第093話 富川VS小城
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「みつけたー!」
富川芽衣子は俺を見るなり追いかけて来る。
なんでそんな事をしてくるのかは不明だが、毎回鬼ごっこの様になるのは勘弁して欲しい。
ただ、黙って捕まる訳にもいかず、俺はその場から逃げ出した。
あれに捕まったら何故か知らないけど、解放されるまで長くなる。
「あっ!二郎じゃん!どうしたのそんなに慌てて?」
そんな俺の前に現れたのは莉里だった。
男として非常に情けないが助けて欲しい。
言葉は発さずに指で富川先輩の方を指す。
「え?この状況何?どうなっての?」
「あれれ?君、彼女いたの?」
「えへへ、彼女?彼女に見えますか?えへへ!って、そうじゃなーい!なんで二郎を追いかけ回してるんですかって話!」
「だってさ、可愛くない?顔とか行動とか全部」
「なんか理由が曖昧過ぎるんだけど」
「諦めろ。あの人と会話するのは不可能に近いからな」
両者バチバチに見つめ合う時間が生まれる。
この間にこっそりと逃げ出す事も出来るのだが、流石に巻き込んでしまった莉里に悪いのでやめておく。
しかし、こうなるとどうやって解決すれば良いのか。
「彼女さんなの?そうじゃない?」
「そんなの聞いてどうするんですか?」
「いやー、それによっては話が全然変わってくるよねー。もしも、彼女じゃないならめーーちゃ可愛がりたいよね」
なんだその野望は。
犬に似ているという理由だけでここまで執着してくるのは普通に怖いんだけど。
まだ好きって理由の方が納得出来る。
いや、それがあり得ないのは分かってるけどね。
「"まだ"彼女じゃないです!」
「その言い方だともう付き合う寸前ってこと?」
「それはどう解釈してもらっても構わないですよ。でも、ほら!」
腕を絡めて抱きついて来る莉里。
これはアピールしているのか。
目の前の富川先輩を敵とみなしているらしい。
でも、ここで空気を読んで引き下がる様な相手ではなかった。
「えぇー、それくらいなら私だってほらー」
空いていた左の腕をとって抱き付く富川先輩。
何がとは言わないけど当たっているので速やかに離れていただきたい。
ここは学校の中だ。
全く生徒がいない訳ではない。
通り過ぎて行く生徒達から白い目で見られてしまう。
前に生徒会長から怒られたばかりだというのに、こんな場面を目撃されたら。
考えただけでも恐ろしい。
「ちょっとちょっと!何やってるんですか!」
「そんなに怒る事じゃなくない?そうだ、嫌かどうか本人に聞いてみる?」
「そ、それは狡いですよ。嫌って言う訳ないんですから」
おい、俺をなんだと思ってる。
ちゃんと嫌な時は嫌と言える男だぞ。
え?今回は言わないのかって?
言わないという事はどういう事か察してくれ。
「こうなったら勝負しましょう」
「勝負?なんで?」
「アタシが勝ったら先輩に二郎を弄ぶのはやめてもらいます」
「私が勝ったら?」
「そのまま続けてもらって構わないです」
「それってーなんか私だけ不利な気もするからー、条件追加で」
「うっ、なんですか」
「二郎くんは私が可愛いがってる時抵抗するの禁止で」
「アタシが勝つんでそれでも良いですよ」
勝手に了承してしまった莉里。
だけど、これで執拗に追い掛けられる心配がないのならそれで良い。
「で?勝負って何やるの?自分の得意分野とか?」
勝負の内容が気になる。
あくまでも公平に決めれるよう勝負でないとお互いに納得出来ないだろう。
「1週間後、お弁当対決で!」
「お弁当対決?私、結構料理得意だよー?」
「アタシだって得意だし、それに愛があれば関係ないの」
「勝敗は勿論二郎くんが決めてくれるんだよねー?」
「えぇーー、まぁ、そうですよねー」
自分で招いた事だ。
最後は自分で決めないといけない。
どちらの弁当も美味しいだろうけど、敢えて言うなら莉里の弁当は少し不安だ。
味ではなく、肉オンリーになってしまうのではないかという不安。
しかし、嬉しい事もある。
それはこの場は解散になった事だ。
問題の先延ばしをしただけにも思えるが、今はそれで良い。
未来の俺に苦労してもらうことにしよう。
とにかく解散になった俺は急いで教室へ逃げ込んだ。
教室へ向かう途中も面倒事が起こるのではないかと不安だったが、何とか切り抜けた。
「おいおい、どうしたんだよそんなに焦って」
「こっちにも色々あるんだよ」
心配して話し掛けて来た御手洗。
そんな御手洗にも構っている余裕はない。
「な、なんか詮索するのはやめておくわ」
「そうしてくれ」
「それよりさ、ちょっと今時間良いか?今週の兼望さんとの試合の話なんだけど」
今週も恐らくやっているとは思うけど、何か気になることでもあるのか?
それとも別の話だろうか。
もう少し御手洗の話に耳を傾けた。
「俺に課題を与えて欲しい」
「課題?どういうこと?」
「今の俺は勿論練習や経験を積む事が大事だ。だけど、それだけでは強くなれない。何か1つで良いから確実に出来る事を増やしたいんだ」
分かりやすい話ではある。
だけど、俺がここで目標を作る事が彼自身の思考する機会を奪ってしまうのではないかと考えた。
御手洗自身に選んだ道を進んで欲しい。
それを俺は全力でバックアップする。
そして辿り着く結果を知りたいのだ。
「守備ならエラーしないとか、攻撃なら1安打は絶対に出すとか」
当たり障りのない事を言ってみる。
すると顔をしかめる御手洗。
恐らく彼自身はこの目標で納得していない。
もっと厳しい目標を設定したいのだろう。
「まずはコツコツと目標を設定しろってことか?なるほど、俺は高い目標を設定し過ぎて色々と見失っていたのか?1安打は確実に打てるようになった方が良いってことだよな」
なんか俺の思っていた考えとは全く違うけれど、本人がそう思ったのならそれで良い。
考える事が重要だ。
「最近、俺調子良くなって来たんだよな」
「自分の努力が実ったってことじゃないか?」
「いやいや、何言ってんだよ。大杉のおかげだろ」
「俺何もしてないけど?」
「兼望さんの試合に出れているのはお前が紹介してくれたからだろ」
「あれ以外の努力は全部御手洗がして来たはずだ」
「まぁ、感謝してるってのは覚えていて欲しいんだよ」
こんな面と向かって感謝を伝えられても困る。
俺だって御手洗を利用しているに過ぎない。
どんな動きを見せてくれるのか気になっただけ。
本当にただそれだけ。
決して1人だけレギュラーから外されたクラスメイトのためにとは思っていない。
・・・訂正、少しは思っているかも。
その後は最近の自主練などのアドバイスを求められて俺なりに答えた。
だけど、ゲームと本当の練習は全く異なる。
ただ調べただけの知識が通用すると良いんだけど。
そうして昼休みが終わっていく。
チャイムが鳴り終えたと同時に、図書室から借りたであろう大量の料理本を持った莉里が入って来る。
そこまでしてくれる莉里に心の中で感謝した。
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