第065話 結局、肉は美味いって話
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波王山戦まで残り2週間を切ったから、昨日の練習は力が入っていた。
それは俺も同じだ。
先発は恐らく糸式先輩になるのではないかと予想している。
だからと言って、俺に出番が全く無い訳でも無い。
可能性で言ったら、登板機会は等しく分け与えられると思って良い。
獅子頭先輩が起用されるのもほぼ確定だけど、獅子頭先輩は圧倒的な強さと引き換えに持久が全く無いからな。
登板出来ても3回から4回を投げるのが精一杯。
もしも、持久面を強化していてもこの期間では5回投げられるかどうか。
糸式先輩と獅子頭先輩が連打されたら1年のどちらかにも登板機会が来るって話だ。
しかし、それは最悪の結末だな。
投げたい気持ちはあるが、投げられる場面が来たらそれは最悪の展開であるというジレンマ。
俺はどちらを願えば良いのか分からなくなって来た。
「なんかさー、難しい顔してるね」
「おはよう、莉里」
「おはようー!」
「あれ?舞葉は?」
「今日は風邪引いておやすみだって」
珍しいな。
体調管理には人一倍気を付けているタイプなのに風邪を引くとは。
ウイルス性だったりするのか。
少し気になるな。
今日の練習終わりに配布物を届ける口実で、様子を見に行っても良いかも知れない。
「それでなんで難しい顔してたの?ハニーに相談してみな?」
「ハニーじゃないよね」
「バレたか」
「波王山戦、近くなって来たからその事だよ」
「あぁ、その事ね。みんなそればっかり考えてるよね。竜田くんはメモ帳片手にブツブツ言ってるし、橋渡くんもずっと素振りしてたよ昨日は。それに御手洗も何か準備していたみたい」
それぞれが与えられた役割を全うする為に動いている様だな。
気になるのは駒場、堀枝の2人だ。
同じ部活なので偶に練習している姿は見かけるが、同じクラスでは無いのでどんな事に力を入れているか分からない。
勿論、全く話さない訳でも無いけど、他の人と比べれば機会は少ないからな。
ただ、気にはなるが、問題は無いと思っている。
駒場は、西谷や姉と休日にデートこそしていたみたいだが、それ以上に馬鹿げた練習量をこなしていたらしい。
アイツは人の領域から出た何かだと思う事にした。
堀枝も女好きではあるが、練習は欠かさない。
莉里からの情報によれば、色んな女の子を追い掛けるのはやめて1人の女の子に猛アタックしているらしい。
1人に絞った事によって、練習と恋愛を両立出来るのかも知れないな。
「それでちょっと疲れも出て来たんじゃない?」
「疲れ?それはちょっとあるかも」
「そうだよね!そうだよね!そうだと思って、アタシ良い物用意しました」
テンション高めに莉里が取り出したのは包みに入ったお弁当。
まさか、これを俺の為に作ったのか。
そういえば、前に料理の本を買っていたし。
もしそうだとすると相当嬉しい話だ。
「もしかしてこれって」
「そう!これ作って来たの」
「俺の為に?」
「他に誰がいるの?アタシが手料理食べさせてあげたいって思うのは、二郎だけに決まってるじゃん」
早く中身を確認したいけど、まだ朝なので我慢する。
昼休みの楽しみに取っておく事にした。
その方が食べる直前に新鮮なリアクションを取れる。
可愛らしい包みの中にある俺の為に作られた弁当。
これ程、喜ばしい響きがあるか。
女子の手作り料理は何回食べても良い。
舞葉で最後かと思っていたが、まさか2回目があるとは。
午前中の授業は赤点事件と莉里の弁当、その2つによって集中力が増していた。
日常のステータスがあるなら、学力がプラスで10は上がっているだろうな。
頭にスラスラと入って来る。
昼休みのチャイムが鳴ると莉里が俺の方を見てニヤニヤし始める。
お腹も丁度空いて来た頃合いなのに、莉里が何も言い出さないのでお預け状態だ。
我慢出来なくなった俺から声を掛ける。
「ご飯、食べに行かない?俺、楽しみにしてたんだけど」
「60点!どんな誘い方してくれるのかなって楽しみにしてたんだけど、中々良い誘い方だったじゃん!」
「60点は高い方なのかな?満点取るのに残り40点もあるんですけど」
「まぁ、男子高校生にしては高得点かなって。ちなみに60点中の30点は二郎だから上げた30点」
それってつまりは30点しか取れてないってことじゃないでしょうか。
全く高得点じゃないだろ。
てか、俺の発言ってだけで30点貰えるのは流石に甘過ぎだと思う。
場所をどこにするか悩んでいたが、結局人通りの多い中庭にたどり着いてしまった。
ここは人が多くてあまり好ましくないが、莉里の希望なので仕方ない。
それに周りは殆どカップルなので上手く紛れて俺達の事は目に入らない可能性もある。
適当に座れそうなベンチを探して、腰掛けるとようやく弁当を開封する時間がやって来た。
「これ、愛情込めて作ったから残さずに食べてね?」
女の子の手料理を残すはずがないだろ。
さて、蓋を開けるとそこには。
「これは、ガッツリ系の弁当だな」
「そうなの!やっぱり、運動部なら体力つけるべきでしょ?だから、肉を多めにしてみたの」
肉多めというか肉しかないだろ。
そぼろ、唐揚げ、生姜焼き、サイコロステーキにアスパラベーコン、極め付けは何回も頑張った痕跡のあるタコさんウィンナー。
よくこれだけ弁当の中に詰められたな。
それにこれだけ肉料理を入れようという思いにも感心する。
肉料理と一括りにまとめているが肉の種類が全く違う。
きっとわざわざ買い物をして、レシピを見ながら何時間も掛けて作ってくれたのだろう。
「めっちゃ美味い」
「本当!?良かったー!味はめっちゃ心配だったんだよね」
「そうなの?結構、1個1個の完成度も高いし、料理上手な気がするんだけど」
「うわぁー、その言葉130点」
満点に加えて、俺が発言したことによって30点付け加えられたらしい。
でも、嘘を付いている訳ではない。
米が無いと味が濃い気もするけど、米があれば無限に食べていられる。
まだ5月の半ばだというのに暑さもいきなり厳しくなって来た。
だから、こういうパワフルな肉料理で今の内から体力を付けておくのも悪く無い。
それに、これだけ栄養の良い食事をしたら身長も伸びるかも知れない。
「めっちゃ食べてね。なんなら、おかわりもあるから」
「それは自分のだよね?ちゃんと自分で食べないと。ただでさえ、細いんだから倒れちゃうよ」
莉里の体は細い。
病的な細さではないので健康面の心配は無いが、弁当を食べないとなると少し心配になる。
「ガチで惚れ直した。そんな嬉しいことも言ってくれるの〜!」
勢いで抱きついて来ようとする莉里。
いくらカップルが多いからってそんなことを堂々とすれば目立つだろ。
なんとか躱しながらも美味しい莉里の弁当を完食する。
このお礼もいつか必ずしないといけないな。
「このお礼はいらないからね」
「いや、でも。これだけしてもらって・・・」
「アタシは好きな人に尽くしたい人だから良いの!」
本当に毎度毎度莉里には叶わないな。
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