恋の花
月曜日、坂口先生から知らせがあった。
白石さんが警察に捕まったと。
クラスからはどよめきがあり、それと同時に気まずい雰囲気が漂っていた。
最初こそ白石さんの話題がほとんどだったが時が経つにつれその話が耳に入ることは少なくなってきた。
僕は白石さんの話を聞いた時白石さんが目の前から突然消えてしまった悲しさと白石さんが人殺しという事実で頭がゴチャゴチャになっていた。
そしてなぜかこれが初めてではないような感じがしていた。
そんなことないのに。
「寂しいね」
笹原さんは僕に話しかけてきた。僕のことを気遣ってくれているのだろう。
「そうだな」
こんな言葉しか僕は返せなかった、気づいてないふりをしていたが僕の心は相当なダメージを受けていたようだ。
学校でのことはあまり覚えていないが笹原さんがとても心配そうに見つめていたことは微かに記憶に残っていた。
その後テストが終わり、夏休みに入った。夏休みにお祭りに行こうとクラスのみんなで画策していた。僕もその一員で楽しさで忘れようと必死だった。
「うぉー、射的に焼きそばにリンゴ飴。これぞ夏祭り、て感じだなー!」
そう言うクラスの男子の一人。
クラスのみんなが大盛り上がりではしゃいでいる中僕は近くのベンチへともたれかかった。
するとそこに笹原さんがやってきた。
「みんなと混ざらないの?」
そう質問してくる笹原さんに僕は笑顔で返した。
「ちょっと食べすぎちゃったんだよ、屋台のご飯が美味しくてさ」
「嘘だね」
笹原さんはそう言った。
「最近の山田くん、つらそうだよ。無理して笑ってるっていうか、自分の本心を隠してるっていうか」
「何が言いたいんだよ」
「何が言いたいかっていうと、無理しなくていいんだよって言いたいかな」
その言葉に僕の目からは涙がこぼれていた。白石さんがいなくなってからとても辛かったけれども、誰にも本当のことは言わずにこれまで過ごしてきた。
本当は誰かに頼りたかった。思いっきり泣きたかった。
そんな思いが今波のように僕の中に押し寄せてきた。
僕はいつの間にか笹原さんに抱きしめられていた、その温かい心が僕のことを癒してくれた。
「好きだよ、山田くん」
そう言われ改めて僕は笹原さんの温かさを感じるのだった
少し時間が経ったあと
「みんなのところに戻ろう」
笹原さんにそう言われ皆のところに戻って行った。
『ドーン』
大きな音が響きわたる空には様々な色に輝くきれいな花火が咲き誇っていた。