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第102話 終幕

地区予選が始まった。

1回戦、2回戦は、名も知らないような高校が相手だった。

しかし、俺達は一切気を抜く事なく快勝。

まさに快進撃だった。

ただ、それに負けていない活躍を見せるチームもいくつかある。


波王山(はおうざん)水炎寺(すいえんじ)

この2校は言うまでもない。

決勝で当たるならこの2校のどちらかになるだろうな。


しかし、俺達の想定していなかった出来事が起こる。

準決勝で俺達と戦うことになったチームが強かった。


「俺の1失点がここで効いてくるとは」


7回の表、俺と交代にする際に弱音を吐く駒場。

まだ負けたと決まった訳でもないのに、そんな弱音を吐くなんてらしくない。

地区予選というプレッシャーに押し潰されそうなのか?

そうだとしたら甲子園のエースを語るのは早いだろ。


「安心しろよ、駒場。ここからは俺が投げる。1点もやりはしねーよ」

「悔しいけど、頼り甲斐があるぜお前は」


マウンドに上がると声援が聞こえる。

この瞬間は他の何にも変え難い瞬間だ。

ここから絶対に逆転する。

そんな気持ちに強くなれる。




「ゲームセット!」


結果は言いたくなかった。

負けたという事実を認識したくなかったからだ。

確かに駒場よりも強くなった。

だけど、甲子園に行けなかったら意味がない。

来年もある、再来年もある。

そんな考え方もあるかも知れないが、このチームで甲子園へ行けたのは今年だけだ。


みんなが涙している。

3年の先輩達も普段は見せない涙を見せる。

悔しいという思いしかない。


「お前ら泣くな!試合をしていれば今日のような悔しい思いをすることもある!だけど、下を向いて立ち止まるな!そういう時が1番踏ん張る時だろ!」


いつもは冷静なキャプテンの熱い言葉が余計に心に沁みる。

男が泣くなと言われるかも知れないが、止まらないのだから仕方ない。


───


「さぁー、ここでヒーローインタビューに移りましょう!今回の日本シリーズ、最終試合のヒーローインタビューは駒場(こまば)隼人(はやと)さんです!」

「こんにちは」

「今日の試合、入団2年目で初完封達成という素晴らしい結果を残しました!一言頂いてもよろしいですか?」

「あー、昨日俺の好敵手(ライバル)が遠い海の向こうで完全試合を達成したんですよ。それと比べたら大した事はないです」

「ライバルというのは高校時代のチームメイト、大杉(おおすぎ)二郎(じろう)さんの事ですよね」

「ええそうです。彼にはいつも俺の先を歩かれていて遂にはメジャーで完全試合なんてやるんですからお手上げですよ」

「ふふっ、その割にとても嬉しそうに話してますよ」

「えっ、あぁ!そうですね!あはは、これ、俺のヒーローインタビューでした!みなさん、今後も未熟な俺の応援よろしくお願いします!」



〜アメリカ合衆国〜


「ニュース見た?隼人が完封試合だってさ」

「アイツも頑張ってるみたいだな。これは完全試合の記録だけでは満足出来ないな」

「何言ってんの。メジャー挑戦からたった2年で有名人。今やアメリカでも知らない人はいないくらいの二郎が隼人に負ける訳ないじゃん」

「でも、あいつは必ずここまで来る。そう信じてる」

「なーんか焼けちゃうなー」

「そんなに怒るなよ。勿論、1番は涼花(すずか)だって」


高校卒業後、すぐにメジャーへと挑戦した俺はかなり日本で賛否の声を浴びていた。

普通は日本から始めるだろとか生意気だとか。

でも、それを黙らせるくらいの実力を見せつけて周囲の声を変えた。

今では人気者ってのは言い過ぎだけど、かなりの結果は残して周りからもそれなりに認知されている。


まさか、1年目の夏が終わった後もこの人生が続くとは思っていなかったので、驚いてはいるけどそれなりに楽しんでいる。

可愛い彼女もいるしな。

心残りが少しあるとしたらもう1度やり直して1年の夏甲子園を優勝してみたかった。

その世界線はきっと俺には味わえる事はないんだろうけど。


新聞を閉じて、朝食を食べ終え、出発の準備を済ませる。

今日もまた野球に捧げる1日を送るのだった。

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― 新着の感想 ―
一気に駆け上がり完結お疲れ様でした 作者さんのモチベーションを下げないために感想欄にネガティブな事を書き込まないで読むだけに静観してましたけど、色々惜しかった作品と思いました 野球の知識はそこまでマニ…
最後一気に駆け抜けた...
色々とんだが、打ち切りエンドでもよく完結させてくれた
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