崩壊
笹原さん、じゃなくてももとパフェを食べた後はまだ時間があったのでゲームセンターに行こうということになった。
そうしてぼくがちは会計を済ませて店を出た。
流石にフリとはいえ彼女にお金を出させるのはいかがなものかと思ったので僕が奢ることにした。
財布の中身が軽くなっていくのを見て僕は少し悲しくなった。
しかもこの後ゲームセンターに行くし、終わったわこれ。
そんなことを考えていると
「ねえ君、今少し時間あるかな」
と、ナンパのようなことを言われた。しかし相手は男なのでナンパではないだろう、宗教の勧誘とかかな。
とりあえず何か返さないと
「なんですか?」
僕は男にそう尋ねる。すると
「ちょっとこっちにきてくれるかな?」
といい男は僕の手を引いてくる。
「ちょっと急になんですか」
僕が振り解けずにいるとももが引き留めてくれた。
男は少し困ったようなそぶりを見せて僕に一言耳うちした。
その言葉に僕は戸惑いを隠せず後ろに後ずさるのだった。
その後男はどこかへと立ち去っていった。一体何だったのだろうか。
「大丈夫?」
ももはそう僕に声をかける。
「大丈夫だよ、もも」
僕は彼女に安否を伝え、その後見せたいものがあると言われたのでゲームセンターへは向かわず彼女の家へと向かうのだった。
もう少し、もう少しなんだ。あとほんのちょっとでゆうくんは私のものになる。
この10年間ずっと彼のことを思い続けてきた。ここまで来るのはとても長かった。
ゆうくんを手に入れるためなら私はどんなことでもする。昔私は固く誓った。
だから私の心は高揚していた。ゆうくんが私の家に来てくれるという事実に。
そして私はその扉に手をかけ、彼を部屋へと招き入れた。
少し歩いて僕は彼女、ももの家へとお邪魔した。
ももの家の中はとても綺麗でまるでモデルルームのようだった。
「とても綺麗な部屋だね」
「そう?嬉しいな、私ミニマリストだから家具は少ないんだけどね」
そう言いももは注いだ紅茶を僕の前に出す。可愛らしい花柄のついたカップだった。
紅茶を飲んだ僕は少し前から思っていた疑問を聞いてみた。
「ところで何を見せたかったの」
「ああ、それはねまだ秘密かな。それより何かして遊ばない?まあうちで遊べるものといったらトランプぐらいだと思うけど」
このあと用事などもなかったので僕は二つ返事で了承した。
ももとは今日少ししかいなかったが彼女がどんな子なのかわかった気がした。パフェを食べている時も今遊んでいる時も彼女はとても楽しそうな笑みを浮かべていた。そんな彼女に惹かれている僕がいた。
「もも、あのさ…」
そう言いかけたあと僕は目の前が暗くなっていくような感覚を覚えた。
「なんか急に眠く…」
「大丈夫だよ、安心して寝ていいからね」
「そう、ありが…と…う…」
寝ぼけた視界に映った彼女を僕はどこかでみたような感覚を覚えた。その後僕は眠気に耐えられず、そのまぶたを閉じた。
視界の端に映った窓の景色は雷雨になっていたので少し早めに帰っておけば良かったと思うのだった。