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winner or loser〜恋愛野球ゲームに転生したけど、モブだったので野球に集中します〜 リメイク前  作者: 風野唄


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第060話 赤点だけは避けろ

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

「あの、そこ間違ってますよ」

「だぁーー!!!本当だ!難し過ぎる」


珍しい光景を目の当たりにしていた。

勉強を教えるマネージャーと勉強を教えてもらう野球部。

側から見れば和気藹々とした楽しい空気かも知れないが、彼等は至って真面目に勉強に取り組んでいる。


今は自主時間。

怒られない程度にワイワイ談笑したり、スマホを触ったり過ごし方は十人十色だ。

そんな中で、俺達野球部は集まって勉強をしていた。

普段は部活や自主練に励む毎日なので、この時間は貴重だ。


御手洗(みたらい)は勉強が得意な方では無いらしく、頭の良い舞葉(まいは)に教えてもらっていた。

俺はそれなりに出来るくらいなので油断はせずに黙々と取り組む。

残りの3人は苦手な科目を教え合いながらという感じだ。

先に言っておくが、俺は1人の方が効率良いからそうしているのであって、やろうと思えば教えたりだって出来る。

ほ、本当だからな?


「あ、あの。ちょっと良いですか?どうしても私の教え方では分からないところがあるみたいで、御手洗くんによければ数学を教えてあげてくれませんか」

「数学か。それなら得意な方だし、全然良いよ」


お願いされたら仕方ないよな。

それに頭を抱えている御手洗の顔を見ていたら、助けたくなるのも頷ける。


「で、どこが分からないんだ御手洗」

「この二次関数とか言う奴なんだよ。これ難し過ぎて頭パンクしそうだぜ、俺」


げっ、二次関数か。

解けない事もないが、説明が難しいのは納得だ。


「えっと、まずは・・・」


10分ぐらいの力説をしてみると最初は苦戦しながらも何とか問題が解けるように。

しかし、しばらくすると似たような問題でも解けなくなった。

まぁ、仕方ないよな。

でも、これを繰り返す中で分かる時間が伸びる。

そして、少しずつ時間を伸ばすと最終的に記憶へ定着するだろう。

簡潔に言うと繰り返しやれば覚えるってことだ。


「かぁー、頭パンクしそう。ちょっと5分だけ休憩」

「アタシも休暇しよー。集中出来なくなって来たし」

「そんなこと言ってる暇があるのか?」

「なんで?それは余裕であるでしょ」

「今月は半ばに中間テストがあるんだぞ」


それを聞いた御手洗と莉里は顔を見合わせて絶望していた。

2人とも完全に忘れていたみたいだな。

部活に特化している学校とはいえ、赤点を取れば話は別。

補習を何よりも優先して受けなければならない。

これが部活の大事な日程に被っていたらと考えると恐ろしい。

だから、絶対に赤点を取ってはならない。


「まぁまぁ、御手洗くん。少しくらいは良いと思うよ。結局、このまま続けても効率が落ちるだけだし」

「それもそうだけど」

「神!竜田くん、マジで神!今後、足向けて寝れないや」

「良いぞ良いぞ!もっと言ってやれ竜田!」


莉里は赤点ギリギリのラインだったとしても、御手洗は完全にアウトだろうな。

それなのに、事実を棚に上げて竜田に援護を求める。

これには流石の橋渡も呆れた様子だ。


「あのな・・・まぁまぁ、それに僕も休みたいと思ってからみんなで少しだけでお話しようよ。自主の課題はとっくに終わってるんだしさ。そうだよね、大杉くん」


俺に話を振ってくる竜田。

何となく言いたい事は伝わっている。

竜田の目論見はみんなの事について詳しく知りたい、ただそれだけ。

前に八坂(やさか)先輩からアドバイスを貰った時に見たメモ帳には、投手だけでなく部員全員の情報が載っていた。


それを真似して、竜田も情報を集め出したのだろう。

そんな真似事よりも彼自身の武器を磨く方が良い気がするのは俺だけはない。

しかし、先輩の背中を追って挑戦するの止められない。

きっと竜田が考えた上で決めた事だから。


「それで何から何の話からする」

「そう言えば!あれだろあれ!日本人の鑑、生きる伝説の村本(むらもと)忠嗣(ただつぐ)が日本に帰国中だってよ!」


村本というのはメジャーリーグで非常に活躍している世界的スターの事だ。

それが日本に帰って来ているので今朝のニュースになっていた。

竜田の思っていた話題では無いが、無理矢理話を切ることは出来ないし、御手洗の興味のある分野が知れるという意味でもこのまま話を続けてもらう事に。

野球の話であれば、いざとなったら話題を切り替えやすいだろ。


「村本って172キロの豪速球投げるって噂の投手でしょ?最近、よくニュース出てるから流石のアタシでも顔覚えたよ」

「それだけすごい人ってことだ。投手の大杉なら特によく分かるよな」


ゲームの中で通常は出会うことすら出来ない様に作られたキャラだけど、普通に172キロはイカれている。

限度を知らないのかと思った。


「まぁ、今の若い子なら知らない訳ないよな」

「携帯触ってれば毎日と言っても過言ではない程目に入るからね」

「私でも流石に知ってるくらいです」

「でも、どこにいるんだろうな。会ったら1度で良いからサインとか頼めないかなー」

「無茶言うな。プライベートだから、偶々会ったとしてもそっとしておくべきだろ」


普通の人なら有名人と出会ったらサインが欲しくなる物だが、橋渡は違うらしい。

意外と真面目な性格なので驚きはしないけど。


「でもさ、どうしたらあそこまで野球が上手くなれるかは聞いてみたいよね」

「あれは才能の領域も多いんじゃない?どう頑張ってもあそこまでになるのは不可能でしょ」


莉里の言っている事は半分が正解で、半分が間違いだ。

どんな人間であろうと村本の様に172キロは理論上出せる。

ただ、そこまでに育てるのがほぼ不可能に近いだけ。

器はあるがそれを満たせない。

彼の生い立ちを1から100まで聞けば、どうやって最強になったのかを少しは理解出来るだろうけど、明かされる事はないだろう。


色々と話しているうちにチャイムがなった。

後、1週間もしない内にテストが始まる。

それまで赤点を取りそうな人のサポートはしないとな。

これで波王山(はおうざん)の試合に行けなくなるなんて笑い話にもならない。


「ねぇねぇ、大杉くん。さっきの会話で分かった事まとめてみたんだけど、こんな感じで良いのかな?」


八坂先輩との書き込みの差で不安になったのか俺に確認を求める竜田。

そんな事をしなくても思った様に書くのが1番なのに。

ペラっと1枚メモ帳をめくるとさっきの会話から得たとは思えない量の書き込みがされていた。

こんなたった一瞬の会話でここまで書き込んでいたらすぐにメモ帳が無くなるのではないだろうか。


そのぐらい竜田もやる気に満ち溢れているという証拠でもあった。

彼から直接想いを聞いた訳ではないが、それは伝わってくる。

そのまま返却して完璧だと言っておいた。


「本当!?良かったー!よーし、もっともっと頑張るぞ」

「張り切るのは良いけど、無理はしないように」

「うん!その辺は任せてよ」


口ではそういう竜田だが、最近は色々と張り切り過ぎている様な気もする。

まだ倒れそうになる場面は見ていないが、確実に疲れが溜まっているように思えた。

何か嫌な予感がして来た。

その予感が当たらない事を祈るばかりだ。

ご覧いただきありがとうございました。

よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!

あ、毎日21時投稿予定です。

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