第092話 雨の中で怯える
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「雨、めっちゃ降ってきたな」
「この中に雨男、もしくは雨女がいるな」
部活が終わった。
だけど、この場にいる誰もが帰ろうとはしない。
理由は単純。
外では雨が降っているから。
まさか雨が降るとは思ってもいなかったので、俺は焦った。
でも、きっと通り雨だろう。
そう思って30分前からここにいるが、全く止む気配がない。
「あっ、俺折りたたみ傘あった」
御手洗が鞄の中から折りたたみの傘を見つけた。
本人が知らないという事は親が入れていたのだろう。
しかし、御手洗も迂闊だったな。
この状況でそんな事を言えばどうなるか想像するに容易い。
「おい!傘だ!傘があったぞ!」
「おいおい!ふざけんな!これ俺の折りたたみ傘だっての」
「俺と相合傘しようぜ」
「折りたたみ傘じゃ、ずぶ濡れだろ!」
人の傘だというのに醜い傘の奪い合い。
これにはマネージャーが呆れている。
「本当、子供みたい」
「ちょっと怖いですね」
「あ、あの!隼人くん、私傘持ってるから一緒に帰らない?」
男の醜い争いを他所に始まる初々しい恋。
西谷と駒場の関係も順当に発展しているようだ。
いつもなら邪魔しているアイツらもこの甘々な空気に耐えられずに黙って2人が帰るのを見届けるしかなかった。
さっと傘を持ち、西谷が濡れない様に肩を抱き寄せる駒場。
所作がスマート過ぎて今後の参考にしたいくらいだ。
「あれやってよ、二郎」
「俺、傘持ってないし、身長的に無理だな」
「私もやってもらいたいです」
「だよねー!3人で傘パクって帰る?」
「ダメですよ、そんなことしたら」
「冗談、冗談」
それにしてもまだ雨が続いている。
このまま待っていても晴れることはないのではないか。
そんな気がして来た。
だけど、雨が降っている中で傘を持たずに外を歩くの躊躇われる。
この間風邪を引いたばかりだしな。
「あ、雨止んで来た」
その場にいた誰かがそう言った。
それを聞いたみんなはこのタイミングを逃す訳にはいかないと一斉に外へと飛び出す。
ちなみに俺もその内の1人だ。
迎えを頼めば良かったがわざわざ呼び出すのも悪いし、走れば遠い距離でもない。
次、雨が降り出す前に帰り着けば。
なんて、考えていた時もありました。
帰宅途中でまた雨が降り出す。
間一髪で橋下に逃げ込む事は出来たけど、ここからまた雨が止むのを待ったら相当時間が掛かりそうだな。
こうなったらいっそのこと走って帰るか。
後、家までは半分くらいか。
判断に迷う距離だな。
「ニャーー」
どこからか可愛い猫の鳴き声が聞こえて来た。
咄嗟に辺りを見渡した。
誰も気付かない様な端の方にダンボールが1つ置いてある。
中を覗いて見ると案の定1匹の猫がいた。
体は痩せ細っていて、動けないのか横たわっている。
俺はこの瞬間、雨に濡れる事などどうでも良くなってコンビニへと駆け出した。
数分後、戻ってくるとやはり猫はその場にうずくまっていた。
とりあえず水を与えてから、猫用の餌をそっと近くに置く。
ペロペロと食べ始めた姿を見て、ようやく俺は安心した。
だけど、体力はすぐに回復する訳ではない。
「お前、捨てられたのか?」
「ニャー」
「猫の言葉は分からないけど、生きてて良かったな」
ゆっくり撫でる。
この猫は生きていた。
その事実だけを噛み締めながら。
「それにしても酷い奴もいたもんだよな。多分、勝手な事情で生き物を捨てるんだから」
「ニャー」
「なんだ?前の主人を庇ってんのか?そんな奴忘れろ。輪をかけてろくでもない奴だから」
「ニャー・・・」
コイツを捨てた飼い主を悪く言うと少し落ち込んでいた。
もしかすると人語が分かる天才猫なのかも知れない。
黒と白と茶色の三毛猫。
可愛い顔をしていて持ち帰りたくなるが、親には何と言って説明すれば良いのか。
いきなり猫持って帰って来たら普通は拒否されるよな。
猫を飼うにはそれなりの覚悟と知識が必要だ。
これからも部活に集中したい俺が簡単に飼いたいとは言えない。
「あれ?もう食べ終わったのか?おかわりもあるぞ?」
「ニャー!」
可愛い鳴き声と共に俺の手に頬擦りをする。
この猫おねだりが上手いな。
一気に食べさせるのもどうかと思ったが、その可愛さに負けてしまいもう1個猫の餌が入った缶詰を置く。
どれくらい食べるか分からないから多めに買っておいて正解だった。
加えて水のおかわりもちゃんと置いておく。
そうしている内に気付けば雨が止んでいた。
この様子はこれ以上雨が降る事も無さそうだ。
この猫は心配だけど、ここでお別れ。
ここまで助けておいて無責任だと思うけど、俺にしてあげられる事はもうない。
「元気でいたらきっと誰かが助けてくれる。頑張れよ」
「・・・ニャー」
そんな目で見られても困る。
俺だって飼ってあげたいけど、毎日お世話をするのは不可能だ。
俺は3分間、考えた後に歩き出した。
後悔はあるもののどうしようもないのだから。
晴れて良かった。
傘を買うか迷ったけど、買わなくて正解だったな。
「で、いつまでついてくるつもりだよ」
フラフラとした足取りで後ろを付いてくる三毛猫。
やめてくれー!
そんなことされたら罪悪感で押し潰されそうだ。
こうなったら仕方ない。
一度立ち止まり、三毛猫が追いつくのを待った。
「お前、このまま俺についてくるつもりか?」
「ニャー」
「そうかそうか、仕方ないな」
タオルを取り出して優しく包み込んであげる。
そして、そのまま家まで運んだ。
怒られてしまったら、その時にまた考えれば良い。
きっと俺の家がダメでも探し回れば飼い主が見つかるはずだ。
少し歩いただけでも疲れたのか、抱き抱えた瞬間に眠ってしまった。
本当に可愛い顔をしているからずるいよな。
寝顔を堪能していると気付けば家に着いていた。
鍵は持っているけど、恐る恐るインターホンを押す。
「あら?どうしたの二郎ちゃん、と猫?」
「あのー、この子が橋の下で捨てられているのを見つけて・・・」
歯切れの悪い返答。
飼いたいとまでは自分の口から言えなかった。
「可愛い!!!」
「えっ?」
「めっちゃ可愛いわね、この子。名前は?捨てられてた子?なら、家で飼っても問題ないわね!まずは動物病院で検査して、ペットショップ行って必要な物揃えて、飼い方もしっかり調べて」
俺よりも乗り気な母さん。
それを見て心を撫で下ろした。
あれほど心配して損したと思ったくらいだ。
母さんも俺と姉さんが学校へ、父さんが仕事へ行っている間は家で1人なので寂しさがあったのかも知れない。
どちらにとってもWin-Winだったのだろう。
「良かったな。お前も今日から家の子だってさ」
「ニャー!ニャニャー!」
テンションが高くなる三毛猫を見て、俺も心が癒される。
今後はこの子に可哀想な事が起こらないよう俺も頑張らないとな。
「そう言えば名前か。雨の日に出会ったからレインだ」
「ニャッ!」
短い返事を返すレイン。
こうして我が家には新たな家族が加わったのだった。
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