第081話 長い長い戦いの終わり
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雷郷が打席に立った。
このタイミングでコイツと戦うことになるとは。
最初の打席ではホームランを打っていたからな。
いつどこで点を取られてもおかしくはない。
最後の最後、同点のタイミングでのこの組み合わせは神様のイタズラか?
「ワクワクして来たぜ!俺はこれを待ってたからな!」
相手はテンションが高いみたいだ。
このまま興奮している内にどさくさに紛れて、押さえ込みたい所。
1球目、フォークから入る。
基本的には投球数の少ないフォークだが、きっと雷郷はメテオフォールを意識している。
だから、同じ下方向の変化で惑わす。
案の定、バットを振りに来た雷郷。
全くタイミングが合わずに空振りに。
カウントは1ストライクから始まった。
それがどれだけ俺の心に余裕を与えることになるか。
2球目は、少しストライクゾーンから外したストレート。
しかし、相手はお構いなしにバットを振る。
無理矢理打ちに行ったせいで球をファールゾーンへ。
つまり、相手はたった2球目で追い込まれた訳だ。
アウトを取りやすい状況ではあるが油断はしない。
ここから何が起こるのか分からないのが野球だから。
竜田が構えたのは内角低めを外した球。
ボールで1度様子を見ようという提案だと思う。
それには俺も賛成だ。
カウントには余裕があるので、急いでストライクを取りに行く必要はない。
雷郷は先程のボール球を振っていることもあって余計に。
3球目を投げる。
思い通り振りに来るかと思ったが、流石に読まれていたのか反応しなかった。
4球目はストライクゾーンにチェンジアップを投げるつもりだったが、制球が乱れてボールゾーンに球が飛んで行った。
偶然にもボールゾーンの方へ球が飛んで行ったから良かったが、一歩間違えば大惨事だ。
鼓動が早まる音が聞こえる。
5球目は外角高めのツーシーム。
雷郷はストレートだと思い反応したが、謎の嗅覚でカットする方向へと切り替えた。
ファールゾーンへと切れる球。
凡打でアウトを取ることが出来たはずなのに、非常に惜しかった。
ここで迷うのはどのタイミングでメテオフォールを使うか。
メテオフォールは強力な武器だが、相手に張られていたら効果が薄れる。
分かっていても打てない球にするまでには相当の時間が掛かるだろうからな。
竜田からのサインが出る。
それを信じる以外にない。
ここに賭けることにした俺は9回で2ストライクという状況を利用して、スキル:渾身の一球を発動する。
そして、振りかぶって投げた。
ど真ん中のストレート。
渾身の一球の効果で球速は140キロにまで上がる。
試合中に球速がこんなに上がるなんて状況はありえない。
加えて、敢えてのど真ん中ストレート勝負。
最高の展開ではある。
勝ったのはどっちか。
それは言うまでもなく俺だ。
ここを乗り切ったことで確信した。
確実にこの回は無失点で抑えられたと。
3番、4番も空振り三振でアウト。
9回までがここで終了した。
どんな試合になるのかと思い、蓋を開けてみれば同点か。
意外にも黒前からの得点率が高いのは、チームとしての成長に繋がっているはずだ。
さて、問題はここから延長戦があるかどうか。
監督同士が話し合いを始める。
そして、2〜3分くらいの時間が経過した後に戻って来た。
「今日の試合はここまでだ。それぞれ、整列するように」
意外にも同点のまま練習試合が幕を閉じた。
理由の1つとして、これ以上は互いにカードを見せ合いたくないというのがあるだろう。
もしも、地区予選の決勝へ行くならここと当たる可能性が高い。
そう考えた時にこちらは見せていない駒場というカードもある。
相手も何枚かは残しているはず。
だから、これ以上は見せないで終わりを選んだ。
「終わったな。意外にもあっさりと」
同点という結果に消化不良の俺達はさっさと片付けを済ませて帰ろうとする。
するとそこには走って追いかけてくる人がいた。
ユニフォームに身を包んでいることからも波王山の生徒だと分かる。
よく見ると前を走っているのが雷郷、その後ろを保護者の様に付いてきているのが黒前だ。
「どうだった!俺の力は!」
「お前、さっさと変えられてただろ」
「なっ!でもよ!来たくなっただろ?」
「やめとけ、雷郷。コイツはここが居場所なんだ」
それでも納得して無さそうな顔をする。
だけど、これ以上は執拗に迫っても無意味だと判断して諦めたようだ。
「大杉二郎だったな。君も魔球が使えるとは」
「偶然の産物ですよ」
「それにしても環成東は良い奴らが揃っているな。また戦えるのが楽しみだ」
「お互いに決勝で当たれると最高なんですけどね」
「はは、そうだな。その時は今日の続きをしよう。それじゃあ、失礼する」
熱い話に聞こえるが、この約束をするという事は必ず決勝へ進めるという自信の現れだ。
本当にそうなると良いけどな。
スポーツは何が起こるか分からないからスポーツなんだ。
俺達も、そしてアイツらも決勝に残れる保証はどこにもない。
だからと言って、負けるつもりもないけど。
「おっ!いたいた!見つけたー!探すの苦労したよー!」
今度は別のお客さんが来たみたいだ。
試合後は色んな人がやって来て忙しいな。
珍しく私服姿の小鳥遊だ。
今日は試合を観に来ると言っていたので驚きはしないけど、わざわざ声を掛けてくれるとは思ってもいなかった。
「すごかったね!特にあのホームラン!今流行りの二刀流って奴?」
「俺もまさか入るとは。でも、俺を応援してくれるみんなのお陰かな」
「ぷっ、何それ。アスリートのインタビューみたいじゃん」
「本当にそうだから言ってんの」
そんなに笑われたら恥ずかしい。
だけど、気合いの入った試合だったので少し気が抜けてありがたい気持ちもある。
「おっ!小鳥遊ちゃんじゃーん!まさか、俺の応援しに来たとか?」
「そんな訳ないでしょって言いたい所だけど、今日の活躍は素直にすごかったじゃん」
話に割り込んで来た堀枝を冷たく突き放すかと思ったが、意外にも褒める小鳥遊。
それには自分で褒めてもらおうとしていた堀枝も驚く。
「これって夢なのか?大杉」
「夢だと思うなら頬でもつねってやろうか?多分、痛いぞ」
「いや、もう少しこの夢に浸ってたいからやめとく」
「それじゃあアタシがいつもは褒めないみたいじゃん!」
「ツンデレのデレを味わってるんだよ俺は」
「この変態は俺が責任持って回収して行くから安心して。じゃあ、また学校で」
「うん!またね!」
堀枝を引き摺りながらみんなの下へと戻る。
今日の試合は良い経験になった。
この経験は俺だけでなく、チーム全体を成長させる。
そして完成されたチームになるだろう。
甲子園までは長い様で体感は短く感じる。
それまでに、俺も、他の仲間達も最高の状態にしておかなければならない。
ここからは俺も自分だけでなく、本格的に他のメンバーの育成にも力を入れなければな。
それも他の誰からも怪しまれることなく。
特に糸式先輩は気をつけないと。
兎にも角にも、長い長い練習試合が終わった。
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