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071番外編_製品化予定のキャラの話

システム室に入ってきたヨウキは、肩に置いていた10cm程度のフワフワモフモフの丸く黄色いひよこのぬいぐるみをはずすと、シキとアオバの席から離れた位置にある丸テーブルの上に、持ってきたビニール袋と一緒に置いた。

「二人ともちょっとこっちに来てくれ。」

ディスプレイに向かったまま自分をスルーしているシキとアオバに、もう一度近くにくるようにと声をかけると、ヨウキは胸ポケットからモバイル端末をだして軽くたたき始めた。

二人はしぶしぶ席を立ったが、丸テーブルの上に置かれた縦楕円のつぶらな瞳のひよこを見て表情を変えた。

真剣さと興味が混ざった二人の表情は、ヨウキが想像した通りのものだった。


「モバイル端末と連携して、キャラのぬいぐるみをスキャンすると魂が抜けるみたいにホログラムが出る。」

ヨウキがモバイル端末のカメラでひよこのつぶらな瞳を読み取り、瞳を中心にズームで全体をスキャンすると、目視できるかできないかくらいの白い無数の光の粒が照射され、対象となる10cm程度のフワフワモフモフの丸いひよこのぬいぐるみを黄色の光が囲み、ぬいぐるみ全体が淡く光っているように見える。

「この部屋暗いから、ぬいぐるみに届く前の白い光の粒も目視できるな。」


ぬいぐるみが纏っていた黄色の光の塊が、ぬいぐるみから分裂して羽ばたきながら端末に近づき、パタパタと空中で羽を動かすホログラムのひよこが再現された。


「光が集約されながら、モバイル端末に遠い点から近い点に移動できてますね、」

アオバはぬいぐるみから抜け出たように見えた光の塊と、光の軌跡を追っている。


「アプリ操作移動と端末の照射コントロールは大丈夫みたいだな。」

シキが光のひよこに手を伸ばすと、光と重なった部分の指が黄色い固まりの中に透けて見えた。

「こうすると、まるで、ぬいぐるみから魂が抜け出てきたように見えるだろ?」

ヨウキの言葉にシキとアオバが頷いた。


「こんにちは。」

ヨウキが持っていたモバイル端末を胸のポケットに直しながら、ひよこに話しかけると発話を認識したひよこが羽をパタつかせながらヨウキの方に体を向けた。


「ピッピッピッ!」

ヨウキを認識すると、ホログラムのひよこが羽をパタつかせて挨拶をしているように見える動きをした。


「うん、元気そうだ。

ポケットの布を通してもブレないし、音声もホログラムから発生しているように聞こえる。

光照射の向きを変えると、キャラと一緒に自撮りもOKと。」

ヨウキはポケットから再度端末を取り出して、カメラと照射向きを自分の側に変更すると、自分の顔と横に現れたホログラムのひよこに向けてシャッターを押した。


「あー、フラッシュが入るとぶれるな。」

撮った写真を確認していると、横から覗き込んだアオバが顔をしかめた。

「ヨウキさん、フラッシュ使うなら専用端末にした方がいいですよ。

キャラの光を認識させて、フラッシュが被らないようにできますし。」


「専用の方が体温の再現と、指への圧迫度の再現が多少はできるからより本物っぽくできもする。」

と、シキ。


「専用ハードの方が確かにコントロールできることが多いから、こちらにとっては都合が良いけど、俺的にはいくつも端末を持ち歩きたくないんだよね。

せっかく光照射対応のモバイル端末が出てるんだから、今は合わせて乗っかっていこうかなって。」


「俺も複数端末を持ち歩きたく無いから、そこはヨウキさんと同意件です。

ですが、それだとフラッシュ対応は無理だと思いますよ?」


「ヘルプキャラみたいに、固定の場所で使うだけなら専用カメラと端末と組み合わせてフラッシュ対応もできる。

そもそも、この補助キャラ自身が光なんだから、今みたいにれば思ったようには写らない。

あと、専用だとカメラセットの範囲を広げるだけで、キャラが端末から離れて自由に移動できる範囲も広げられるけど?」

と、シキ。


「そう、部屋の中の固定範囲だけで使うという需要もあるから、そっちは別売りオプションとして考えてる。

あと、指への圧迫度の再現というよりは、触感、ようするに手触り、肌触りと言うのは必須だから、固形ぬいぐるみで再現するのが必須。

さすがにそれを光で再現するのは、今は無理だろ?」


「無理かな。今は。」

「まあ、そうですね。今は。」

”今は”を強調するシキとアオバ。


「だったら、持ち運び便利な自分のモバイル端末にアプリをインストールして、触感を再現するため固形のぬいぐるみを体の好きなところにとまらせておく。

ぬいぐるみは体温に反応して吸着するから、厚手のコートなんかでなければ大丈夫だしね。」


「分離させるよりも、ぬいぐるみに照射対応カメラ埋め込みはだめなんですか?

目に専用コードを埋め込むだけじゃなくて。

飛べはしませんが、動きの再現とか熱の再現とかはできますよ?」


「飛んで、跳ねて、あちこちに動く様子を再現しないと、普通に動くぬいぐるみやロボットと変わらないだろ?

だから、その部分はホログラムで対応。

あと、ちっちゃい子だと何するかわからないから壊すだろ?

触感を感じる固形のぬいぐるみは、ちっちゃい子が抱っこしてても、落としても、汚して洗濯しても大丈夫なものにしときたいんだよ。」


「ちっちゃい子ですか?」

おかん健在だと認識するアオバ。


ヨウキが机の上に置いていたひよこのぬいぐるみを肩に置くと、ホログラムのひよこがぬいぐるみのひよこに吸い寄せられるように重なり、、肩の上でひよこが羽をパタつかせているように見える。


「とりあえず、このままオフィス内うろついてくる。

ここの暗さだとはっきりわかるけど、太陽光の下とか、電気のあたり具合の違うとこだとどうなるか。」

ヨウキは肩を回し、上下させひよこが落ちないことを確認すると、「じゃ、また後で。」と言いながらシステム室を出て行こうとしたが、扉の数歩手前で立ち止まった。

「あっ、それ、ちゃんと食べとけよ。

後で、ごみ回収しに来るから。」


思い出したように二人を振り返り、テーブルの上に置いたビニール袋を指してそう言い添えると、今度こそシステム室から出て行った。


「・・・食べておかないと、手ずから食べさせられそうですね。」

「とりあえず、空にしてから続きやるか。」


シキとアオバはヨウキが持ってきたビニールからランチボックスを出すと、分厚い卵や彩りのよい食材が挟まれたホットサンドを手に取った。

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