第095話 強化合宿の始まり
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時の流れは早く、気付けば強化合宿の日が来ていた。
この合宿が終われば、いよいよ地区予選も目前だ。
だからこそ、全員に気合いが入っている。
この強化合宿では得られる物が多い。
それを全員知っているからだ。
「整列しろ、お前ら。今日から強化合宿を行う環成東トレーニングセンターだ。関係者の方に挨拶をするからしっかり整列しろ」
ズラッと並んでいる施設関係者の方々を前に整列をする。
そして、万常先輩が代表として少しばかりの言葉を述べた後に俺達も大声で挨拶をする。
これから始まるのだなと気合いが入った。
「それでは早速練習に移っていく。と言いたい所だけど、それよりも先にお前達にはやってもらわないといけないことがある」
「やらないといけないことですか?」
「守備位置の違う奴とペアを組め。学年は関係ないぞ。守備位置が被らなければ誰とでも良いぞ」
急に何が始まるのか分からなかった。
だけど、彼に言われた通りに動くしかない。
俺は誰と組もうかと悩んだ。
学年も関係ないなら普段は話した事のない人も選択肢として悪くないか。
いや、合宿中にずっとペアで動く可能性も考慮すると話した事のある奴の方が良いか。
悩みに悩んでいた結果受け身になっている自分がいた。
誰か話し掛けてくれたらそれが1番楽だからな。
「おーい、大杉くん!ペア組もうよ!」
話し掛けてくれたのは竜田だった。
もうこのまま誰にも声を掛けられないのではないかと不安に思っていたので、声を掛けてもらって正直有難い。
それに知った顔なら余計に安心出来る。
「よーし、大体ペアは組めたみたいだな。それじゃあ、今組んだペアの相手に今回の合宿中に達成する目標を考えろ」
どうやらペアという制度は、この為にあるみたいだ。
それにしても竜田の目標か。
達成は出来るけど、あまりにも簡単過ぎるのは竜田のためにもならない。
どうにか良い塩梅の物を思い付ければ良いんだけど。
「僕は決めた。大杉くんの目標は、球速をプラス3キロにすること」
簡単そうに言ってくれるな。
どれだけ難しい事を言っているのか分かっているのか。
いや、分かっているからこそ言っているのだろうな。
よりにもよって、球速が上がらなくなって来たこのタイミングでその目標を課せられるとは。
達成出来るかどうかはギリギリだな。
「じゃあ、竜田は連続50回ヒットで」
「うわぁー、それも大変そうだね。1度でもミスしたら当然やり直しでしょ?」
「まぁ、そういうことだな」
お互いに丁度良いくらいの提案が出来たのではないだろうか。
この目標を達成するだけで満足せず、有意義な時間になるように頑張りたい。
「さて、決まった者からグラウンドで練習して良いぞ」
俺はその言葉を聞いて真っ先に動き出した。
少しでも時間を無駄にする訳にはいかない。
今ある時間を大切に使わなければ。
グラウンドに着いた俺は練習の準備をさっさと済ませる。
そして、我先に練習を始めた。
まずは球速を上がる事を最優先に考えよう。
それを達成してから他の事に挑戦する。
まず思い付くのはゲーム内で出ていた球速の経験値を増やす練習だ。
効果があるかは分からないけれど、恐らく1番効率が良い気がする。
「おーい、大杉!そっちはどうだった?」
練習を始める直前に御手洗が声を掛けて来た。
「球速3キロ上げろって」
「うへぇー、難しい注文だな。でも、大杉なら出来そうだ」
「まぁ、出来る限りのことはやるよ」
その後、御手洗の状況も軽く聞かされる。
もし、手伝える事があれば、喜んで手伝ってあげようと思う。
「それにしてもこの合宿やっぱり雰囲気がいつもとは違うよな」
「最後の練習試合が控えているからね。ここでより強くなっておかないといけないんだよ」
「そうだよな。俺も他の人に負けないくらい頑張らないと」
「気合い入れ過ぎて怪我だけはしないように気を付けろよ」
「お互い様だろ」
御手洗の言う通りだ。
思っている以上に俺も張り切っている。
強化合宿でのイベントは効果が大きい。
だから、1つも手を抜く事は出来ない。
自主練に入ってから1時間が経過して来た頃か。
そろそろあれが始まるかもな。
「全員集合!」
万常先輩から集合が掛けられる。
先輩達はニヤニヤしているが、1年生は全く状況を把握していない様だ。
俺は何が始まるか知っているけど、想像しただけでも恐ろしい。
「何々?何が始まるんだ?」
「静かにしないと怒られるって」
「でも、御手洗の気持ちも分かる。これは事前には知らされていないことだ」
「まぁ、待ってなよ。もう少ししたら分かる」
ガヤガヤとして空気が静寂に変わるのを待ってから万常先輩が語り出した。
「今から行う事は監督が決めた内容ではない。だから、強制でもない。リタイアをしても良い、そもそも参加すらしなくても良い。だけど、今まで環成東で勝ち取った者は例外なく逃げた者はいない」
「いきなり何の話ですか?」
「良い質問だ。それは今から始まる環成東の強化合宿名物・30キロランニングについての話だ」
その瞬間の1年の大半が絶望の顔を見せた。
ただ数人だけはやる気に満ち溢れた顔をしている。
それもそのはずだ。
レギュラーになった者はこれを乗り切っている。
逆を言えば、30キロランニングを完走せずにその看板を背負い続けられるのかということだ。
「ここのグラウンドを30キロ分周回してもらう。休憩したいならしても良い。ただ、制限時間は3時間だ。そこまでに30キロ達成するように。ルールなんてのはなく、ただ走るだけだから早速始めていくか」
「その前に聞くことがあるだろ」
「あぁ、そうだった。まずは最初にこのランニングに参加しない者はいるか?」
誰も手を挙げなかった。
というよりは挙げれなかった。
参加して駄目だったというなら分かるけど、参加もせずにいるのは周りからの視線が痛い。
しかし、この後の結果は目に見えているけどな。
誰か1人でも脱落者が出れば、そこから自分との戦いに負けた者が芋蔓方式で脱落していく。
「それじゃあ、始まるぞー」
先輩達が一斉に走り出した。
まずは横一列。
誰も飛び出す様子はない。
しかし、これはまだ序盤だからだ。
徐々に差が付いてくる。
問題はそこからだ。
人は誰かと比べてしまう癖がある。
トップ集団と大きく距離を離されてしまった時、果たして彼等は正気を保っていられるだろうか。
御手洗は早くもペースを崩していた。
先頭に遅れを取るわけには行かないという思いが強くなり過ぎている。
このまま行けば怪我にも繋がってしまうので、出来れば本人のペースを保って欲しいところ。
1週目が終わったがまだリタイアは出ていない。
みんな、まだまだ余裕がありそうだ。
だけど、これをあと何周か続ければ心が折れる奴等も出てくるはず。
そうなった時にどれだけ自分自身と戦えるかが勝負の分かれ目となる。
こうして、強化合宿は地獄から始まった。
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