、大っ嫌いになってると思う」

「そっか。でも、それでも抱きしめてほしいのって、なんで?」

「それは…ナオが…」

「オレがなに?」

「ナオが、ただの幼馴染に中途半端に優しくするから…」

「ただの幼馴染か…オレは前も言ったけど、柚菜子のこと好きだよ?」

「…だから、そういうところだよ!」

 わたしは、ナオからベリっと離れた。

 

「ナオがわたしに優しくすればするほど、辛いの‼︎」

「なんで?」

「なんでって…本命じゃないからじゃん‼︎」

「え?柚菜子の本命は、だれなの?ほんとは本命に抱きしめてもらいたいってやつ?てか、やっぱりまだ…冴木くんを好きなんだ?でも、オレを嫌う意味は?」

 

 ?

 

「え?冴木くん⁇」

「違うの?」

「いや、冴木くんのこと一度も好きになってないよ?まだってなに?」

「え?だって…体育祭のあと、冴木くんと山田さんが付き合いだして…それで柚菜子が闇堕ちしたんでしょ?」

「ん?山田さんと付き合いだしたのって…冴木くんなの⁉︎じゃあ、ナオって…」

「オレは、その日柚菜子にフラれたようなもんだったよね。わたしも好きとか言いながらも、そのあとめっちゃ避けてきてたし…」

 

 

 ⁉︎

 

 えっ⁉︎

 

 どういうこと⁉︎

 

「ナオが体育祭の日、山田さんに告白したんだよね?前に電話で言ったよね?一位とったら山田さんに告白するって…」

「なに言ってんの…山田さんが告白するって言ったんだよ。幼馴染にさ」

 

 …

 

 え…

 

「わたし…ずっと今までナオが山田さんと付き合ってるって思ってたよ?」

「ないない」

 

「え…じゃあ、わたし…留学しない」

「いや、なに言ってんの…それは、ダメだろ?やりたいことあるんだよね?」

「…そうだけど。でも…じゃあ、ナオがわたしを好きって…あれは恋人としてなの?」

「うん、当たり前じゃん」

 

 …

 

「うそっ…グスッ…うそだぁ…グスッ」

「うそじゃないよ?オレはずっと柚菜子が大好きだよ?」

 

 …

 

「わたしも…ずっと好き。キライとか言っちゃって、ごめん…」

「ううん、いいよ。柚菜子おいで」

 

 オレが優しく手を伸ばすと、柚菜子はオレの腕の中にそっと包み込まれた。

 

「柚菜子、オレ実は最近バイトしててね、お金結構貯まったんだ。だから、さみしかったらいつでもいいなよ?すぐに会いに行くからさ」

「ナオ…ありがとう。でも、それじゃあっという間にお金なくなっちゃうじゃん。なら、毎日連絡するね。そしたら、いつでも近くにいる感覚になれるから」

「わかった。そのかわり、電話たくさんするね。柚菜子の声ききたい。ずっときいてなかったし」

「…それは、今までごめん」

「いいって。でも、今まで音信不通にしてた罰として、帰ったらずっと離れないからね。覚悟しといてよ?」

「うん、わかった♡」

「よろしい。明日もお見送り行っていい?」

「うん。でも、ナオが来たら…離れたくないってぐずって、いけなくなるかも」

「大丈夫。飛行機で食べる用のお菓子たくさん用意するから。それ、飛行機で食べなよ」

「え、嬉しい。」

「だろ、柚菜子は食いしん坊だから、オレすぐに柚菜子を操れちゃうんだ」

「なら、もっと早くに操ってほしかった。」

「うん、たしかに。」

「ねえ、ナオ…帰ってきたら、二人三脚しよっか。ベッドで」

「マジか‼︎それは、楽しみすぎんだろ」

「ふふ、そうだね♡」

 

 

 オレたちは、時間が許す限り抱き合いながら、くだらない話をした。

 

 今までの、すれ違い時間を取り戻すかのように。

 

 

 

 そして次の日、柚菜子を見送った。

 

 

「いってらっしゃい」

「いってきます」

 

 

 

 

 

 

 からの一年後

 

 

 

「おかえり‼︎」

「ただいまぁ‼︎」

 

 顔をみるなりオレたちは、ガッツリと抱き合いましたとさ♡

 

 そして、二人三脚するのであります♡

 

 

 

 おしまい♡

 

 

 

 

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