第074話 速球の王者
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先程は歩かされた時透先輩からの攻撃で始まる。
大事な場面で先程は歩かされたので、今の彼はやる気に満ち溢れていた。
自分がまずは塁に出ることで、チームとして勢い付けられる。
ただ、心配な点があるとするならば、投手が変わってしまったことだ。
雷郷の球種は覚えて来たのに、新しい投手がどんな球を投げるのかはみんな分かっていない。
「相手がどんな球を投げるか見てからの方が俺の本領を発揮しやすいんだけどな。確実に投げるストレートに狙いを絞るのは余りにも危険だ。まずは様子見するしか」
始まった。
これが時透先輩の分析モードだ。
相手の心理を読む上で、相手の行動を分析する必要がある。
今回はまだ投球が始まっていないので、予測するしかないのだけど。
「雷郷、見とけよ。これが先輩の背中だ」
何を投げるのか注目している1球目。
渾身ストレートが内角の低めに入る。
結果はボールだったけど、審判によってはストライクを宣言してもおかしくないコースだった。
それに球速も150キロ以上は出ている。
駒場よりも球威は劣るが、それでも速さには驚かされる。
「なるほどな。そこはボール判定か」
黒前は納得していないが、素直に審判の判定を飲み込んだ。
次からはストライクゾーンもある程度分かったはずだし、厳しいコースの球も増えて来るだろう。
だけど、時透先輩はまた自分の世界に入り込んでいた。
「やはり、初球はストレートからか。それ程自信のある球なのか」
ブツブツと分析をしている。
ベンチからその光景を見ているとなんだか不気味だな。
そうしている間に2球目が放たれた。
球速は速い。
先程と同じストレートか?
コースは少し甘めに入っている。
時透先輩は、ここを狙って打ちに行くのでないだろうか。
しかし、見送る選択を取った。
そして、その選択は正しかったのかも知れない。
甘く入った球は誘いだったらしく、変化量は少ないがキレのあるカットボールだった。
下手にあの球へ手を出していたら、ゴロになっていてアウトだっただろう。
「これを見送ってくるのか。相手は意外にも冷静だな。あまり俺の手の内は明かしたくないんだけどな」
ここで仕留めるつもりが、冷静だった時透先輩によってその目論見は阻止された。
次はまたストレートか、カットボールか。
将又、違う球種を投げるのか。
3球目、内角高めを狙ったストレート。
この球は狙うべきだと判断した時透先輩はバットを振る。
しかし、目では慣れていてもタイミングが合っていなかった。
結果は空振り。
1ボール2ストライクと簡単に追い込まれた。
相手が決めに来るのかを真剣に悩む時透先輩。
今の球は打ち返したかったと顔に出ている。
だけど、打てなかったものは仕方ない。
気持ちを切り替えて、自分の能力を最大限発揮しないといけない。
4球目、ストレート。
ここで外角高めを狙って来た。
しかし、ここを見送る時透先輩。
結果はボール判定だった。
今の球をよく見送れたな。
心理的にはついつい手を出したくなる球だったけど。
それにしても、カットボールとストレートしか球種は判明していない。
俺は他の球も知っているが、時透先輩はまだ知らない。
勿論、他にも変化球を持っているのは予想出来ているだろうけど、どのタイミングで来るのか見極める必要がある。
「5球目はあれか。いや、あの可能性も。これを投げたということは」
5球目、果たして時透先輩の予想は当たるのか。
黒前が投げたのは今までの速球を活かすチェンジアップ。
タイミングを合わせて、打てるかどうか。
「ストライク!バッターアウトー!」
結果は三振。
反応こそ出来ていたがストレートと速度の落差が激しくタイミングが合わせられなかった。
ストレート、カットボールにチェンジアップ。
球速の速さから察せるが、ストレート中心に組み立て来るタイプの投手だ。
あの150キロが印象に残れば残る程、他の球が際立つ。
「あの投手はどうだった時透」
「速球中心ではあるが、まだ隠している球もありそうだから警戒は必要だ。それとチェンジアップ。あれは下手に手を出さない方が良い。実際の球速よりも倍遅く感じる。それこそ、先発が投げてた魔球よりもな」
自分の失敗を活かす為に分析した結果をベンチにも伝える。
本当であれば悔しいという思いでいっぱいのはずなのに。
この情報を他の部員達は無駄に出来ない。
次の打順の日下部先輩にも事前に伝えてあるみたいだ。
これを元に出塁して欲しい。
「今日はお前に任せっぱなしだが、頼んだぞ日下部」
打席に立った彼には聞こえないが、信頼しているのが伝わる言葉を呟く時透先輩。
3年の先輩同士にも熱い友情があるのかも知れない。
(初球はアレが来るなら自信を持っていこう。いや、そうでなかったとしても1球目は振りに行く。気持ちが追い込まれる前に勝負するしか俺にはない)
彼は非常に追い込まれていた。
2年生の熱い奮闘を見て、自分が無力だと感じていたからだ。
特に、自分の得意な守備でも目立った功績を残せていないのが拍車を掛けている。
だから、目立った活躍の場を作りたかった。
1球目、日下部先輩の狙った球は来るのか。
金属バットの心地良い音。
それと同時に素早く地面を移動する球。
あれだけ追い込まれていた日下部先輩が安打を出したのだ。
それも右翼手を抜けてのヒット。
ここで自慢の足を見せる時が来たみたいだ。
結果はスリーベースヒット。
球種をストレート1本に絞り、後はコースを絞るだけにしたのが大正解だったみたいだ。
黒前も驚きの表情だった。
まさか自慢の武器を打ち返すとは。
しかし、立て直すのも早い。
塁に出てしまったのは仕方がないので、気合いを入れるしかなかった。
黒前にとって唯一良かった点は、走者が背中でウロウロしないこと。
それ以外はマイナスしかない。
次は糸式先輩の打順だ。
投手としての役目は先程の時点で終わりだけど、まだ打者として仕事が残っている。
獅子頭先輩は球を持つと人が変わるけど、打席だといつも通りになってしまう。
だから、彼の代わりに最後の仕事として。
「最後まで俺に与えられた役目を果たす。それが足を引っ張ってしまった俺に出来る事だ」
責任を感じて糸式先輩はこの役目をしっかり果たしたいようだ。
失点は誰にでもある事だし、背負い過ぎない方が良い。
そう言いたいけれど、本人に言っても無駄か。
だったら、満足できるまで活躍してくれ。
その方がチームとしても助かる。
ヒット1本で1点。バントでも良い。
追加得点も狙うなら出塁してくれた方が嬉しいけど。
さて、どうなるのか1球目は。
先程はストレートを投げて、打たれてしまったので立て続けに投げる可能性は低いか。
投げられた。
結果的に選ばれたのはストレート。
全く手も足も出ずに見送る。
ただ、見送りこそしたもののスピード感は掴めたはずだ。
ここから反撃して欲しい所である。
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