表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/71

065_公開告白の話

「えーーーっ!

ルイス様がココアさん?どういうことですか?

このゲーム二人用ですよね?

ヨウキさんが知ってるってことは、私だけが知らなかったってことですよね!!!」


チャナが叫び声を上げると、二人の成り行きを見守っていた周りの生徒たちに動揺が広がった。


ヨウキへの好感度がマックス以上になっていた皇女とスカーレットの気持ちは、今はチャナに向いている。

ヨウキの取り巻き令息は、影響を受けずそのままだが、周りの生徒たちはルイスとジョエルを除いて皆チャナへの好感度が高くなっている。

チャナに嫌味を言っていた令嬢二人さえ、チャナへの好感度が上がっている状態だ。


会場中央の大きな木の下で起こっている出来事に、皆がざわつき始め、それは皇女とスカーレットも同じだった。


「チャナさんがあんなに大きな声を出して動揺するなんて、ヨウキ様はチャナさんに何をされたの?」

「チャナさんは知らなかったと言ってますよね、何か騙されたのでは?」

皇女とスカーレットは、チャナの叫びから認識できた言葉でチャナの動揺の理由を推理し始めると、そこに、すかさずジョエルが口を挟んだ。

「補助キャラの動物たちは、花壇を荒らすなんてことはしない、チャナさんに冤罪を掛けるためのデマだったの。

本当の犯人は別にいる。」


「なんだって?本当の犯人、あ?

なんてこと、、、、私はそんなデマに踊らされたのか?」

冷静さを欠いているスカーレットは、証拠がないジョエルの言葉だけを鵜呑みにして頭を抱えた。


「ハンニンココニイル」

「コイツラダ」

「ソウソウ」

チャナのオウムたちが、周辺の生徒たちの中にいた、先ほど火花を散らし合った令嬢の頭上を飛び始めると、令嬢たちの前にいた生徒たちがモーゼの海割のごとく、一斉に左右に分かれてみごとな人の道を作った。

スカーレットがその道を通り、令嬢たちの前に立つと同時に令嬢たちはワッと泣き伏した。


「ご、ごめんなさい、私たちが犯人なんです。」

「チャナ様がデイジー様に言い寄ってる上に、ヨウキ様に迷惑をかけていると思って。」

「「私たち、すごく頭に気て、自分でも止められずに、どうかしてたんですう。

ごめんなさい!!!」」

カードによる強制力で(男)ヒロインへの負の感情を倍増させられて行動してしまった令嬢たちだが、チャナへの好感度が上がった今となっては言い訳する気もなく、ジョエルとオウムたちの言葉に何の反論もせずあっさりと自白した。


その動揺はさらに続き、他の生徒たちにも波紋を広げた。

「すみません、私たちもデイジー様にかまわれる転校生に嫉妬して、責めたりしてしまった。」

教室で、チャナを責めていた男子生徒もひざを折って項垂れ始めた。

「いえ、彼らだけではありません、黙って見てはいましたが、デイジー様にかまってもらえる転校生をよく思っていませんでした。」

次々と泣き伏す令嬢に、ひざを折る令息たち、そこに、全く関係のない警備やウェイターまで、チャナに同情して肩を揺らしてもらい泣きを始めた。


混乱する周りの様子と、今、胸に抱いている思いに皇女は固く決心した。

「ヨウキ様、皆さんがこのような愚行に走ったのは私の責任です。

転校生のチャナさんを特別視して、他の生徒たちが嫉妬してしまうほどかまってしまっておりました。

ですので、こんな私はヨウキ様に相応しくありません。

婚約を破棄させていただきますわ。」


「えーーーーー!」

それに一番驚いたのは、やはりチャナだった。

「そんな、デイジー様は何も悪くないです、ヨウキさんが。」

動揺するチャナに近づきその手を取った皇女は、碧眼の瞳を潤ませてチャナを見つめた。

「いえ、婚約者がありながら、チャナさんに惹かれる自分を止めることができません。」


手を取り合う皇女とチャナを、チャナの後ろで眺めていたヨウキが、皇女に向かって礼を持って頭を下げた。

「わかりました。

それが、デイジー様の幸せにつながるのであれば、謹んで婚約破棄を受け容れましょう。」


皇女とチャナのやりとりや、ヨウキの潔い態度を離れた場所から傍観していたルイスとジョエルが顔を見合わせた。

「あら、やっぱり、デイジー様とのハッピーエンドかしら?

悪役令息エンドも視野に入れて欲しかったけど。」


皇女がチャナの後ろにいるヨウキを見上げると、潤んだ目で謝罪した。

「ごめんなさい、私は今までヨウキ様に甘えておりましたわ。」


「いえ、しっかりお役に立てなかった私が悪いのです。」


二人のやりとりに感動している周辺生徒からはすすり泣く声まで聞こえてきた。


頭を越えての皇女とヨウキのやりとりに、チャナは一人だけ焦りに焦ってしまっていた。

「そ、そんな、まだ答え聞いてない。

それに役に立たないことない、悪いこともないです。

ヨウキさんはいつも、人に負担を感じさないように、相手をカバーして、素知らぬ顔をしていて。

誰にでも優しすぎるおせっかいおかんだし。

下っ端の私までいつもカバーしてくれて、先輩方との交流も手助けしてくれて、そんなヨウキさんが役に立たない人なんてことはないです。

生意気言っても優しくて、だから、大好き、で。」


皇女の表情が驚きに変わった。

「えっ?

チャナさんはヨウキ様が好きだったのですか?」

スカーレットも驚き叫ぶ。

「今のは、チャナさんからヨウキ様への愛の告白ですか?」


「まあ!」

一部の生徒たちが歓喜の声をあげる中、一番大きな喜びの声を上げたのは、やはり、ルイス扮するココアだった。

「金髪碧眼の公爵子息に、ただの転校生だけど、ピンクゴールドの髪と瞳のスカンツをはいた可愛らしくもある美少年からの愛の告白。

何て甘美なのかしら。

中の人の年齢性別何て、問題にもならないわ。」


興奮したルイスが二人に拍手を送ると、つられて、周りの生徒たちも涙ながらに拍手をし出した。


「分かってると思うけど、断罪イベント中って録画されてるからね?」

自分の権限で、今回のテスト動画を公開するつもりはないヨウキだが、チャナにはそれを教えない。

「分かってます。

こんなこと言う気はなかったんです。

ただ、シキさんとアオバさんへの態度だけ他と違ってたから、それを聞いて諦めようと思って。

ヨウキさんが大好きです!

それで、シキさんとアオバさんのどちらが一番なんですか!?」

チャナは、自分が勝手なことを言っている自覚と情けなさで涙が出るのを堪えるために、声の出せる限り思いっきり大きな声を出した。


チャナの大きな声に拍手の音がなりやみ、誰も何も言わず音を出せず、静けさが広がり、皆の視線だけがヨウキに集まった。


「わかった、チャナの勇気に免じて答えるよ、俺の一番は、シキ。

小さい頃から面倒見てきたからね、これは絶対に代えられない。」


声を出した後、やはり涙が出てきてしまい、ヨウキの答えの後半部分はほとんどチャナの耳に入らなかった。

「や、やっぱり、シキさんなんですね。

答えていただいて有難うございます。

これからも仕事頑張りますう。」


そんなチャナとヨウキのやりとりを見ていたヨウキの三人の取り巻き令息たちは愕然としていた。

「そんな馬鹿なことが、今まで仕えてきた我々をヨウキ様は見捨てるのか。」

「我々よりも大切なものがあると、それは代えられないと。」

「もう、我々のことは必要ではないんだ。」

今までの忠誠心が低く、疑惑が高くなり、見捨てられたという結論に至ってしまった。


そしてまた、チャナの様子とは裏腹に、皇女が今までの淑女然とした態度を一変させた。

「私は、健気なチャナさんを諦めません!

それに、私という婚約者がいながら、他の方を一番に考えているというだけでなく、チャナさんのように可愛らしい男性をも誘惑するなんて、そんな淫らなヨウキ様にはこの学園で勉学を育む資格はありません。

学園を追放させていただきます。」

そこに皇女の後ろにいたスカーレットも直球的な理由で賛同し始めた。

「そ、そうです。

恋敵は追い出すべきです、デイジー様!」


自分のせいではあるのだが、皇女たちの態度が一変した様子に、チャナは沈んだ気持ちが吹き飛んだのと同時に冷や汗をかいていた。

「うわー、裏ワザ効果って、こんなにエグかったんだ。

これ入れるのやめた方がいいんじゃないかな、負けた人泣いちゃうよ。」


無責任なチャナの言動をよそに、攻略対象である、第二皇女の発言を受けたプログラムから、薄白いパネルが表示されゲームの結果を告げる。


<悪役令息の追放が宣言されました。>

<ヒロインの第二皇女ルートイベントが解放されます。>

チャナが入手していた第二皇女のはにかみ笑顔ショットのカードが、チャナから飛び出ると野外パーティー会場を駆け抜けて、辺りの光に負けないほどの輝きを発しながら飛び散り、その光はチャナに全て降り注がれた。


「あれ?私、ヨウキさんに勝っちゃった?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ