第094話 名も無き天才
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俺と御手洗は、兼望さんからのメッセージを見て急いで飛んで来た。
今日は草野球の試合とは分かっていたから行くつもりではあったけど、至急来てくれとメッセージに書いてあったら何事かと思うだろ。
「おい、大杉!詳しい内容聞いたか?」
「いや、俺も詳しい話は聞いてないけどあの焦り方は只事じゃないぞ」
「やっぱりそうだよな」
いつも使ってる集合場所に着くと2人で状況を確認する。
しかし、お互いに殆ど知らないらしい。
しばらく考察をしていると聞き慣れた声が。
「おーい!やっと来たか!あれ見てくれよ」
走ってこちらへ駆け寄って来る兼望さん。
慌てた様子でグラウンドを指差していた。
俺達より先にグラウンドに入って練習をしていた相手のチーム。
ここまでは何も問題はない。
しかし、兼望さんが焦っているのは1人の選手のせいだ。
軽くバッティング練習をしている1人の少年がいた。
彼は全ての球を軽々とフェンス奥まで運んで行く。
練習だから投げる側が手を抜いているだけだろうと思うかも知れないが、投手は本気を出している様に見える。
これは焦る気持ちも分かるな。
俺も良く目を凝らしてみるが彼は見たことも無かった。
だけど、驚くことではない。
最近ではそれも当たり前になって来た。
「あれ、堀枝とどっちが強いかな」
「試合してみないと分からないけど、負けてないだろうな」
「ただでさえ堀枝が異常なのに、それと同等とか恐ろしい」
「で、今日の他のメンバーは?」
「あそこにまとまってるよ」
軽いキャッチボールはしているけど、チラチラと敵チームを見てテンションを落としている。
気持ちはわかるけど、少しくらいは勝つんだという気持ちを作ってくれないと勝てるものも勝てない。
「とにかく頑張ってくれよー、大杉くん、御手洗くん。ここで勝てるかは君達に掛かっている」
「兼望さんにお願いされたら敵わないですよ」
「いつもお世話になってるし、全力で頑張らせていただきます」
本当に勝つかどうかは置いておき、気持ちでは勝つつもりでいる。
1点も渡さない。
それくらいの実力はついて来たと思っている。
「くれぐれも油断はするなよ。最近、チームの調子が良くて参加者も増えて来たから、ここも流れに乗って勝ちたいんだから」
兼望の気持ちは痛い程分かる。
あれ相手に勝てればチームの名も上がる。
そうすれば、俺達がいなくてもチームとしては成り立つようになるだろう。
そこからコツコツと育成を始めればいずれは。
「おーい、試合始めるみたいだぞ」
チームの1人が俺達を呼びに来た。
どうやら試合が始まるみたいだ。
俺達2人はまだ来たばかりなので、急いで準備に入る。
そして、急かされる様に試合が始まった。
互いに挨拶をする。
先攻は相手からなので、俺はすぐにマウンドへと立った。
1人、2人、3人。
俺はテンポ良く3人を抑えた。
相手はこれに驚いた様子だった。
だけど、これはまだ序の口。
ここで驚いている様であれば先が思いやられる。
「絶好調だな大杉!変化球のキレも増したんじゃないか?」
「おぉ、そこに気付いた?最近力入れてるからねー。もっと見ておいてよ、ここから」
こちらの攻撃は御手洗から始まる。
1球目、ストレートを空振り。
ストライクに来た球を積極的に振る姿勢は評価したいところ。
相手の投手も少し怖気付いていた。
2球目はかなり外したストレート。
これは全く反応しない。
あくまでもストライクゾーン以外は反応しない姿勢を見せている。
3球目で御手洗が決めに来た。
芯で捉えたスライダーは外野後方まで球を運ぶ。
結果は2ベースヒット。
かなりの衝撃を与えられたのではないだろうか。
しかし、その後は3者凡退。
点こそ取れなかったが御手洗にとっては好調なスタートを切れた。
次はこちらの守備だ。
相手は話題に上がっている男。
まぁ、あれだけ打てれば4番になるのも頷ける。
だけど、簡単には打たせない。
俺だってプライドがあるから。
1球目、ツーシーム。
ストライクゾーンには明らかに入っているのに、狙わなかったのは理由があるのか。
それとも様子見か。
「欠伸が出るぜ。このレベルなら仕事行った方がマシだったな」
何かを呟いている。
ここからでは聞こえないけど、表情を見るに気分が良くなるような事は言っていなさそうだ。
2球目、内角ギリギリに沿って落ちるフォーク。
この瞬間、俺は目を丸くする事となった。
軽いスイングで球は外野まで運ばれた。
御手洗と同じツーベースヒット。
まさか、打ち返されるとは。
油断していた訳ではないが、より一層引き締めないといけないな。
その後の打者を綺麗に抑えて、0対0のまま1回が終わった。
相手は筋力も器用もレベルが高いぞ。
どうして、このレベルの選手が無名なんだ。
ゲームストーリーで取り上げられてないとおかしいだろ。
まさか、3人目の転生者か。
そうだとすると話はややこしくなってくるな。
その後の試合は俺と御手洗、そしてあの男が中心に攻防戦を繰り広げられた。
最終的には俺達が1点差を守り抜き勝利となる。
「やったぜー!勝ちだ、勝ち!よくやったな2人とも!」
「なんとか勝ちましたけど」
俺の方を心配そうに見る御手洗。
どうやら俺の心中を察してくれたみたいだ。
チームとしては勝てたけれど、アイツには全部ヒットを打たれた。
なんだあのセンスの塊は。
どこのスカウトマンも放ってはおかないはずなのに、どうして無名なんだ。
俺はいつものお金は受け取らず、急いで敵チームの奴を探した。
話をしたい。
どこの誰なのかを知りたい。
「ちょっと良いですか?」
「なんだ?あぁ、さっきの投手か」
「名前はなんて言うんですか?」
「言わねーよ。いきなり怖い奴だな」
確かにいきなり初対面で情報を聞かれたら怖いか。
でも、この逸材が気になるのは当たり前の話。
「じゃあ、見た目的に高校生ですよね?せめて、どこの高校かだけでも」
「俺に高校の話はするんじゃねーよ。この場で殴られたくなければな」
「あっ、す、すみません」
「千草仁、俺の名前だ」
名前だけを言い残しその場を立ち去る千草。
余程、高校の話はされたく無かったのだろう。
悪いことをしてしまったのかと思い反省していると、千草と同じチームメイトが話し掛けてきた。
「もしかして、千草の友達かい?」
「え?いや、違いますけど」
「なんだそうか。アイツ、家が貧しくて高校行けず働いてんだよ。だから、友達だったら仲良くしてやって欲しいと思ったんだけど、違うなら仕方ないか」
「待ってください。あれだけ野球が上手いなら学費免除で学校に通えたはずじゃ」
「それもまた悲しい話だよな。アイツが野球始めたのはつい最近なんだよ。仕事先の人に誘われたらしい」
つい最近であれなのかよ。
彼の存在が気になる。
転生者の可能性は少なくなって来た。
そうだとすると誰も知らない天才を見つけてしまったのかも知れない。
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