第091話 目標を高らかに
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昼休みは散々な目にあってしまった。
これ以上酷い事は起こらないで欲しいと願う。
授業と授業の合間の休み時間。
俺は何もする事が無くて、変化球の事について何となく調べていた。
藤森先輩からのアドバイスはちゃんと実行しないといけないからな。
「あ、あの、昨日は大丈夫でしたか?二郎くん」
話し掛けてくれたのは舞葉だった。
メッセージでもあれ程心配してくれたのに、会ってからも心配してくれるなんて良い奴だ。
「全然大丈夫だったよ。何で風邪引いたのか分からないけど、重い風邪じゃなくて良かった。1日練習休んだだけで差をつけられちゃうからね」
「ふふっ、風邪引いたのに野球の心配ですか?やっぱり野球大好きなんですね」
「面白いからね、野球。俺の予想を遥かに上回るワクワクを与えてくれるし」
舞葉には言えないけど、育成要素があるのも個人的にはハマる原因の1つだ。
目に見えるステータスがどんどん増えていくのは快感を覚える。
今のステータスは個人的な評価としては中の中。
まぁ、普通に戦えるレベルだ。
だけど、誤魔化しながらここまで投げて失点を抑えている。
本来であるなら早く上に行きたい所。
「楽しそうに話してくれるので私まで楽しくなって来ました。野球、一緒に頑張りましょうね!」
「もちろん」
そんな話をしている中でふと疑問に思った事がある。
友好のルーペというアイテムをこの間買った。
あれは普通味方の選手に使うアイテムだ。
しかし、ここにいる舞葉に使うと何が見れるのだろうか。
効果はないとか?
それとも何かしらのステータスは表示されるのか?
既に好奇心が湧いてしまった俺はその衝動を止める事が出来なかった。
鞄からもしもの時の為に持ってきておいた友好のルーペを取り出す。
「どうしたの二郎くん?それ何?」
「話は変わるんだけどさ、俺最近占いにハマっててさ。簡単な奴なら出来るんだけど、試してみて良いかな?」
「私も気になるから良いよ」
なんと優しい人だ。
騙してしまったのが、心苦しい。
筋力:5
器用:10
守備:3
走力:2
捕球:4
スキル:???、魅了 B、マネージング D
何と意外にも普通にステータスが見れてしまった。
どんな人間でも、その身体能力に応じて数値化されるらしい。
これは良い事を知れた。
もっと色んなチームメイトなどに試してみたいが今はやめておこう。
「どうでしたか?」
「えっ、あぁ、かなり運気が良いみたいだよ。何かやりたい事があるなら積極的に行った方が良いみたい」
適当な事ばかりを言ってしまった。
誰にでも当て嵌めて言える様な事だ。
流石にこれは適当な事を言ったとバレてしまうか?
「本当ですか!?やっぱり積極的に行くのが大事なんですね。となると、・・・あれとかもそうして」
どうやら素直に信じてくれたみたいだ。
この場を乗り切った安心感はあったが、それと同時に嘘をついたという罪悪感も多少はあった。
いや、俺という存在自体も元々は嘘で塗り固められた様なものか。
「何々?占い?私にもやってよ!」
「僕も気になるなー。朝の占いとかついつい見ちゃうし」
「おいおい、あれ信じるタイプなのか竜田。ラッキーアイテムが胡散臭いのによく信じられるな」
他の奴らまで集まり出して来た。
気を抜くといつも賑やかになってしまう。
嬉しい話ではあるが元気を吸い取られてしまいそうだ。
特に病み上がりの今日は。
放課後、練習には参加するつもりだけど、軽い運動から始めたい。
治りかけは体力が大事だ。
いきなりハードな練習は自分の為にならないだろう。
「大杉、駒場。部室へ来てくれ。話がある」
「えっ?あ、はい!」
「分かりました」
返事はしたけど、心当たりは少ない。
2人で顔を見合わせて何をしたのか探り合う。
だけど、どちらからも情報は出ない。
「とにかく行くか。待たせたら監督に悪いし」
「そ、そうだな」
普段は着替えに使われている部室をノックする。
すると監督から入室を促される。
この瞬間ばかりは緊張してしまう。
「よし、2人ともちゃんと来たな。って、何緊張してんだよ。別に怒らないって」
「いやー、監督からわざわざ呼び出されたら勘繰りますよ」
「そうですよ」
「面談みたいなもんだよ。同じポジションの生徒をまとめて」
「だとすると、獅子頭先輩と糸式先輩は?」
「2人も後から呼ぶから心配するな」
なんで投手陣が分けられたのかは不明だ。
だけど、監督が問題ないと言うならそれまで。
それよりも同じポジション毎に面談とは何事だ?
聞かれる内容が気になる。
「お前達2人に聞く。今の目標はなんだ?」
今の目標か。
これは深い質問なのか、それとも最初の軽い質問なのか。
それによって回答は大きく異なる。
「俺は目標とか色々ありますけど、単純明快に誰にも負けない。ただそれだけです」
分かりやすい。
分かりやすいけど、カッコいい。
これが主人公の生き方か。
変に格好付けてるようにも見えない。
本音だからこそ心に響く。
「誰にも負けたくないか。負けたらどうする。この先は気持ちだけでどうにか出来る程、簡単な道のりじゃないぞ」
「負ける想像をするくらいなら、俺は勝つ未来へ向けて歩き出します」
「なるほどな。大杉、お前は」
俺の目標か。
変化球を磨いて藤森先輩を超えること?違うな。
甲子園のマウンドに上がる事?これも目標だけど、しっくり来ない。
やっぱり、俺はこの世界に来た時から決めている事を言いたい。
「俺はコイツに勝ちたいです」
横を指す。
駒場隼人という名の主人公だ。
「駒場は大杉のチームメイトだろ?どうして勝ちたいと思った?」
「コイツに憧れの感情を抱いてた時期がありました」
女子にはモテモテで野球の才能も溢れている。
そして、何よりあの時の俺には無かった輝かしさを持っていた。
でも、今の俺は憧れという感情を捨てた。
隣に立ってようやく気付いた事がある。
俺も大概負けず嫌いのようだ。
「世界でたった1人、こいつに負けなければ俺は最強でいられますよ」
「そうか・・・、分かった。次は糸式と獅子頭を呼んでこい」
「まさかみんなに目標を聞いていくつもりですか?」
「そいつが掲げる目標には大なり小なり思いがある。スポーツってのは、元々の身体能力も大事だけど最後の最後で火を吹くのはそいつの心なんだよ。だから、重要な要素の1つだと思っている」
「そうですか」
ほんの少しだけ監督の考えを理解した。
本当に少しだけだけど。
「監督、波王山戦で次の練習試合の先発を約束してもらいましたよね」
「あぁ、そうだったな」
「あの話、やっぱり無かった事にしてもらって良いですか?」
「良いのか?折角のチャンスだぞ?」
「自分の力で先発は掴み取るんで大丈夫です」
監督もそれに頷いた。
ようやく部室から解放される。
今から先輩2人を呼びに行かないとな。
しかし、中々動かない駒場。
どうしたのだろうか。
「大杉、お前は知らないと思うけど、俺は強くなったんだ。前よりもずっと。だから、簡単には負けねーぞ」
「バーカ、それは俺も同じだっての」
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