第100話 紅白戦と熱い想い
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まずは俺達が守備で始まる。
マウンドに立って、俺は深く息を吸った。
「よし、やるか」
気合いを入れ終わった。
ここからはどれだけ抑えられるかだ。
相手の1番打者は竜田から始まる。
でも、そんな事は関係ない。
相手が仲の良い人物であっても容赦なく投げるだけ。
「プレイボール!」
監督からプレイボールの合図が。
この瞬間が待ち遠しくてうずうずしていた。
1球目はメテオフォークを要求してくる八坂先輩。
八坂先輩のリードは竜田とは全く異なるのでこの機会にバッテリーを組めて良かった。
調子良く、空振りさせた1球目。
ここからどんどん俺のギアは上がっていく。
その後、竜田を3球で抑えて、2番、3番もテンポ良くアウトに。
これで綺麗にスリーアウトだ。
このスリーアウトは、自分の実力が伸びて来たと実感出来る。
そして、何より気持ち良い。
「お前を選んで正解だった。次の回もその調子で頼む」
ベンチに戻る時、時透先輩からお褒めの言葉を貰った。
天狗になると足元を掬われると分かっているのに、どうしても得意気になってしまいそうだ。
そんな時はアイツのピッチングを見て心を燃やす。
「よしゃー!ここでアレ解禁するか!」
気合いは見るからに十分な駒場がマウンドへ上がる。
どうやって俺達を驚かせてくれるのか楽しみだ。
こちらの1番は氷道先輩から。
ここでヒットを打って欲しいが、せめて相手の情報を出来る限り引き出してくれたら十分だ。
1球目を見た瞬間に誰もがその球速に驚かされる。
明らかに球速が上がっているのだ。
短期間の間に何があったのか気になるレベルである。
しかし、驚くのはまだ早かったみたいだ。
次に投げられた衝撃の球。
「どうですか!俺の"サンシャインスカイ"は!」
あれは!?
ただの真っ直ぐなストレートじゃない。
異常にホップする魔球。
しかも、俺と同様にちゃっかり名前まで付けてるし。
いや、今は名前はどうでも良い。
問題はあの球をどうやって対策するかだ。
投げ方を見ただけでは普通のストレートと見分けが付かない。
そうなると打者の手元に届いた一瞬で判断するしかない。
かなり難しいな。
今の駒場の球速は155キロぐらいだろう。
その速さの球を瞬時に見分けるのは厳しい。
こっちの不安なんてお構い無しに、三者凡退で気付けば交代になっていた。
知らない間に1段階どころか2、3も飛ばして成長している。
これが主人公補正だとするならずるいと思ってしまうのが本音だ。
「あんなのありかよ」
御手洗が俺の隣でぼやいた。
「あれが駒場という男だよ」
「お前もすごい奴とポジション争いしてるんだな」
「この苦労を分かってくれる?」
「今、分かった」
だけど、今はぐちぐちと不満を漏らしている時間はない。
駒場の強さには驚かされたが気持ちはすぐに切り替えないとピッチングに支障をきたす。
相手の4番は後藤先輩だ。
正直、相手にはしたくない。
まさか、自分がスキルを付けさせた事によってこんな事になるとは思ってもいなかった。
当たれば外野には確実に飛ぶだろう。
なので、外野を少し下がらせた。
投げると後藤先輩はいきなり当てて来た。
遊撃手と二塁手の間を割って、抜けて行く良い当たり。
2回にしていきなりヒットを許してしまうとはな。
これで気を落としてはいけないと分かっていても、走者を背中に背負うプレッシャーを肌で感じる。
後藤先輩は足が速くないから大丈夫だと何度も言い聞かせて、5番打者へ向き合う。
5番打者はいつもと同じ万常先輩だ。
この後藤先輩から万常先輩に繋ぐ打順は味方だと心強いが、敵だとこれ程までに恐ろしいのか。
1球目は隠し球のスライダー。
万常先輩もこれは様子見。
2球目を迷っている様子の八坂先輩。
俺も分かってはいる。
万常先輩は隙が少ない。
中途半端な配球ではすぐに打たれてしまうだろう。
2球目は迷った末にストレート。
内角低めに投げ込む。
俺の制球にしてはかなり際どいコースに投げられた。
結果はストライク。
万常先輩相手に良くやっている。
3球目、メテオフォール。
これを打ち返して来た。
敢えて難しい球を張っていたのか。
って、それよりも万常先輩の打った球が真っ直ぐこちらへと飛んでくる。
俺はそれに何とか反応して受け止めた。
一歩間違えれば怪我をしていた可能性も。
昨日の練習メニューにノックが入っていて良かった。
心臓の鼓動が早まったのを感じる。
昨日、顔面に球が直撃したのにそれとは非にならないくらい怖かった。
勿論、万常先輩もわざとではないのでちゃんと謝罪をしている。
いや、寧ろこれで良かった。
結果的にはアウトカウントを増やせたのだから。
そして、6番打者、7番打者と続けてアウトにして無失点で交代。
その後も両者1点も譲らない展開で試合は終盤まで進む。
最終的な結果は2対1で万常先輩チームの勝利だった。
敗因は打線の爆発力が無かった事だと思う。
相手はどの打順からでも点を取るのが難しくない打線だった。
対してこちらは守りが堅いチーム。
点を取らないと勝てない試合において、竜田、後藤先輩、堀枝を取られたのは痛手だったか。
誰か1人はこちらにいて欲しかった。
俺1人ではスキルを上手く使っても限界がある。
「さて、チーム内で試合をしてみてどうだった。課題はそれぞれ山程あったと思う。だけど、それと同時に感じたんじゃないか?コイツ等が味方で本当に心強いと。いや、お前達が思わなくても俺は感じた」
地区予選まで期間は短い。
監督は俺達の士気を上げに来た様だ。
だけど、その必要はない。
今年甲子園で笑うのは、俺達環成東だ。
そんな事はここの誰もが知っている。
紅白戦終わりに1時間の休憩を挟む事に。
ここでしっかり休んで残りの練習を乗り切る為だ。
「クソッ!まただ!」
施設内で休もうとしていると1人で悔しそうにしている糸式先輩を見つけた。
今回の試合、俺は無失点だったが、糸式先輩は2失点。
その結果負けた。
スポーツは結果が全てという残酷なものである。
過程を美談として語れるのも、勝ちという結果があってこそだ。
最近、糸式先輩が不調なのは知っている。
だけど、もう残された時間は短い。
地区予選が始まるまでにその不調を改善しないと監督も起用しないだろう。
精神論かそもそものステータスの問題か。
将又、その両方か。
それは簡単に知ることが出来る。
だけど、俺から動く事はしない。
そうすれば完全に勘付かれるし、そもそも糸式先輩がそんな方法で強くなる事を望む訳がない。
だから、影ながら応援する。
この合宿の最終日、他校のチームと練習試合を行う。
その時が糸式先輩の分かれ目だ。
無失点とは言わない。
だけど、失点は1点以下に抑えたい。
それ以上はきっと負の連鎖へと繋がる。
「絶対に俺がエースになるんだよ。絶対に」
目の奥に見える火が燃え尽きていないことだけが唯一の救いだ。
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