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winner or loser〜恋愛野球ゲームに転生したけど、モブだったので野球に集中します〜 リメイク前  作者: 風野唄


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第058話 八坂はなんでも見通す

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

面白いと思っていただけたら評価やコメントお待ちしております!

「良いピッチングだね!球速も改善されて来てるし、このまま行けば相当強くなれるよ」


何回か投げ込みを行った後に竜田(たつた)からのお褒めの言葉をいただいた。

竜田は色んな人と投げ込みやバッティング練習をしているので、中々時間が作れない。

そんな中でも偶々今日は一緒に練習が出来たのだ。


「そっちはどうなの?って言っても、竜田に課題らしい課題も見当たらないけど」

「そんな事ないよ。僕もやらないといけないことだらけだよ」


そんなのは謙遜にしか聞こえない。

竜田は攻守ともに優れた選手で、チームとしての雰囲気作りも出来ている。

強いて言うなら・・・やっぱり思い付かないな。


しかし、この感じは本気で思っているらしい。

もしも、何かに悩んでいるだとしたら解決してあげたいものだ。

普段からにはお世話になっているからな。


それは部活の話だけではない。

学校などでもお世話になりっぱなしだ。

竜田は性格上、周りをよく見ている。

だから、宿題を忘れた奴がいたら助け、授業で分からない事があったら教えてあげる。

それくらい献身的な男。


「何か困った事があれば言ってくれよ。力になれるかは分からないけど、全力で協力するからさ」

「じゃあ、少しだけ僕の悩み聴いて欲しいかな」


いつもは自分の悩みは話さない竜田が珍しく口を開いた。

変わりたいと思う気持ちが芽生えているのかも知れない。


「僕、あまり投手陣の力を最大限発揮させられていない気がするんだ」


相談内容は竜田から出てくるとは思っていなかった内容だった。

彼は投手(ピッチャー)を生かす捕手(キャッチャー)

彼の悩みは投手として感じた事はない。

寧ろ、いつもお世話になっています。


「僕がリードする時に、もっとみんなの力を最大限引き出せればって思う時があるんだ。3年捕手の八坂(やさか)先輩とは大違いだよ」

「八坂先輩は確かにな」


八坂先輩は竜田が登場するまで正捕手として環成東(たまなりひがし)をまとめ上げていた。

彼は特別なスキルがある訳でもないし、ステータスが異常に高い訳でもない。

それなのに正捕手としての座を守っていたのは、投手への理解度の高さ。

これに尽きる。


あくまで例えだが、好きな物を聞かれたら3秒もしない内に答えてしまう。

それぐらいは良く投手の事を見ている。

今後は竜田が正捕手として動くことになるだろうが、それでも彼は俺と駒場(こまば)の事を調べていた。

偶に俺も質問攻めにあったりする。


「それならさ、八坂先輩に直接聞きに行こうよ」

「ダメだよ。先輩の邪魔になるし、そもそも自分の武器を他人に教える訳ないよ」

「ダメならその後考えよう」


嫌々と首を横に振る竜田を無理矢理にでも引っ張って八坂先輩を探した。

多分、今は獅子頭(ししがしら)先輩とピッチング練習をしているだろうな。


その後も探し回ること5分。

ようやく八坂先輩を見つけた。

それと同時に嫌だと言っていた竜田も背筋を伸ばす。

先輩の前では失礼な態度を取らないよう気を付けているんだな。


「お疲れ様です」

「おつかれ。どうした竜田、大杉」

「少しだけ相談したいんですけど、お時間よろしいですか?」

「獅子頭、2人が相談したいことがあるみたいなんだ。ちょっとだけ時間貰っても良いかな?」


コクリと頷いた獅子頭先輩を見てから、俺達の方へと向き直す。


「それで相談と言うのは?この感じは大杉が相談したいというより竜田の相談だよね」

「流石は八坂先輩ですね。みんなの事をよく理解している」

「あははは、褒めても何も出てこないぞ」


後輩とのコミュニケーションも完璧だ。

頼れる先輩という感じがする。

それでも竜田は少し躊躇っていた。

今後の正捕手はきっと竜田だ。

それは本人と八坂先輩も理解している。

だから、余計に気まずいのだと思う。


「お前の考えてることはお見通しだ竜田。俺に遠慮して相談するのを躊躇ってるんだろ」

「うっ、そうです」

「その話は前にも一度したよな」

「はい。ですが!」

「ですがは無しだ。悔しいけど、俺は竜田、お前の方が捕手としての才能があると思った。俺がどれだけ手を伸ばしても届かない物を持っていると思った。だから、俺はお前が正捕手になっても良いと思う。そりゃー、悔しいかって聞かれたら悔しいんだけどな」


八坂先輩の優しく竜田に語った。

彼の思いの全てを聞かされても竜田はまだ不安そうだ。


「才能がある者にはそれなりの責任がある。俺の分まで想いを背負うのは辛いかも知れないが、それがスタメンに選ばれる者の責任だ。安心しろ、竜田。辛くなったら俺達が支えてやるから」

「八坂先輩・・・」


心に響いた竜田は泣きそうな顔をしていた。

俺も選ばれなかった他の1年を代表して試合に出ているという事を再認識しなければな。


「僕も先輩の様に投手1人1人の最大限を発揮させられる様な捕手になりたいんです」

「俺みたいにか・・。俺は俺自身が投手達の100%を出せているとは思えない。悪いがそのアドバイスだけは出来そうにないな」


悲しい顔をしながらどこかを眺める八坂先輩。

彼にとっての武器は投手陣の理解度を深めて、最大限活かす方法。

しかし、それで勝てなかったからこそ正捕手の座を奪われた。

八坂先輩自身が1番理解しているはず。


「なんてな。ちょっとだけ意地悪しただけだ。投手を活かす方法だったよな」


冗談ぽく言っているけど、本心はどこにあるのだろうか。

綺麗な言葉を並べていた八坂先輩ももしかすると。

いや、そんな事はないと信じたい。


「一応、参考になるか分からないけど、俺がみんなの情報をまとめたメモ見るか?」

「見たいです」

「ちょっと待ってな」


そういうと少し離れた所にタオルと一緒においてあったメモ帳を持ってきた。

手渡されたメモをペラっと1枚めくると、そこには見開き1ページ分の選手情報が乗っていた。


これには俺も感動する。

この量は攻略本にも載っていないレベルだ。

ページをめくると俺達の事も書いてある。

ただし、2・3年と比べると情報量が少ないのは、まだ出会ってから日が浅いからだろう。

それを考慮してもこれはすごいな。

彼が地道に集めたのが伝わって来る。


「こ、これ見ても良いんですか?」

「ははは!見てくれ見てくれ。減るもんでも無いからな。これでお前の役に立つならいくらでも」

「ありがとうございます」

「それともう1つ。これだけは絶対に忘れるな。お前は投手を活かす立場ではあるが、それはお前自身を殺すという意味では無い。9人で1つだ。それを覚えておけば、後はどうとでもなる」


八坂先輩は獅子頭先輩との練習に戻っていく。

竜田はその後もブツブツと独り言を言いながら、メモ帳を見ていた。

今時、携帯で写真を撮れば何度も見返せるが、それは無粋な話か。


ここまで来れば、後は俺がいる必要も無い。


「俺、練習に戻るから」

「うん、ありがとう」


これは駄目だな。

全く以って話が入っていない。

でも、竜田が成長するきっかけになるならそれで良いか。

少しだけ良いことした俺は、清々しい気持ちで練習を始めた。

ご覧いただきありがとうございました。

よければ評価、ブックマーク、いいねお願いいたします。めっちゃモチベーションに繋がりますのでどうか、どうか!!!

あ、毎日21時投稿予定です。

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