第085話 運命のガチャガチャ
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「またお会いしましたね」
「お会いしましたねって、そっちが会いに来ているんだから当たり前では?」
「そうやって貴方は冷たい対応を」
相変わらず真っ白なスーツに身を包んだ男が目の前に立っていた。
学校にまで姿を現すのはやめて欲しい。
幸いにも周りには誰も人がいないので、変な目で見られる事はないけど。
「どうしてここに?用事があるのか?」
「もっと談笑を楽しみたいのですが、貴方はそうではないみたいだ。仕方ありませんね、早速ですが本題へ移りましょうか」
こんな得体の知れない奴と楽しく談笑するって方が無理がある。
敵なのか味方なのかはあやふやで、ぱっと現れては消えて行く。
出来れば関わりたくないことだけは分かる。
「まずは先日の試合お疲れ様でした。私も上の方で拝見させていただきましたよ」
「転生者と転生者の戦いだ。それを見逃すなんてことはまずないよな」
「そうなんですよ。気になって気になって。それで最初は勝った方にプレゼントをお渡しするつもりだったのですが、結果は引き分け。これには私も困りました」
「プレゼント?ちゃんとした物なのか?」
「ええ?運が絡みますけど喜ぶかと」
引き分けなら貰えないか。
少し気になるけれど、結果が結果なので仕方ない。
わざわざ姿を見せて来たのはそれを伝える為なのか?
そうだとすると意地の悪い奴だ。
「先程、雷郷様の所へも行って、そこでプレゼントをお渡ししました」
「引き分けなら渡さないんじゃないか?」
「いえいえ、今後もっと面白い展開を見るためにお二方にお渡しするようにとお達しが出ましたので」
この話を聞く限り、コイツの上にまだ何者かが存在しているのが分かる。
いや、それよりも重要なのは俺にも謎のプレゼントが配られるという点か。
一体なんなのか。
早く教えて欲しい。
「待ちきれないって顔をしていますね」
「わざわざ焦らすような話し方をされたから。気になるのも当然だろ」
「では、勿体振るのも可哀想ですし、早速お渡しいたします。両手を出してください」
言われた通り、手を前に出す。
それを見た白スーツが指を一度だけ鳴らした。
その瞬間、辺り一面を覆う光。
俺は耐えきれなくなって目を瞑る。
次に目を開けた時には、手の上に1枚だけ置かれたコインが目に入った。
これがプレゼントという奴なのだろう。
「使い方のご説明を致します。貴方はテキストメッセージが見えているかと思いますが、コインに触れて使用すると念じると確認画面が出て来ます。これを了承すると始まります」
「始まりますって。コインで想像出来るのは」
「実際にやってみる方が早いと思いますよ」
それもそうだ。
俺はコインを握りながら強く念じた。
【運命のコインを使用しますか? はい/いいえ】
俺は迷わずはいを選んだ。
すると、天から降り注ぐ1台のガチャガチャ。
他の誰かに見られているのではないかと不安になるが、今の所その様子はない。
握り込んでいたコインがガチャガチャに強く反応を示す。
ここまで来たら説明は要らない。
この中に入れろと言っているのだろう。
何が出るのか興味が沸く。
俺は好奇心でコインを入れた。
グラグラと激しく揺れ出すガチャガチャ。
あまりに激しい演出なので、心配になって来た。
10秒後には激しい揺れも収まり、カプセルが1つ出てくる。
少し不安もあったが、俺は手に取って開けてみることにした。
「これはどういう事だ?」
中には何も入っていない。
ただのイタズラだったのか。
それにしては手の込んだイタズラだな。
「うっ!」
一瞬、目眩と吐き気に襲われた。
何かが確実に起こっているのは分かる。
【変化球のレベルを全て1ずつ向上します】
【新球種: スライダー をレベル1で入手しました】
【スキル: 魔法使い C を入手しました】
【変化球の経験値効率をごく僅かに上昇させます】
一気に出てくるテキストメッセージ。
多少の痛みはあったが、得られた物は大きい。
「ほほぉ、変化セットですか。面白いですね」
白スーツの言うように変化球に関する事ばかり。
変化球のレベルが上がったのも嬉しいが、それよりも嬉しいのはスキルの方だ。
変化球の質を上げてくれるスキルで、変化球中心の俺にとっては必須級とも言えるスキルである。
漢方で入手出来ないかと企んでいたが、まさかここで手に入るとは。
「雷郷の方は何を手に入れたんですか?」
「良い質問ですね。勿論、同じ転生者としては気になりますよね」
「まぁ、そうだろ。また戦う可能性もあるんだから」
「しかしながら、お答えする事は出来ません。代わりに彼にも教えたりはしませんよ」
教えないのかよと思ったが当たり前か。
どちらも知らない方が面白い展開になるとでも思っているんだろ。
「今回はこの為だけに来たのではないんですよ。貴方に1つだけお伝えしておく事が」
「伝えておく事?」
「えぇ、私達の存在は何となく理解していますよね」
「本当に何となくだけど」
「それで上の方がお怒りでして」
お怒り?
別に怒られる様な事をした覚えはないし、そもそもその上の奴らってのが俺をこの世界に飛ばしたんだろ。
「もっと凄まじい成長を期待していたのですが、思いの外スローペースだと」
「馬鹿言うなよ。これでもかなりハイペースだっての。その上の奴らはダイヤモンドベースボールをプレイしたことあるのか?」
流石に頭に来た。
わざわざ部下から言わせるようなことか。
言いたいことがあるなら、直接来いよ。
「今回のプレゼントもそういう事か」
「おぉーー!ご明察です!もうお一方は全く分かっていなかったみたいですが、貴方は流石ですね」
雷郷は深い意味など考えず、貰ったものを素直に喜ぶだろうな。
「お前は神の遣いなのか?」
「そう思っていただいても差し支えないですよ」
「なら、その神って奴に言っておけ。ここからは見逃せない程に面白い展開になるってな」
「その言葉、一言一句違える事なくお伝えさせていただきます」
その場から姿を消した白スーツ。
神に宣言した以上は、俺もこれまで以上に頑張らなければならない。
それにしても変化球中心の強化か。
俺は運が良いのかもな。
丁度、彼がいる。
だから、少しは指導をしてもらえるだろう。
早速、本人にお願いする為に3年生の教室へ向かう。
普段は1年生が立ち寄る事もないので、色んな人から注目を浴びるのが辛い。
「さて、藤森先輩はどこのクラスだったかな」
「きみー、何年生なのー?」
ゆったりとした口調で話し掛けてくる恐らく3年の先輩。
見た目も落ち着いた雰囲気が出ていて、おっとりという言葉が似合う。
「藤森白也先輩を探してて」
「もしかしてー、きみ野球部ー?」
「あ、そうです」
「えぇーー、可愛いーー!」
何が可愛いのか分からないけど、このおっとり先輩は俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
すごい恥ずかしいので、とりあえずその場から逃げ出した。
「あ、メイー!いたいた!探したよー!って、どうしたの?」
「うーん?可愛い子見つけたのー」
「まーた、母性本能出てるよ。それでどれだけ悪い男に騙されて来た事か」
「大丈夫だよー。あの子は応援したいだけー」
俺はまだ背中へと送られていた視線に気付くことは無かった。
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