第099話 勝つ為に選んだ
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いつもとは違う部屋での起床。
新鮮な空気を吸う為に部屋を出た。
少し霧が掛かっているが、それも朝を感じさせてくれて嫌いじゃない。
まだ誰も起きていないからか静かな世界にポツンと1人でいる。
昨日の夜はあんなに賑やかだったのに。
みんなが起きてくるまでに恐らく時間がある。
折角早く起きたのでみんなを待つ間にランニングも兼ねて、その辺りをうろつくことにした。
施設の外周を軽く1周しているともう1人走っている人がいる事に気付く。
こんな早くから誰だろうと思ったら、万常先輩だった。
キャプテンとはあまり話す機会がないので正直気まずい。
なので、このまま来た道を戻ってしまおう。
体を後ろに向けて走り出そうとした時、声を掛けられてしまった。
流石に俺に声を掛けているよなこの状況は。
そうなると無視する訳にもいかないし、渋々キャプテンの隣まで行く。
「おはようございます、万常先輩」
「朝からランニングとは感心だな。昨日も遅くまで自主練をしていたみたいなのに」
「えぇ、俺は練習をすることぐらいしか取り柄がないですから」
「冗談を言うな。みんなお前には期待してる」
期待か。
これがお世辞でなければ喜んで飛び跳ねるのだけど、十中八九お世辞なので素直には受け取れない。
とは言え、相手が褒めてくれたので、こちらも褒め返す事にしておく。
「それ言うなら万常先輩の方ですよ。みんないつも頼りにさせてもらってるんですから」
「そうか。そうだと嬉しいんだけどな」
そうやってぎこちない会話を続けてるとスタート地点に戻って来た。
「この辺にしてみんなの下は戻るか」
「はい、そうですね」
「大杉、お前と話せて良かった。ありがとう」
「え?お礼を言われるような事はしてませんよ。寧ろ、俺の方が貴重な時間をいただきましたし」
「人からの感謝は素直に貰っておけ」
背中越しにそう言って去っていった。
時刻は6時。
ここから朝練が始まる。
俺は先に起きて軽くアップをしていたのでいつでも体は動かせるが、他の人はそうでもないようだ。
まだ顔が半分寝ているような奴らばかり。
「朝練っていつ経験してもしんどいよな」
目を擦りながら御手洗が弱音を吐く。
普段ならそんな事は言わないだろうけど、1日目からかなり飛ばしてしまっていたので言うのも仕方ない。
流石に今日は練習が終わった後、ゆっくり休もう。
朝練はダッシュに始まり、ノックやバッティングなど一般的なメニューをこなしていく。
いきなり20キロとか30キロ走らされないで良かった。
絶対倒れている自信がある。
「やっと身体が起きて来たって感じするぜ」
「もう朝練終わるけどな」
「今日の昼からの練習メニュー知ってる人いるか?」
「僕達には何も知らされていないけど、先輩達なら知ってるのかな?」
仮に知っていても教えてくれるかどうかは別だ。
いきなり言われた時の反応を見て、楽しみたいはずだからな。
とりあえず朝ごはんを食べる為に食堂へと移動する。
食堂に入るとその瞬間から空腹のお腹を刺激する美味しそうな匂いがした。
堪らなくなった俺達は急いで食事を受け取り、席に着く。
そして、先輩達が着席したのを見て、食べ始める。
朝のメニューはスクランブルエッグとハンバーグ、そしてウィンナー。
ご飯と味噌汁も当たり前の様についている。
朝からこの量の肉なんて食べれないと思うかも知れないが、この匂いを嗅いでいたらそんな事も言ってられない。
早く食べたくて仕方なくなる。
だけど、ここは一旦落ち着いて、一口目は味噌汁を。
暖かさと味噌の優しさが体全体に染み渡る。
これが俺の食欲に火をつけた。
バクバクとお米を掻き込み、ハンバーグを貪る。
そして、気付けばぺろっと完食してしまっていた。
食器を戻すと俺は一足先に球場へ行った。
何せ今から始まるのは俺の楽しみにしていた練習。
部内紅白戦だ。
これの為に肩を温めないといけない。
投手は4人。
2チームに分かれたら、絶対に俺の登板機会はある。
そう考えると居ても立っても居られなくなってしまった。
「大杉が1番乗りか、随分やる気なんだな」
「それはお互い様だろ?駒場」
俺の次に来たのは駒場だった。
考える事はどうやら同じみたいだ。
横に立ってアップを始める。
何も言葉を発さないままアップをするのも気まずいので話し掛けてみることに。
「部活内で試合するのは入学式以来だね」
「懐かしい思い出だな」
「今日の紅白戦、もしかしたら同じチームかもね」
「その可能性もあるけど、俺としてはお前とは別のチームで合ってほしい」
「おいおい、俺も随分と嫌われたみたいだ」
「ちがっ!そういう意味じゃねーよ!」
「知ってるって。俺もお前とは競い合いたい」
アップが終えると全員が集合した。
そして、監督がやって来る。
「事前に説明している様に今日は紅白戦を行う。これは味方の実力を知ると共に、自分の実力も再確認出来る場だ。全力を尽くせ」
みんなそんな事は分かっている。
だから、言われなくても全力で勝ちに行くつもりだ。
事前にある程度の説明を受けて、最後に怪我のない様にと注意されて監督からの話は終わる。
さて、ここからが俺達の気になる所だ。
チーム分けの時間。
キャプテンの万常先輩と副キャプテンの時透先輩がドラフト式でチームメンバーを選んでいく。
この方式を採用しているのは、自分の実力がどう評価されているか一目瞭然だからだ。
じゃんけんで勝った時透先輩から選ぶ事に。
1人目というのはみんなが注目している。
「1年投手・大杉」
「はい!」
少し前なら驚いていた。
だけど、今は少しだけその可能性があるのではないかと思っていた。
だから、出来る限りの返事をして前へ出る。
次は万常先輩だ。
みんなは誰が選ばれるのかと気になっている様だが、俺には誰が選ばれるか分かる。
「1年投手・駒場」
「はいッ!」
残る3人の内、糸式先輩は波王山戦で不調だった。
獅子頭先輩は破格の性能をしているが球数制限付き。
それなら駒場が選ばれるのは必然か。
その後もテンポ良く選ばれて行くチーム。
最終的なチームはかなりバランスが良い物になった。
やっぱり駒場とは敵か。
それぞれ10分間のチームミーティングが行われてから試合開始だ。
ここでは大まかな作戦を伝える。
「俺は勝てると思ってここにいるメンバーを選んだ。俺の期待に応えてくれ。いくぞー!!!」
「「「おぉーーー!!!」」」
気合いの入る掛け声でこちらの士気は万全だ。
「時透先輩、1つ良いですか?1番最初に選ぶのは元から俺のつもりでしたか?」
「お前にそれを言ってどうなる」
「ただ気になるんですよ」
「いや、駒場とどちらを取るか迷った。でも、最後に選んだのは大杉だ。それはお前となら勝てる未来が見えたからだ」
「時透先輩がそう言うなら勝てますね、きっと」
整列する。
そして、綺麗な姿勢で挨拶を交わす。
こうして、時透チーム対万常チームの戦いがこうして幕を開けた。
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