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第072話 ピンチを力に

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

相手は8番打者。

そろそろ打順は1周してしまうな。

塁に走者(ランナー)を貯めた状態で、また雷郷(らいごう)に回ってしまったら厄介だ。

出来れば、8番、9番と立て続けに抑えたい。


「これが波王山かよ。今の俺じゃ・・・」


糸式(いとしき)先輩から絶対に聞きたくない弱音。

彼はそんなタイプではないだろ。

強い敵がいたら文句を言いながらも闘志を燃やす。

それが糸式紡だ。

今日調子が悪いからなんだ?

ここから全く抑えられないとでも言うつもりか?

いや、そうではないと信じたい。


目を瞑り、天を仰ぐ糸式先輩。

そして、勢い良く自分の頬を叩く。

良い音と共に気合いが入ったようだ。

また目には燃える炎が見えた。

ベンチからでもはっきりと。


次の打者と少しの間、見つめ合いセットポジションに入る。

1球目、豪快なストレートが内角に投げ込まれた。

ボールゾーンの球ではあったが、余りの糸式先輩の迫力に手を出してしまう8番打者。

やはり、いつもの糸式先輩の調子を取り戻し、始めたか。


その後も2球、3球と立て続けにストライクを取り、三振に抑える。

相手も少し驚いた表情だ。

たった数分の間に何が起こったのか。

全く想像出来ない。

ここまで人間は変化出来るものなのか。


9人目、一巡目最後のバッター。

ここに置かれているから打撃のセンスがないと侮ってはいけない。

ある程度のステータスはあると思った方が良い。


しかし、その心配は必要なかった。

糸式先輩の投げた1球目に手を出してしまい、そのまま凡打となってしまう。

ここで抑えられたのは大きい。

更に言えば、次の攻撃で点を入れたらもっと勢い付く。

そうなれば本格的にこの試合の勝ちが見えてくる。


ベンチに戻って来た糸式先輩は、次が自分の打順なので準備をしていた。

その邪魔をしないように一言だけ賞賛の言葉を送る。


「ナイスピッチです。糸式先輩」

「ナイスもクソもあるかよ。俺はあれじゃ満足しねーぞ」

「点はあげなかったんですし、喜びましょうよ」

「自分で招いたピンチだ。自分でケツ拭くのは当たり前だろ。攻撃も見てろ、取られた分は取り返す」


やはり、満足はしていなかったか。

責任感が人一倍強いのがよく分かる。

だけど、雷郷から点を取るには気合いだけではどうにもならない。

何か突破する為の策を練らないと。


せめて2種類の魔球を攻略出来れば、勝率がグッと跳ね上がるのに。

風神、雷神、このどちらもが狙って打つのは難しい。

メリハリのある緩急が俺達を苦しめる。


「投げて打ってが当たり前の時代だ。俺もそれが出来ると証明する」


雷郷 対 糸式の対決。

先程は雷郷に軍配が上がったけれど、今回はどうだ。

俺的にはチームメイトに言うのもどうかと思うが、雷郷の方に分があると思う。

だけど、信じたい。

ここから糸式先輩が塁に出て、その活躍によって同点にまで追い付くと。


「糸式がこんなに粘るとは少し計算外だったなぁー。俺の計画では2回までに降板させるつもりだったんだけど。あぁ、早く大杉と戦いたいのによー」


この状況でも糸式先輩は眼中にないようだ。

必要以上に同じ転生者である俺に固執している様だが、それだといつか足下を掬われる。

知識があるからといって無敵な訳ではないのだから。


静かに構える糸式先輩。

いつもよりも静かな彼を見ていると、ゾーンに入っているのだと分かる。


最初はストレート。

しかし、ボール球だったので見逃してボールカウントが先行する。


続けて、2球目は風神。

これはタイミングを合わせてしっかりと当てるが、ファールゾーンへ。


3球目、4球目は、どちらもボール球。

これに手を出さなかったのは大きい。

相手は1球でもボールを投げたら四球(フォアボール)で出塁されてしまう。

だから、ストライクゾーンだけに全神経を注げば良い。


5球目、糸式先輩は綺麗なスイングを披露する。

しかし、バットには当たっていなかった。

ここで雷神が効いて来たか。

あの魔球は間を空ければ空ける程効果を発揮する。

それを分かっていて、このカウントまで投げないでいたのか。


フルカウントか。

集中力が限界まで達する状況になってしまった。

まだ3回表、投手としての仕事もあるので、粘らず1球で打ち返したい所だ。


何を投げるのか考察をする暇も与えてもらえないままに6球目が投げられた。

ここは魔球を使って決めに来るか、それともストレートか。

使用頻度の低いスライダーだって可能性も。


「こいつッ!」


投げられたのは風神だった。

雷郷はストライクにしか投げないという先入観を利用して、敢えてボールゾーンに投げ来る。

気付いた時には既にバットを振り始めていた糸式先輩。

ここでスイングを止めたとしても、審判はスイングと判定するだろう。

それならここは無理矢理にでも。


タイミングもフォームもバラバラになりながらも、必死に喰らい付いて球をファールゾーンへと弾く。

なんとか一命は取り留めた訳だ。


「チッ、しぶといなコイツ」


討ち取ったと思ったはずが意地の粘りを見せられて、流石の雷郷も余裕の表情を崩した。

まだ3回の表なのに白熱し過ぎだろ。

これが9回まで続くと考えると白熱の余り倒れない様に気を付けないと。


7球目、またボール球を投げてくる可能性もあるが、恐らくストレートよりも自信のある雷神。

これで決めに来る可能性が高い。

誰も攻略が出来ていない魔球。

糸式先輩がこれを攻略出来れば、チームとしても大きな影響を与える。


やはり予想通り雷神。

それは糸式先輩も分かっているはず。

打てるかどうか。


「俺の無敵の魔球は打てねーよなぁー!!!」


吠える雷郷。

無言の糸式先輩。


良く見ると糸式先輩が打席の後ろギリギリに立っている事に気付く。

球をギリギリまで引き付けて、不規則な変化の終わり目を狙ってミートする。

常人が狙って出来るような芸当じゃないだろ。

何かしらのスキルが覚醒したか、それとも火事場の馬鹿力か。


どちらにせよ、しっかりと芯で捉えてセンター前へと飛んでいきシングルヒットとなった。

これは大きなシングルヒット。

真似できるかは置いておくとしても打てない球では無くなった。


「すごいな!見たかよ大杉!」


今日は出番があるか分からない駒場(こまば)は興奮していた。

誰が見ても分かるくらい熱い勝負だったと言うことだ。


「見てたよ。俺の知ってる糸式先輩ではない」


彼は本来なら雷郷からヒットを打てる性能は無い。

だから、俺は内心驚いている。

転生者は強いが無敵ではない。

それは身を持って体感している。

だけど、強い事には変わりない。

それなのに、平然と肩を並べる彼等は一体。


ゲーム内だったらまずチートを疑うレベルだ。

どうして、こんなに異次元の成長を果たしているのか。

神は見ている様だし、問いただしたい所ではある。


次は竜田(たつた)の番だな。

最初は雷郷の迫力に押されてしまったが、ここは流れに乗って安打を出して欲しい。

そうすれば、チーム全体に活気が出るだろう。

逆にここでアウトになれば、チームとしては問題ないが竜田個人としては精神的な負担になる。

それだけは避けたい所だ。

ご覧いただきありがとうございました。

よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!

あ、毎日21時投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
そもそもこんなに五月蝿いと練習試合といえども注意されるんじゃ…? とちょっと気になってしまったw
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