第078話 待ちに待った出番
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7回の表、氷道先輩の攻撃から始まる。
終盤戦になっていることを考えると1打席の貴重性が際立つ。
氷道先輩もそれは重々に承知しているはずだ。
黒前も回を増す毎に迫力が増している。
ストレートというシンプルな武器がこれ程厄介なのかと痛感させられるな。
1球目、外角高めいっぱいのストレート。
これを見逃す氷道先輩。
その後も5球までは粘ったけれど、結局は三振に終わる。
守備では大きな成長を見せたが、攻撃でハッキリ言って活躍していない。
もしも、後1打席チャンスがあるなら。
そこで彼の真価を発揮して欲しい。
2人目の橋渡が打席に入った。
険しい表情を浮かべている。
それも仕方ないのかも知れない。
手に汗握る緊張感、終盤というプレッシャー、その他様々な要因が重なって彼を苦しめる。
「打てるよな、橋渡なら」
「当たり前だよ。誰よりも努力してるんだから」
駒場は心配しているようだが、俺は打てると信じている。
黒前が優れた投手なのは知っている。
だけど、彼も人間だ。
必ず攻略の糸口が残されている。
1球目、低めに落ちるスプリット。
2球目、勢いのあるストレート。
どちらも手を出そうとしているが、反応出来ずにストライクになる。
簡単に追い込まれたこの状況。
橋渡の目が死んでいない事だけが唯一の救いだ。
3球目はボール球。
相手もこちらをリスペクトして様子を見る1球を投げた訳だ。
4球目もボール球。
相手に生かされている様な状況。
しかし、一瞬でも気を抜くとストライクを奪われる。
なので、全神経を1球1球に注がなければならない。
5球目、ストレート。
これは確実にストライクゾーンに入っている。
「ほらな、心配要らなかっただろ?」
「マジだな。アイツ、すげーよ」
一塁手の頭上を抜ける右翼手前ヒット。
あの精神的にも追い込まれた状況で良く打ち返した。
ただ、油断は出来ない。
まだ1アウト、1塁。
ここから追いつくにはもう少しだけ気合いを入れる必要がある。
そして、この局面で打席に入るのは環成東が生み出したロマン砲。
声が大きい事はたまに傷な男。
「この展開でホームラン。そして、逆点する。ふむ・・・。ガハハハッ!最高だ!」
1人で妄想して興奮する後藤先輩。
最近、そういう節が増えて来たな。
外野が1歩後退。
前に落ちる分には得点の危険性はないと判断したか。
力加減の出来ない後藤先輩相手には賢い選択とも言える。
黒前も目から熱い炎が見えて来た。
獅子頭先輩と同様に早い段階で圧倒的な集中の世界に入り込んだ様だ。
現段階では黒前に軍配が上がる。
その評価を果たして覆す事が出来るのか。
1球、1球、激しい攻防が繰り広げられる。
黒前のストレートにも負けないで反応する後藤先輩だが、ヒット性の当たりはまだない。
このまま10球目に到達するのではないかと思うほどには粘っている。
譲らない両者。
ここはどうしても両者勝ちたい局面なので仕方ない。
12球目、渾身のストレート。
豪快なスイングの後藤先輩。
少し詰まった様に見えたが、力で強引に引っ張る。
右翼手方向へと飛ぶ球。
相手も下がっていたので余裕で間に合って捕球する。
アウトカウントが増えてしまった。
しかし、ただでは終わらせない男が走った。
右翼手の捕球したタイミングで完璧なタッチアップを見せる橋渡。
アウトになった後藤先輩の為に、せめて無駄ではなかったと言えるよう走る。
勿論、相手も反応して二塁へ送球する。
気迫のスライディング。
相手も負けじと橋渡へと球の入ったグラブで触れて来た。
「セーフ!!!」
このタッチアップは大きなチャンスに繋がったと言えるだろう。
何故なら、次の打者はここ一番という時に頼りになるキャプテンの打順だからだ。
両者、静かに睨み合う。
間には見えない火花が散っていた。
黒前が大きく腕を振り、全身全霊の込められたストレートを放つ。
万常先輩も負けじと打ちに行く。
1球目からバチバチの勝負。
しかし、空振りに。
次は相手を惑わせるスプリット。
万常先輩はこれにも反応してまたも振りに行くが、ファールゾーンへ。
大丈夫、問題はない。
バットに当てられているということは後少し噛み合えばヒットになる。
3球目はカットボール。
あまり頻繁に投げられている球種では無かったけれど、ここで見逃すという選択肢はなく喰らい付く。
必死の姿は泥臭くも格好良い。
4球目、内角高めのストレート。
「ストレートを待っていた」
狙い通りの球が来て、打ち返す万常先輩。
中堅手の好プレーによって惜しくもシングルヒットとなり、得点とまではならなかったが走者一、三塁と絶好のチャンス。
次のプレーが始まる前に交代が入った。
浦西先輩と代わって堀枝が打席に。
堀枝にとっては重圧の掛かるタイミングでの交代になってしまった。
だけど、本人は気にしていない様だ。
寧ろ、このタイミングで出された事による期待に嬉々としている。
「選手交代か・・・」
少しばかり嘆く黒前。
彼は抑えられると思っているが、ここで交代するということはそれなりに打撃面が優れている選手だということになる。一、三塁ということもあって、嘆く気持ちも分からなくはない。
それでも始まる黒前 対 堀枝の戦い。
1球目はいつもの様にストレートから始まった。
それと同時に三塁手方向へと打ち返す。
やはりアイツは天才か。
最強の一塁手と評価しただけはある。
結果は惜しくもシングルヒットだが、満塁の状態は作れた。
これが三塁を抜けていたら得点の可能性まであったんだけどな。
しかし、同点どころか逆転のチャンスまで見えて来た。
時透先輩はいつも通りの表情だった。
過集中している訳でも、緊張し過ぎでもない状態。
これが経験した試合数の差なのか。
1球目、2球目。
激しい動きはない。
見送ってばかりで、それ以外のアクションは見せない。
普通の人ならどうしたのだろうと心配になるけれど、時透先輩ならきっと大丈夫だ。
3球目で相手の癖を完全に読み取り、ヒットを打ってくれるはず。
期待の3球目、ここでカーブが投げられる。
果たして時透先輩はきちんと読めていたのか。
「ストライク!バッターアウト!チェンジ!」
結果は三振だった。
この絶好のチャンスを逃したのは大きい。
しかし、相手優勢で試合は進んでいるがいつ均衡が崩れてもおかしくは無い。
「大杉、いつでも行けるな」
「えっ?」
俺は思わず、疑問の声で返してしまった。
確かに獅子頭先輩は残り11球しか投げられない。
だから、投手交代はあり得る。
その為に準備をしていた。
しかし、駒場が選ばれると思っていた。
「いけるのか?いけないのか?どっちだ?」
「いけます!いつでも」
俺は気合いの入った返事をする。
波王山との貴重な試合。
燃えない奴はいないだろ。
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