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winner or loser〜恋愛野球ゲームに転生したけど、モブだったので野球に集中します〜 リメイク前  作者: 風野唄


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第080話 取り返しのつかない失敗

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

黒前(くろまえ)の静かな威圧感が俺を襲う。

しかし、俺も動じたりはしない。

ここまで完璧に投球して来た。

相手が変わったからと言ってそれは変わらない。


竜田(たつた)は何を要求してくるのか。

サインはストレート。

構えた場所は球1個分外したボールゾーン。

その繊細な駆け引きが白熱した試合を演出して来た訳だ。

首を小さく縦に振る。


1球目を投げた。

サイン通りに飛んでいくお手本の様なストレート。

相手は目が良いらしく、手を出す素振りはない。

それぐらいは想定の範囲内。

俺のストレートは他の人の様に打者を打ち取ることが本来の目的ではない。

相手の目を他の変化球に慣れさせない為の球だ。


1球目にストレートを投げた事で、他の球が生きてくる。

2球目もストレートを要求する竜田。

相手がより変化球を意識しているタイミングで、ストレートを投げる訳か。

仮に続けてストレートだと読まれても、頭ではメテオフォールが過ぎる。

悪くはない選択肢だ。


相手は迷わず振りに来た。

バットを掠めたが何とかストライクを奪う事に成功する。

少しヒヤヒヤしたのは言うまでもない。

あの場で打たれていたらどうなっていたか。

確実に塁には出ていただろうな。


1ボール1ストライクで投げる3球目はチェンジアップ。

2球見せたストレートよりも遥かに遅い球が来ることで相手は全くタイミングが合っていない。


残りは1ストライク。

次の球で決めたい所だ。


「相手はそう簡単に譲ってくれたりはしないよな」


相手はまだ死んだ目をしていない。

寧ろ、追い込まれた時から気迫が増している。

嫌な相手だ。


4球、5球と投げ込むもやはり黒前は粘って来た。

あと少し、それを落とさないことが投手にとっては辛い。

だが、俺も進化している。

悪いがこれ以上は一切の猶予も与えない。


6球目、メテオフォール。

三振を取るつもりで投げたのだが、これを打ち返す黒前。

まさか、打ち返すとは思っていたなかったので冷や汗をかいたが内野の好プレーに助けられる。

過程はどうであれ、結果はアウト。

残り1アウトで交代だ。


打順は1番打者に回ってくる。

ここを打たれれば次の打者が雷郷(らいごう)だという事もあって、少しの緊張感があったけれど1球目のメテオフォールに手を出してアウトになった。


次は9回の表、ここで逆転しないと引き分けになる。

もしかしたら、相手との相談で延長戦もあり得るがそうなったとしても辛い状況に変わりない。

相手が後攻だというのがここに来て効いて来たな。


9回表は橋渡(はしわたり)の攻撃から始まる。

この場面で打てば間違いなく勝ちに繋がる大きな貢献となるだろう。

本人もそれは自覚している。


ここに来て、橋渡の目には炎が宿る。

獅子頭先輩に続いて極度の集中状態に入ったか。

まさか、この試合だけで2人も覚醒するとは思ってもいなかった。

そんな事されると期待が高まるな。


「アイツ、すげー集中してるな」


駒場(こまば)が話し掛けて来た。

話題は橋渡だが、本当にそれだけの為に話し掛けて来たのか。


「あれは打つだろうね」

「やっぱりそう思うか。・・・さっき監督に俺も出して欲しいって言ったんだ」


やっぱりその話か。

どうやって切り出そうか迷った挙句、ストレートに話し始めるのが実に駒場らしい。

監督に配慮してなのかいつもよりは小さな声で話している。


「なんて言ってた?俺、降板だって?」

「分かってるだろ。俺には次の試合で登板の機会は与えるってさ。要するに調子の良いお前を優先した訳だ」

「悪いなとは言わないぞ。実際に今の俺は最高に調子が良い。だから、あの場所は譲りたくない」

「分かってる。だけど、焦りもするだろ」

「駒場にも焦りとかあるんだな」

「俺だって人間だからな」

「俺にどうしろと?俺は活躍する。悔しかったら、駒場も次の試合で俺の活躍が霞むくらいに魅せて欲しい。それが好敵手ってものだと思う」


それだけ伝えて橋渡の打撃へ集中する。

5球目でフルカウントになった橋渡だったが、そこから3球は粘っていた。

アイツの本領を発揮するのは追い込まれてからだ。

ここから粘り続けて相手が疲れた所を打ち込む。


「ここだ!」


橋渡の強烈なピッチャーライナー。

非常に危険な球ではあったが、投手には当たる事なくセンター前へと転がっていく。

一塁へと辿り着いた橋渡は黒前に対して詫びの一礼を送る。


これでノーアウト一塁だ。

次は4番打者である後藤(ごとう)先輩の番か。

今日の後藤先輩なら打ってくれそうな雰囲気もあるが、調子に乗るとやらかすタイプの男でもある。

不安要素はあるが、前者であると信じたい。


1球目、空振り。

2球目、空振り。

3球目、空振り。


ベンチにいた全員が頭を抱えていた。

気持ちが良いまでのフルスイングだ。

スキルを有効活用しても、必ず当たるようになる訳ではないので仕方ない。

だけど、欲を言えば安打を出して相手にプレッシャーを与えたかった。


黒前もそこまで甘い存在ではないということか。

しかし、次の万常先輩の番になった時、相手監督が動き出す。

外野の守備についていた雷郷(らいごう)をここで投手に戻す。

嫌なタイミングでの交代だ。

みんなが魔球の存在を少しずつ忘れ掛けていたのに。


こっちの絶望とは裏腹に、ニコニコの笑顔で雷郷でマウンドに立つ雷郷。

どんな状況であれ、マウンドに立って投げられるということが嬉しいのだろう。

気持ちはすごく分かる。


「相手が誰だろうと関係ない。俺はキャプテンとしての役割を果たすだけだ」


1球目はストレート。

最初は速く感じたが、黒前を挟んだ事によってストレートは弱体化したように感じた。

万常先輩はこれを見送ったので、ストライクカウントが増える。

打ちにもいけたように見えたが、ここで見送る選択肢を取ったことには何か意味があるはずだ。

2球目の風神はボールゾーンへ。

3球目、内角ギリギリから変化するスライダー。

きっちりと打ち返す万常先輩。


結果はシングルヒット。

そして、次の打者は堀枝。

確実とまではいかないが、追加点はいただいたと言っても過言ではない。

それくらい俺は堀枝を信用している。

だが、これがフラグになってしまうとは。


1球、2球は何も問題が無かったが、3球目を堀枝が打ってからが問題だった。

詰まった当たりは二塁方向に飛んでいく。

勿論、相手もこのチャンスを逃す訳もなく、素早い守備で万常先輩をアウトにした後に一塁へ送球。


ゲッツーによって9回の裏へ。

アウトになって戻って来た堀枝が絶望の表情を浮かべている。

得点のチャンスをたった1人の手によって潰してしまったのだから落ち込むのも頷けるけれど、気持ちを切り替えるしかない。

今出来ることは9回の裏を無失点に抑える事だけだ。

それは俺だけの力ではなく全員の力が必要である。


「気持ちで負けたら、試合に勝っても意味ないよ。俺は堀枝、お前に背中を託して投げてる。だから、1度のミスを悔やみ過ぎて他に影響を与えるなよ」


敢えて厳しい言葉を投げ掛けた。

優しい言葉を掛かるだけがチームではない。

堀枝の成長の為には苦い思い出も必要だろう。


「さて、ここから無失点で抑える為に気合い入れるか」


俺はゆっくりとマウンドへと向かった。

ご覧いただきありがとうございました。

よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!

あ、毎日21時投稿予定です。

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