記憶のカケラ
{…くん ゆう‥くん 勇気くん!}
{ん}
僕の名前を呼ぶ少女。年齢にして5,6歳だろうか。時々夢に出てくる女の子、昔僕はこの女の子のことが好きだった。しかし名前は思い出せない。誰なんだろうこの子は。そう思い僕は問いかけた。
{君の名前は?}
{もう、忘れちゃったの? 私の名前は‥}
『ジリリリリリリリリリリ』
僕は、目覚ましの音で目を覚ました。
眠たい目を擦りながら、しかし全く眠くない意識の中僕は横になった。
「夢か…」
また何もわからなかった。昨日思い出したのが原因だったのだろう。
本日は休日なので僕はベットでゴロゴロしている、そこへ一つの足音が聞こえてきた。
『コンコン』
「起きなさーい」
ドア越しから母親の声が聞こえてきた。
「わかってるよー」
そうして僕はリビングへと向かうのだった。
並んでいたご飯はジャムパンとチャーハン。
炭水化物&炭水化物
流石におかずが欲しかったところだがそんな贅沢は言えないので僕は朝ごはんを平らげた。
ご飯を食べ終わった僕は外出していた。外に出てはみたもののすることがなく僕はブラブラ街中を歩くのだった。
その時僕の目の前に見知った顔があるのがわかった。
「白石さん」
僕は彼女のその名前を口にした。
私は今日買い物に来ていた。学校へ行かなくなって1ヶ月、クラスのみんなとのグループラインは私の話題で埋まっていた。
ずっと家の中にいるのも嫌なので私は怯えながら気分転換をしに外出をしていた。
私がこうなったのはあの子のせいだ転校してからあの子の存在は私にとって邪魔でしかなかった。
私の愛する勇気くんをあの女は…
あの女にさえ弱みを握られなかったら
あの女さえいなければ
しかし過ぎてしまったことは仕方がない。愛しの勇気君のことは影から見守っていよう。
そう思いながら私はある人を見つけた。
これは運命だと思った。
「やっぱりあなたは私の運命の人なのね。あの時だってそうだったこれは神様が私とゆうき君を結ばせたいんだわ。そうに違いない」
小声ながらでもゆうき君に届くように私は言った。
「白石さん」
「おはよう山田君」
僕は白石さんに声をかけてみた。久しぶりに声をかけたので少し気まずい感情が僕の中で生まれる。
「まさか街中で会うなんて偶然だね」
「そうね、ほんと」
「元気そうで良かったよ、1ヶ月も休んでたからクラスのみんな心配してるよ」
「クラスのみんなには心配をかけたわね、体調が少し悪くなっていただけだから平気よ」
「そうなんだ、それなら良かった」
僕は安堵の息を漏らした。
「ねえ、勇気君。今から…」
「何?」
「いや、なんでもない」
「わ、わたし用事を思い出したからもう行くね」
そう言い白石さんはそそくさとどこかに行ってしまった。
僕はふと視線を上げた。
見えたのは綺麗な青空でそこに漂う2つの雲が追いかけっこをしていた。