第086話 母性本能爆発
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「俺に何か用か?」
ようやく藤森先輩の教室へ辿り着くと、クラスメイトの人が藤森先輩を呼んでくれた。
この教室内へと入る勇気は無かったので、呼んでくれて助かる。
「少しご相談がありまして」
「野球の事なら良いぞ」
「当たり前じゃないですか」
「手短に頼む。俺の今、忙しくてな」
手短にと言われると困る。
だけど、さっさと本題に入ろう。
「出来れば直接ご指導いただきたいんですけど」
「悪いが今日もリハビリがある。部活には顔は出せない」
「では、質問する形で1つ。俺も藤森先輩の様な変化球中心の投手を目指しているんですけど、何から手を付ければ良いのか全く分からなくて」
「なるほどな。変化球中心で組み立てるなら簡単な話だ。1日中、変化球以外の事は考えるな」
「まさか先輩はそうやって」
「少し誇張した言い方ではあるけどな。まぁ、1日中ってのは無理があるが暇な時は考えるくらいにはした方が良い」
少し考えれば出てくる様な意見にも思えるが、実行するとなると意外に難しい。
まず、変化球についてどこまで詳しく調べれば良いのか。
どうすれば、改善されるのか。
そんな一切の情報が無い状態で模索しなければならない。
だけど、藤森先輩がそれで強くなった。
今はそれを信じてやるしかない。
「変化球はもちろん身体能力も関係するが、握りや力加減、リリースポイントとか。細かな知識が完成度を上げる」
「なるほど」
「後は、ストレートの質をきちんと磨く事だな。変化球が際立つのはストレートがあってこそだぞ」
その後も忙しいと言いながらも細かなアドバイスをしてくれる藤森先輩に感謝をしながら、3年教室を出た。
早速、今日の練習から反映させていけば、次に練習試合が決まった時にいつも以上の活躍が出来るかも知れない。
今度からは誰が先発で投げてもおかしくない状況。
常に登板の機会を狙っていきたい。
「みつけたー!」
俺に覆い被さる謎の物体。
というよりは人間だ。
誰だと思って、少し離して見てみると先程のおっとり先輩。
何でわざわざ俺を探していたんだ。
いきなりの奇襲に倒れ込んだ俺の頭を撫で続けるおっとり先輩。
意外に力が強くて振り解けないな。
「何やってんのよ、メイ。いきなり走り出したと思ったら」
「この子さっき見つけたのー。なんか可愛くない?」
「んー?普通?」
俺、顔をまじまじと見た後に、本人の目の前で普通って言いやがった。
ブスと言われるよりは良いけど遠慮とかないのか。
てか、それよりも離してくれ。
こんなにも人が行き交う廊下でこんな姿を晒すのは恥ずかしい。
「野球部の1年捕まえて何してんだー!富川!」
「あー、百地さーん!やっほー!」
ここで俺にとっては救世主となる可能性のある人物が登場する。
声が出ない訳ではないけれど、目で助けてと訴え掛かる。
なんて情けない光景だろうか。
だけど、そんな事考えている余裕はない。
「離してやりな、どこからどう見てもそいつ困ってんだろ」
「そうなのー?」
俺は何度も首を縦に振った。
するとようやく理解してくれたのか、手をパッと離してくれる。
「それならそうって早く言ってよー」
「言ったところでアンタ話聞かないでしょ」
「まーちゃん、ひどいよー」
とにかく解放されて良かった。
あとは立ち去れば完璧なのだが、この状況を百地先輩に投げて逃げる訳にもいかず仕方なく何が起こったのかを聞いてみることに。
「どうしていきなりそんな事をするんですか!びっくりしますよ!」
「んー?可愛いからー」
駄目だ。
理由が一言で片付けられてしまうと、こちらとしても良く分からない。
本人だけは理解しているけど、他人には伝わっていないやつだ。
「要するにアンタがメイの母性本能をドンピシャにくすぐってる訳。だから、家族とかペットに向ける愛情に近いものが湧いてくるんだってさ」
まーちゃんと呼ばれていた女子生徒の補足説明でようやく理解した。
理解はしたけど、納得はしていない。
「その要素ありますか?俺に」
「いやー、ウチには分かんないね。他の1年と変わらないけど」
「えぇー!絶対そんな事ないよー!だってだってー、家で買ってる猫にそっくりなんだよー。可愛いに決まってるよー。ほら、コレ」
携帯の画面を俺と百地先輩に見せる。
俺に似ている猫って何だよと思い画面を覗いてみると思っている以上に似ていた。
目元とかが特に。
「お前、猫だったのか大杉」
「そんな訳ないでしょ!」
「怒ってるのも可愛いー!」
百地先輩もボケ側になり始めたので、俺はこの場を立ち去った。
「あららー、行っちゃった。ざんねーん」
「あまり遊ぶなよ、アレでも野球部の大事な部員なんだ。それにアンタの良い噂はあんまり聞かないぜ?富川芽衣子」
「ちょっとそんな言い方ないでしょ」
富川の友達は前に出て庇う姿勢を見せる。
だけど、それを富川本人が止める。
「良いんだよ。私の噂は色々流れちゃってるからー」
「殆どデマじゃんか!」
「そうだけどね、中には本当の事もあるんだよー。例えば、私に人を駄目にする才能があるとか」
「散々な目に合ったな。あれもこれもあの白スーツのせいだ。まぁ、変化球強化は素直に有難いけど」
教室に戻るとようやく騒がしさから解放された。
このまま疲れたし、次の授業まで眠っていようか。
「あのさ、ちょっと良いか?」
誰かと思えば、珍しく真剣な顔で俺の席へと近付く御手洗。
「どうしたんだよ、そんな真剣なして」
「そりゃ、真剣にもなるっての。この間、波王山戦があっただろ?あの時、俺があの場に立てなかった事が悔しいんだよ」
「・・・」
安易に気持ちが分かるとは言えなかった。
俺はあのグラウンドに立って、御手洗はそうではない。
ここで俺が分かると言っても、彼にとっては慰めの1つにもならないのを知っている。
だから、無言で御手洗の話を聞くしかなかった。
「春甲や来年のスタメンになれるかだって分からない現状で、このまま何となくで日々を過ごすのは嫌なんだ」
強い気持ちが伝わって来る。
練習をサボっている訳ではないが、それだけでは一生追いつけない隔たりを生んでしまう。
「で?なんで俺の所へ?」
「竜田が困った時は大杉の所へって言うから」
竜田がここまで御手洗を運んで来たのか。
勿論、友達の強くなりたいという思いには賛同する。
だけど、俺にも限度という物がある。
強くするにしてもそれなりの難易度があったりがあるからな。
俺はその瞬間、悪い考えが浮かんでしまった。
友達を研究材料の1つとして見てしまうという最悪な考え。
でも、彼にとっても悪い話ではない。
言い方を変えれば好奇心だ。
俺の持っている全てを使って春甲までに、御手洗を仕上げる。
勿論、リスクもあるがその分興味深い結果は得られると思う。
まずはその初期段階を進める。
あくまでも彼の意思で。
「なら、試合出てみる?草野球のチームが人手不足で助っ人探してるんだよ」
「それ本当か!?よろしく頼むよ!」
悪いことはしない。
彼を強くするのには変わらないのだから。
そう何度も言い聞かせた。
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