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敗者

 ナオは、たぶん今でも山田さんと付き合っているんだろうな。

 

 ナオ…元気かな。

 

 …

 

 

 いけない!

 

 ナオには、彼女がいるんだから…早く忘れなきゃだ!

 

 さ、バイトバイトっと。

 

 少し早いけど、家にいるとつい余計なこと考えちゃうから、もう出かけることにした。

 

 

 玄関をガチャっとあけると、目の前にナオ⁉︎

 

 …

 

 なんでこんなところにいるのよ…

 

 なんで、わざわざわたしのところになんか…

 

 

「ナオ…なんで…」

「柚菜子…オレなんかしちゃったかな?ずっと避けられてる感がすごいんだけど。」

 

 …

 

 ナオに彼女できたから…

 

 ナオが彼女なんかつくるから悪いんじゃんって言いたかったけど…

 

 そこをせめても…仕方ないよね。

 

「あー、避けてたっていうか、バイト始めてね…忙しくてさ。ごめん…なさい」

 

 ナオがわたしをまっすぐに、じっと見るから…だから、わたしは…息が詰まりそうになった。

 

 そして久しぶりにナオをみたら、なんだか泣きそうになってきちゃったじゃない。

 

 どうしても泣き顔をみられたくなかったから、わたしはつい笑顔を無理矢理つくってナオに、

「わたしね、今バイトしてお金貯めてるの。でね、留学するの。一年間だよ!すごいでしょ?向こうでそのまま彼氏できて結婚の約束とかしちゃうかもだなぁ。楽しみ!すっごく‼︎」

 って、笑ってみせた。

 

 どうせ、ナオは…わたしが一年間留学しても、痛くも痒くもないんだろうね。

 

 どうせ、すごいじゃん!いってらっしゃいって言われるんだ。

 

 って思っていたら、やっぱりナオは

「へー、留学か。すげ〜な‼︎カッコいいじゃん」

 って言った後に

「で、なんで泣いてるの?」

 って、聞いてきたの。

 

 …

 

 わたし…泣いてる?

 

「えっ?やだなぁ。泣くわけない…じゃん。さみしくなんかないし、留学楽しみだし…?そ、それにっ…一年間ナオに会わなかったら、ナオを忘れられそうだし?泣くわけない。」

「いや、めっちゃ泣いてるじゃん…?オレは柚菜子が一年もいなくなったら、さみしいけどね。」

 

 …

 

 ナオは、いっつもそう。

 

 さみしいとか、彼女いるくせにいうんだ。

 

 好きな人いても、平気でわたしを抱きしめるんだから…。

 

 それに、好きとか簡単にいうじゃない?

 そりゃ幼馴染としての好きだけど…

 

 でも、わたしは単純だから…

 

 だから、わたしは…いつまでたってもナオが忘れられないんじゃない‼︎

 

 だから…合コンいっても、いい人いてもどんなに優しくされてもナオの顔が浮かんじゃうんじゃん‼︎

 

 

「ナオは、ずるいよ‼︎いっつもそうやってさ…簡単にさみしいとか…前だって好きとかさ…そんなことしてこないでよ‼︎わたしに優しくしないで‼︎ナオなんか、わたし…わたしは…キライなんだから‼︎」

 

 キライになる‼︎キライにならなきゃいけないんだから‼︎

 

 

 わたしは、あぜんとするナオを置き去りにして、泣きながら全力で走った。

 

 ナオのバカ‼︎

 

 バカバカバカなんだからっ‼︎

 

 幼馴染なんかにかまってないで、ちゃんと彼女だけをみてればいいのにさ…。

 

 なんで、家の前で待ってたりするのよ…

 

 そういうところだよ?

 

 幼馴染から避けられてるからって…そんなのほっとけばいいじゃない。

 

 

 そんなんだから…そうやって優しくするから、わたしがつけあがるんじゃない‼︎

 

 ナオのバカぁ。

 

 せっかく留学して、ナオなんか忘れたいのに…また中途半端に優しくしてきてさ…。

 

 ほんとヤダ‼︎

 

 もう、留学まで絶対会わないんだから‼︎

 

 これから、もっとバイト増やして頭の中からナオを徹底的に追放するんだから‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 それからナオが家に来ることがなくなった。

 

 ナオなんか、山田さんとイチャラブでもしていればいいのよ。

 

 彼女だけを大切にしていればいいのよ。

 

 いちいち、こんなめんどくさい幼馴染になんか、関わらなくていいのよ。

 

 …そもそも、わたしはただの幼馴染。

 

 彼女として選ばれたのは、山田さんなんだから。

 

 ずっと…十数年も一緒にいたわたしよりも、選ばれたのは、出会って数年…いや数ヶ月の山田さんなんだから…。

 

 

 わたしは、選ばれなかった…んだから。

 

 

 …

 

 

 

 バカナオ‼︎

 

 

 そうこうしている間に、あっという間に月日は流れて、わたしは明日ついに留学いたします。

 

 

 続く。

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