第017話 駒場の弱点
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俺達は作戦を立てる必要があった。
監督に相談して3分間だけ時間を貰う。
守備と攻撃の入れ替わりのタイミングで1度全員を集めて話し合う事に。
このタイミングで話し合いかと思う人もいるかも知れないが、このタイミングだからこそ意味のある話し合いが出来る。
連携して掴んだ1点と失点後に見せたファインプレーの数々は、確実に俺達の心を1つにしている。
会って数十分ぐらいしか顔を合わせていない仲だけど、相手よりはチーム力は強い。
「どうするんだよ。次俺から始まるけど、ヒット打てる気がしねー」
最初とは打って変わって自信を失っている4番の男。
次が自分の番という事もあり、先陣を切って発言する。
でも、問い掛けが抽象的で話が進まない。
どうすれば良いかが分かれば、誰も苦労しないだろう。
「落ち着いてよ。大丈夫、彼も手強いけど万能じゃ無い。どこか攻略の糸口があるはずだよ。打順は1周したんだし、みんなで意見を出し合えば何か掴めるよ」
ここはチームを支える1本の柱として竜田が声を掛かる。
その言葉でみんな考えて見るけれど、球の速さが頭に残り過ぎて他の情報が出てこない。
少ない時間しかないのに沈黙が生まれる。
「世話の焼ける奴らだな。あれだけ見てて気付かなかったのか?」
少し嫌味たらしく発言する橋渡。
だけど、コイツは実力がかなりある。
それにあれだけ粘り強い打撃を見せていたのは何かに気付いたからかも知れない。
「駒場は異常なまでにボールゾーンに投げる事を嫌う。余程の理由があるか、制球が乱れる以外では基本的にストライクゾーンだけを狙ってくる」
「おぉー!それが分かるだけでも有難いね!ボールゾーンに投げられる可能性は一旦捨てて、全球ストライクゾーンを狙ってくると思っていれば良いからさ」
性格上、敢えてボール球を投げるって事が出来ないらしい。
言われてみれば、奪三振率に惑わされて気付かなかったけど、ストライクゾーンだけを狙っている気がする。
これに気付いて心理戦の要素が減るのは打率へと繋がる。
「俺からも1つ良いか?」
今度は御手洗が手を挙げて発言する。
「アイツ、殆どのアウトをストレートで締めている。だから、2球で追い込まれたらとりあえずストレートを張ってみるのも手だと思うぜ」
ここで監督が3分経ったぞと合図してくる。
まだ考察の余地はあるが十分過ぎる情報が出た。
後は球速に目が慣れることを信じて打つのみ。
少し自信を取り戻した4番打者が打席へと向かう。
「来いよ!」
バットを短く持つ4番。
少しは考えたみたいだな。
長打の可能性は1度捨て、バットに当ててヒットを打つ事に集中する作戦か。
駒場は俺達がどんな話をしていたか勿論知らない。
だけど、少しは自分の球が対策されていると分かっているはずだ。
それでも自分の癖というのは自分で見つけ難いものがある。
投げられた1球は俺達が話し合った様にストライクゾーンに入っているフォーク。
2球目、これもストライクゾーンに投げれているストレート。
橋渡の言う事は本当だった。
1度打席から離れて俺達の方をチラッと見る。
声に出してしまうと修正されてしまう可能性があるので、黙って頷き返す。
呼吸を整え、打席に戻る4番打者。
橋渡と御手洗の言う事が正しければ、ストライクゾーンのストレート。
後は、どこの箇所を狙ってくるかだけに意識を研ぎ澄ませていれば良い。
3球目も相変わらずに鋭いノビのあるストレート。
だけど、4番打者は動じずにバットを振った。
中堅手方向に向かって転がる球。
遊撃手と二塁手はその球に追いつかない。
その時点でセーフが確定した。
悔しそうな顔をする駒場。
彼も人間だったのだと知れて良かった。
もう怖く無い。
この回で3〜4点は追加得点をいただいて、試合に勝とう。
続く5番打者の竜田も、安心感のあるバッティングと意外な駒場の弱点によって、シングルヒットを打った。
ノーアウト、一・二塁。
ここに来て駒場が大ピンチになった。
そして、このタイミングで俺の打順が回って来る。
「悪いけど、俺も打って点をいただくよ」
「それは是非ともやめてもらいたいな」
「出来ない相談だ」
1球目はスライダー。
きちんとストライクゾーンギリギリに入っている。
見逃してしまったけれど、問題はない。
追い込まれてからが本当の勝負だ。
続いてフォークが投げ込まれるが、これも反応すらしない。
最後の3球目。
やはり投げられたのはストレート。
俺はこれを見逃すはずも無く、思い切ってスイングする。
長打を狙ったつもりだったけど、内野を抜けていくシングルヒット止まり。
だけど、ベンチの仲間は大興奮だった。
「満塁だぞ!絶対に点取れよ!」
「橋渡ー!お前なら打てんぞー」
下位打線は橋渡、御手洗と続く。
そうなれば、2〜3点は確実。
ノーアウトな事も考えると5〜6点は一気に得点したい所だ。
「タァーイム!」
ここは相手チームが思わずタイムを掛けた。
内野陣が集まって何やら話をしている。
嫌なタイミングでのタイムだ。
こっちの流れが切れるし、相手も新たに策を講じる。
先程までの作戦が通用しなくなると、1点取れるかどうかも不安になる。
主に捕手が何かを伝えている様だが、一塁からでは勿論話している内容までは聞こえない。
「嫌な予感がしてならないな」
円陣を組んで気合いを入れた後に、それぞれの守備位置に戻る。
橋渡も嫌な空気は感じ取っているだろう。
しかし、現状はノーアウト満塁。
犠牲フライだけでも点が取れる場面だ。
駒場が気合いを入れて投げる1球目は高めの際どい球。
これに手を出した橋渡だったが、ファールゾーンに球が飛んでいく。
ここまでは、今までと変わっていない。
そう考えると続けて、ストライクカウントを稼いで来るはずだ。
2球目、低めの外角を狙ったスライダー。
スライダーを狙っていたのか橋渡が渾身のスイングを見せる。
しかし、結果は空振りだった。
ボールが1個分ストライクから外に出ていたので、バットの先が届かなかった。
ここに来て、情報とは違う配球。
ベンチ側も混乱の渦に呑まれる。
しかし、一塁から見ていれば何故駒場がボールを投げる様になったのかは分かる。
あの捕手がリードする様に切り替わったからだ。
今までは駒場の投げたい場所に投げさせて、それを捕るというシステムだったが、今では捕手が構えた所にビシッと投げるシステムに変わった。
こっちが駒場の弱点に気付いたのがバレたか。
たった3人が進塁しただけで対策されてしまうとは。
追い込まれた3球目、高めを狙って放たれた1球に手を出す。
鳴り響くのは金属バットの爽快な打撃音では無く、絶望を呼ぶミットの音。
やはり決め球をストレートに絞らず、変化球も多様してくる様だ。
まだ、1アウト。然れど、1アウト。
たった1人の捕手の力で、駒場は完璧な存在へと成った。
残り2アウトで点を取れるかは怪しいと言わざるを得なかった。
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