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第079話 天へと届く一撃

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

こちらの守備の時間では、獅子頭(ししがしら)先輩がマウンドに立つ。

残りは11球。

3球三振する勢いで投げないとすぐ交代することとなる。


1人目、4番の細マッチョとの勝負。

いつもより緊張感のある1球目。

高めいっぱいストレート。

低めに落ちるカーブばかりを見せていた分、ストレートの効果は絶大で空振りに。


2球目をどうするのか興味深い。

相手はカーブ系を警戒しているはず。

もう1球ストレートか。

いや、獅子頭先輩は高速カーブを選んだ。


相手も狙っていたカーブ系の球が来たので振りに行く。

バットには当たるがギリギリでファールゾーンに切れて一命を取り留めた。


3球目になるが、ここできちんと抑えられるか。

それとも相手が粘るのか。

ここは外角低めのストレートを投げる。

カーブ系を中心に組み立て来ると思ったらしく、驚いた表情の4番打者。

しかし、相手も4番としての意地を見せて喰らい付いて来た。


内野を軽々と抜けていくライナー。

3球目でアウトにするどころか、塁に走者(ランナー)を出してしまった。

このヒットはあまりにも痛い。


「交代だ。大杉(おおすぎ)、行ってこい」

「はい!」


8球ぐらいは投げられる余裕があったけど、今後の獅子頭先輩のメンタルケアを考えると今の状況で下げる方が良いと判断したのだろう。

誰もが納得できる賢明な判断だ。


タイムを掛けて、投手交代を告げる。

マウンドへ上がり獅子頭先輩から球を受け取ろうとしたら、渡す前に話し掛けて来た。


「俺の役目はここまでみたいだな。楽しかったぜ」

「完璧でしたよ。点も決められてないですし」

「当たり前だぜ!任せたぞ、大杉!」


気持ちの入った球を受け取る。

7回裏までベンチで試合の流れを見ていた分、マウンドに上がった時の高揚感は堪らない。

獅子頭先輩がはしゃいでいたのも同じ状況に立った今なら気持ちが分かる。


5番打者の準備が終わった。

こちらも準備は万全だ。

いつでも始められる。


深く息を吐く。

球を握り込む。

全員アウトにしていけば、残りは9人か。

短い様で長い道のりだな。


相手が警戒している1球目。

俺は魂を込めたメテオフォールを投げた。

反応すら出来ない5番打者。

そして、雷郷以外にも高校生で魔球を投げられる奴がいることに驚く波王山(はおうざん)

この注目を集めている瞬間が堪らない。


2球目はフォーク。

先程とは違う下方向の変化に相手は困惑する。

迷えば迷う程、俺達バッテリーの思う壺だ。


投手(ピッチャー)は変わっているが、捕手(キャッチャー)は変わっていない。

竜田(たつた)は相手の事を読み取り、完璧なリードをしてくれる。

俺も同じ場所に投げたいと思うので、投げていて気持ちが良い。

まさか、もう八坂(やさか)先輩と同じ投手を立てるリードを身に付けたのか。

そうだとすると恐ろしい成長だ。


最後はチェンジアップで締めくくる。

全く相手に手を出させないまま1アウトを取った。

ベンチの方は喜んでくれているみたいで何より。

次は悪球打ちの男。

だけど、関係ない。

彼も綺麗な投球で抑える。


1球目、ストレート。

他の人のストレートに比べると遅いが、それでも十分な球速は出ている。

相手はストレートに手を出すが、今までの2人と違う球速に少し苦戦していた。


2球目は、高めのツーシーム 。

しかし、相手は続けてストレートを投げて来たと思い振りに来た。

勿論、芯から外れた当たりは大きな当たりとはならず、内野ゴロでアウトに。


今の俺は最高に調子が良い。

次の打者も完璧に抑えて、あわよくば打者として点まで決めたい所だ。


俺の今出せる全力を相手にぶつける。

相手打者も必死の抵抗を見せるが、結局は4球で三振。


獅子頭先輩もかなり強かったけれど、俺も強力な印象を残せているようだ。

特に雷郷と同じく魔球が扱えるという点はな。


「チッ。俺より良い投球しやがって」


ベンチに戻るなり歓迎の言葉でなく、罵倒を浴びせる糸式(いとしき)先輩。

彼なりに褒めているつもりだろうから、有り難く受け取っておく。


8回表の攻撃に入る。

日下部先輩は3球で三振になり、俺へと打順が回って来た。

昂る気持ちを抑えながら、相手の情報を冷静に思い出す。

確か黒前は初球にストレートを投げる確率は70%ぐらいだ。

ストレートだと分かっていても打ち返せるかどうかは五分五分。


「大杉二郎(じろう)。雷郷から要注意人物として言われていたが、アイツか」


今日初打席か。

ベンチから見ているのとここに立つのではやはり雲泥の差がある。

後藤先輩のテンションを異質に感じていたが、いざここに立ってみると分からなくもないな。

マウンドに上がった時とは違う興奮を覚える。

自分が逆転への道標となるも悪くない。


「いつもより力が湧き出るな。不思議な感覚だ。いきなりどうしたんだ」


【野球部以外で貴方を応援する人が5人に増えました。一時的に打撃を上昇する効果が発動します】


このタイミングで応援バフも乗ったみたいだ。

それにしても5人も応援してくれているのか。

土方(ひじかた)さん達と小鳥遊(たかなし)夜飼(よるかい)さん・・・あれ?あと1人は誰だ。

まぁ良い、このチャンスを逃さないことを優先しよう。


1球目はカーブから入って来た。

俺はこれを見送る。

初球はストレート以外打たないと決めていたからだ。

1球目が変化球だった場合に次の球が何かを予測する。

それが俺の強みだから。

可能性を弾き出してある程度予測しておく事で拙いステータスを補う。


2球目はストレートだろうな。

しかも、低めいっぱいの。

ほら、ドンピシャだっただろ?


俺の放った一撃は天高く上がる。

自分自身でも驚いているが、まさかこの打球の飛び方は。

ゆっくりと歩きながら球の行方を追って、本塁打になったのを確信した途端にバットを投げた。

監督なら最初から全力で走れと怒るだろうが、打った時の感触があまりにも良かったから、ついつい。


「すげーーな!大杉!お前、投げても打っても完璧かよ!」


堀枝が同点になった事でテンションが上がり、ホームベースを踏んで戻って来た俺に話し掛ける。

本塁打を打てたのは間違いなく応援バフの力だ。

自力ではない。

だから、複雑な気持ちではあった。

しかし、複雑そうなのは俺だけではないみたいだ。

レギュラーの投手陣も同点の喜びと自分の活躍ではない悔しさが混在しているように見える。


その後、8回の表終了時点での得点は4対4の同点だ。

白熱した試合に両チームの応援も盛り上がりを見せる。

攻守交代が切り替わっている時、駒場が監督へ話し掛けているのが見えた。

俺の活躍を見て、登板機会を強請りに行ったか。

監督がどう答えたかは分からないが、俺もこのマウンドは譲りたくない。


ただ、言葉はいらない。

この回で結果を見せれば、交代という発想も消えるだろう。


相手も準備が出来た様なので1球目を投げた。

すると相手は意地で打ちに来る。

しかし、1球目から打ちに来るのが裏目に出た。

内角のストレートを詰まらせてしまい、ボテボテの内野ゴロ。

冷静に処理してアウトに。


1人目を抑えられたのは幸先が良いけれど、次は黒前の打順か。

お返しの本塁打だけは気を付けなければならない。

ここから突き放されるのは精神的な負担が大きいのだから。

ご覧いただきありがとうございました。

よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!

あ、毎日21時投稿予定です。

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