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第48話 Side. サラ(8)

 うーん、完璧な世界かと思ってたけどね。何日か過ごしていたら嫌なことがちらほら出てきたわ。


 その中でも一番我慢できないのは臭いね。やっぱりこれだけは絶対無理!


 なんかね。この町って下水道がないみたいなのよ。だから町の中心以外は汚水が垂れ流しになってて、それで町に入ったときあんなに臭かったみたいなの。


 中心部はトイレが汲み取り式だから多少マシなんだけど、それでもやっぱりちょっと臭うのよね。


 おかしくない? こういうファンタジーな世界ってトイレはスライムが浄化するんじゃないの?


 しかも、ダニエラさんによるとどこの町もこんな感じで、町が大きくなればなるほど臭いはひどくなるんだって。下水道がなければそうなるのは分かるけど、そんなんだと病気とかすごい蔓延してそうよね。


 ま、あたしは病気になっても治せばいいだけなんだけど。


 それともう一つは食事ね。なんかここの料理って、味付けが塩しかないのよ。


 あと海辺だから新鮮な魚が食べられるのはいいんだけど、あたしは肉のほうが好きなのよね。魚だったらトロとかサーモンとかが食べたいんだけど、あんまりこのへんじゃ獲れないみたいだし。


 マヨネーズとかケチャップとかソースとか、ちゃんとした調味料が欲しいのよね。


 あーあ。上手くいかないわね。


 ま、それでも日本にいたころよりは全然マシかな。みーんなちやほやしてくれるし。


◆◇◆


「地上を照らす太陽、聖女サラ様、お招きにあずかり光栄に存じます。クラインボフト町長ダニエラがご挨拶申し上げます」

「ダニエラさぁん、来てくれてぇ、ありがとぉございまぁす」


 もうこの挨拶にも慣れてきたわ。さ、座って。


 あたしが手振りで合図を出すと、ダニエラさんは正面のソファーに座ったわ。


「失礼します。それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」

「えっとぉ、サラぁ、頑張ってぇ、考えたんですけどぉ」


 あ、人って緊張すると本当に唾を飲み込むのね。


 って、それは今どうでもいいわね。


「サラぁ、この町のぉ、聖女にぃ、なってもぉ、いいですよぉ」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!」

「ただぁ」

「え?」

「今のままはぁ、嫌ですぅ」

「そ、それは……」

「サラぁ、臭いのぉ、我慢できませぇん!」

「えっ? で、ですが……」

「だからぁ、下水道をぉ、ちゃんとぉ、作ってぇ、欲しいんですっ! そぉしたらぁ、サラぁ、この町のぉ、聖女にぃ、なりまぁす」


 色々考えたんだけどね。下水道のない大都市なんて、想像するだけでヤバそうじゃない。いくら都会でも、うんちまみれの中で暮らすとかあり得ないわ。


 だったら小さいところでやって、知識チートで内政無双するほうが良さそうじゃない?


 それにほら、異世界転生系のあろう小説だと、こっちのほうが王道でしょ?


 あとね。この世界って寿命とマナの量に関係があって、マナが衰えるまでは若い姿のままらしいのよ。


 で、マナと神聖力の強さはほとんどイコールなのよね。


 ってことはよ? 歴代最高の聖女であるあたしは、ずっと今の完璧な姿のまま生きて行けるってことじゃない。


 つまり、町なんて発展させ放題だし、イケメンだって選び放題ってことなわけよ。


「げ、下水道でございますか……」

「無理、なんですかぁ? じゃぁ……」

「い、いえ! 聖女様のお言葉であれば必ずや! ですが、下水道なるものを聞いたことがなく、一体何をどうしたら良いのか……」

「じゃぁ、サラがぁ、教えてもぉ、いいですよぉ」

「ほ、本当ですか! ありがとうございます! ありがとうございます!」


 あはは。なんかすっごいホッとしてるわね。


 ま、これからあたしの知識チートを見たらもっと感謝することになるんでしょうけどね!


◆◇◆


 その翌日、クラインボフトの中央広場には町のほぼすべての住民が集まっていた。住民たちはもちろん全員が男で、町役場のバルコニーを見上げている。


 すると町長のダニエラが姿を現した。


「皆さん、よく集まってくれました。本日、我らがクラインボフトは長年の悲願であった聖女様をお迎えすることとなりました」

「「「「うおおおおおお」」」」


 集まった住民たちが野太い歓声を上げる。


「静粛に! 我らが(いただ)く太陽、聖女サラ様のお出ましです」


 すると純白のドレスを着たサラがしずしずと現れ、住民たちは一斉に両膝を付いて(ひざまず)いた。


 サラは言葉を発さず、ニコニコと笑顔で集まった群衆に手を振った。その姿を見た住民たちの中には感動のあまり涙を流す者までいる。


「聖女様よりお言葉を賜る! 静粛に!」


 ダニエラの声が響くと、広場は完全な静寂に包まれた。


「みなさぁん、今日からぁ、この町のぉ、聖女になるぅ、サラでぇす」


 なんとも気の抜けた甘ったるい声が広場に響き渡る。


「ここにぃ、ザンクトぉ・サラスブルグのぉ、建国をぉ、宣言しまぁす」


 およそ建国宣言には似つかわしくない声色で建国を宣言したサラは、祈りを捧げるような姿勢を取った。


 すると淡い光がゆらりと立ち昇り、それはすぐに神々しいまでの白く(まばゆ)い光へと変わる。


 それを見た住民たちは皆涙を流し、両手を組んでサラのほうへと祈りを捧げるのだった。

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