第090話 先輩の想いを背負って
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「おはよー」
「おいおい!大丈夫だったか?」
朝一、心配してくれたのは御手洗だった。
「ただの風邪だから心配いらないよ」
「体調管理には気を付けた方が良い。俺が食べている食事のリストを送ろうか?栄養がバランス良く摂れるぞ」
「もらうだけもらっておこうかな」
橋渡も気を遣って食事のリストを送ってくれるそうだ。
ここまでみんな心配してくれると涙が出てきそうになる。
「そうだ。大杉くん体調不良だった昨日、大ニュースがあったんだよ」
「あ、俺も見たかも。村本忠嗣が引退する話だよね?」
「そうそう!これが本当だとするならかなりショックだよね。彼に憧れて野球始めたって人も多いから」
みんなショックを受けているみたいだった。
特に竜田はファンだったらしく、人一倍落ち込んでいる。
「ねぇねぇ、その村本?って人、前にも話題に出てたけどそんなにすごいの?」
「私も知りたいです。ルールは覚えて来たけど、現役選手とかには疎くて」
村本の説明が竜田から行われる。
途中熱が入り過ぎて別の選手の説明も行われ始めた。
「すごいのだけは伝わって来た」
「それだけ伝われば十分だね」
「そろそろ授業始まるし、席戻ろうぜ」
御手洗が空気を読んで着席を促したので、ここで話は終わった。
あれ以上続けていたらどうなっていたか。
考えるだけでも恐ろしい。
あそこまで熱狂的はファンだとは知らなかった。
今度からメジャーの話をする時は気を付けないといけないな。
やっと昼休みになった。
1日授業を受けなかっただけでここまで長く感じるとは。
お腹も空いてきたので弁当を食べようと思うと、昼ご飯用の水筒を忘れた事に気付く。
一応、部活の時の飲み物はあるけど、それを飲むと後で地獄をみる。
お金は減るけど仕方がないので自販機で飲み物を買う事に。
自販機に行くと1人の男が立っていた。
それは俺も見たことのある人だ。
「こんにちは、時透先輩」
「あぁ、大杉か」
「昨日は練習参加出来なくてすみません」
「体調不良だったんだろ?今度からは体調管理に気を付けろよ。お前は環成東にとって重要な存在なんだからな」
あまり話した事は無かったのにも関わらず、この優しい言葉に感動した。
「お前、今から飲み物買うのか?」
「えぇ、そのつもりですけど」
「なら、奢ってやるよ」
「良いんですか!?後から請求されるとかないですよね?」
「そんな事をする先輩だと認識されているのか俺は」
思わず大きな声を出してしまった。
申し訳ない気持ちもあったが、それよりも時透先輩の奢りという事実が嬉しいという気持ちが勝った。
どれにしようかと10秒に満たない時間迷った後、シンプルにお茶を選んだ。
高過ぎないし、ご飯とも相性が良いからな。
「普通の選択をするんだな」
「俺のことなんだと思ってます?ジュース系とかは選びませんよ?」
「まぁ、それもそうか。水かお茶を選ぶ奴だもんな」
それはそれで個性が無い奴みたいだ。
事実だから良いんだけど。
そんな事よりどうしていきなり飲み物を奢ってくれたのだろうか。
昨日が体調不良だったからとか?
もっと他の理由があるにしても今日は運が良い。
昨日の体調不良をチャラにするかの様だ。
「それで話があるんだが良いか?」
「え?どんな話ですか?」
「最近、1・2年の活躍が凄くてな。1人1人に話を聞いていけば、数人の口から大杉の名前が挙げられた。しかも、レギュラーの奴らばかり」
おっと、雲行きが怪しくなって来た。
何を今から言われるのだろうか。
怒られる雰囲気では無いけれど、気まずいのは確かだ。
「頼りにされているってのは良い事だ。2年の2人には悪いが、俺はお前か駒場、そのどちらかがエースとして今年の甲子園へ連れて行ってくれると思っている。それくらいお前らには実力があるからな」
「そこまで断言するんですね。俺から見れば、糸式先輩や獅子頭先輩も強いと思いますけど」
「弱いとは言ってないだろ。この学校の野球部はレベルが高いからな。その中でもお前達2人に光輝くものを感じるんだ。でも、時々考えてしまうんだ。アイツが俺達と最後まで戦ってくれたらと」
ここで言うアイツというのが誰を指しているのか。
俺は言わなくても分かった。
元々、環成東のエースとして君臨していた男。
そして、俺が目指すべき男。
藤森白也だ。
3年生にとっては彼がいなくなった事が精神的に大きなダメージを与えたのかも知れない。
彼がいないといけない訳ではないけれど、いる世界線を心のどこかで追っている。
その気持ちは分かる。
俺も目の前で投げる藤森先輩の姿を見てみたかった。
だけど、無いものを強請るのは愚かだ。
今は俺が彼に代わって投げ続ける。
ただそれだけ。
「悪いな。俺の勝手な話に付き合わせてしまって。そのお茶に免じて許してくれ」
「許すも何もないですよ。時透先輩が満足するくらい俺が強くなりますから」
「大きな口叩く様になったな大杉!話は聞かせてもらいましたよ、時透先輩!酷いじゃないですか、大杉より俺強くなりますから!」
どこからともなく現れた糸式先輩。
この人はどこにでもいる気がするな。
「お前も中々元気な奴だな、糸式。この間の練習試合で落ち込んでいるかと思ったけど、その様子なら大丈夫そうだな」
「うっ、あれは確かに俺の力が及ばなかったですけど」
「気にすることはないだろ。勝っても負けても本人次第で得られる物はある」
「そうですよね。よし、次の試合こそは」
「あ、次の試合は恐らく駒場が先発かと」
この間、監督へと直談判してたしな。
それに監督も次に組まれる練習試合は起用すると約束したらしい。
そうなると先発適性のある駒場は中継ぎとして使われる可能性は低い。
残り何回練習試合が出来るか分からない今、次の試合の先発は貴重な経験になるだろう。
俺も先発としての登板を狙いたいが、今の所監督は俺を中継ぎ、抑えとしての起用として見ている。
だから、俺としては駒場と糸式先輩が羨ましい限りだ。
「その話、本当かよ」
「大杉、悪いが俺は先に行く。・・・後は頑張れ」
「ちょっと!時透先輩!俺を見捨てないで〜!」
「詳しく話聞かせて貰うから、絶対に逃げるなよ。てか、逃さないけどな」
首根っこを掴まれた俺はその場から逃げることも出来ず、ただただ糸式先輩に引きずられて連行されていく。
そもそもなんでこの人がいたんだよ。
タイミングが余りにも悪すぎる。
その後、詳しく話を聞かれたが大した情報も出せずに時間だけが過ぎた。
解放されたのは昼休みが終わる10分前。
急いで教室に帰って弁当を搔き込んだ。
周りからは白い目で見られるし、せっかく作って貰った弁当を味わって食べられなかった。
その日、初めて俺は絶対飲み物を忘れてはいけないという教訓を胸に刻んだ。
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