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第47話 Side. サラ(7)

 警備隊を引き連れて広場にやってきたダニエラが目にしたのは、聖女サラの前で両ひざをついた大勢の男たちの姿だった。


 男たちの服は荒れており、破れていたり赤く染まっていたりするが、実際に怪我をしている者は一人もいない。


 ダニエラは目を見開き、思わず聖女サラの(もと)へと駆け寄る。


「せ、聖女様!? これは一体?」

「あっ、ダニエラさぁん。こぉんにぃちはぁ」

「はっ!? 地上を照らす太陽、聖女サラ様にクラインボフト町長ダニエラがご挨拶申し上げます」


 ダニエラは礼を失したことに気付き、大慌てでカーテシーをした。一緒に来た警備隊の者たちも一斉に(ひざまず)く。


「ダニエラさんもぉ、お散歩ですかぁ? あ! 後ろの人はぁ、さっきもぉ、会いましたねぇ。こんにちはぁ」


 サラはダニエラの後ろに控えるイケメンの兵士にも声を掛けた。


「地上を照らす太陽、聖女サラ様にクラインボフト警備隊隊長ヘルムートがご挨拶申し上げます」

「ヘルムート様ですねぇ。よろしくお願いしまぁす」

「はっ!」


 サラはニコニコと嬉しそうな笑みを浮かべ、ヘルムートを見ている。


「ヘルムート様はぁ、お仕事ですかぁ?」

「はっ!」

「そぉなんですねぇ。じゃあぁ、ヘルムート様ぁ、あとぉ、皆さんもぉ、サラのことはぁ、気にしないでぇ、お仕事ぉ、頑張ってくださぁい」


 サラはまるで花が咲いたような満面の笑みでそう声を掛けた。


 するとヘルムートをはじめとする警備隊の兵士たちの顔がみるみる赤くなる。


「お、おそれながら、聖女様」

「はぁい。なんですかぁ? ダニエラさぁん」

「一体なぜ、聖女様がこちらに?」

「えっとぉ、ちょっとぉ、お散歩をぉ、してたんですぅ。あ……ダメ、でしたかぁ?」


 サラは突然しゅんとなり、申し訳なさそうな表情をダニエラに向けてくる。


「いえいえいえいえ! とんでもございません! 聖女様はどのような場所でもご自由に散歩を……って、そうではありません! そうではなく、この広場では暴動が起きていた……はずなのですが……」

「えっ? あっ、はーい。えっとぉ、みんなぁ、ちょっとぉ、喧嘩をぉ、しちゃったぁ、だけですよぉ? でもぉ、喧嘩はぁ、やめてってぇ、お願いしたらぁ、もぉ、しないってぇ、約束ぅ、してくれましたぁ」

「ええと、それでは、暴ど……喧嘩はあったのですね?」

「はぁい。そうでぇす」

「では、怪我人は……」


 ダニエラはちらりと男たちのほうを見る。


「もちろん、治してあげましたよぉ。だってぇ、とーってもぉ、痛そうでぇ、かわいそぉだったんですぅ」

「えっ? この人数をですか? 昼間にも病院で患者の治療をなさったのに?」

「だってぇ、かわいそぉじゃないですかぁ」

「いえ、そういうことではなく、聖女様のお体は大丈夫なのですか?」

「ええぇ? どぉいうことですかぁ?」

「それは、その……治療はとても大変だとお聞きしているのですが……」

「サラはぁ、大丈夫でぇす。ダニエラさぁん、心配ぃ、してくれてぇ、ありがとぉございまぁす」

「えっ? あ、その、どういうたしまして?」


 ダニエラはサラのペースに完全に呑まれたようで、言葉を続けることができずにそのまま固まった。


「それじゃあぁ、サラはぁ、お部屋にぃ、帰りますねぇ。みなさぁん、仲良くぅ、してくださいねぇ」


 サラがそう言うと、男たちは一斉に平伏した。


「じゃあぁ、行きましょぉ?」

「「「はっ」」」


 こうしてサラは三人の冒険者にエスコートされ、町長公邸へと戻っていく。ダニエラはその様子をただ呆然(ぼうぜん)と見送るのだった。


 そしてサラの姿が見えなくなって数分後、ダニエラはようやく我に返って暴動を起こした男たちに命令をする。


「聖女様より特別の計らいをいただきましたので、今回の暴動については不問とします。ですが各々よく反省し、聖女様のご恩に報いるように」


 男たちはそれにただ黙って(うなず)く。


「以上、解散しなさい」


 こうして暴動は無事に解決した。しかしその夜、半数以上の評議会議員の自宅が襲撃されるという事件が発生した。


 評議会議員たちは富裕層であり、同時にクラインボフトの政治を動かす権力者でもある。そのため自宅には当然警備員がいる。だからこのような襲撃は発生した例がなく、また発生したとしても成功する可能性は極めて低い。だがなぜか今回は、襲撃を受けたすべての家で評議会議員が行方不明となったのだった。


◆◇◆


 ああ、やっと帰ってきたわ。


 もう足がクタクタ。ほんのちょっとしか歩いてないのにこんなになるなんてね。


 最後は結局筋肉ダルマにお姫様抱っこで運んでもらっちゃったし。


 うーん。やっぱり足、細すぎなのかしら。


 でも別に骨と皮って感じじゃなくて、ちゃんと普通に健康的よね。びっくりするくらい細いだけで。


 ……あたしの足、本当に綺麗よねぇ。細くて真っ白で染み一つなくって。


 ふ、ふふふ。別にいっか。歩くの苦手でも。だって、こんなに綺麗なんだもん。ずっと眺めていられそう。


 あたしは頑張って姿見の前に立ってみたわ。


 ふ、ふふふ。本当、完璧よね。あたしの理想そのものだわ。


 普通じゃあり得ない体型だけど、それなのに作りものな感じが一切ないもん。


 ちょっと脱いでみようかしら。よいしょっと。


 あ……この胸、着替えるのにも邪魔なのね。ふふふ、これって嬉しい誤算だわ。


 ……って、ヤバッ! こうしてみるとホント大きいわね。形は完璧だし、大きいのに乳輪まで綺麗でちゃんと可愛いし。


 それにこのウェストの細さったら!


 今のあたしが都心を歩いたら、絶対スカウトされそう。それにきっと盗撮されて、SNSとかにも勝手にアップされてそうだわ。


 ただ、もう肩こりになってきてるのよねぇ。巨乳は肩がこるって言ってたけど、実感だわ。


 それに年を取ったら垂れ……ないわね。そもそもあたし、聖女だから肩こりも垂れるのも治せるんだったわ。


 あら? ってことはもしかして、歩き疲れたら治せばいいんじゃない?


 ……できたわね。どうしてこんな簡単なこと、思いつかなかったのかしら?


 ふふ、ならなおさら、細くて正解じゃない。


 やった。完璧だわ。ここって本当に、あたしのための世界よね!


 神様! ありがとうございます!

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