パスワードを忘れた。そうだ、義姉に相談しよう
俺の名前は、小塚原覚。齢16歳。
突然だが、俺は今ものすごく困っている。
「パスワード、なんだったっけなぁ……」
俺の前にあるのはパソコンのデスクトップに映し出された、とあるページ。そこにはメールアドレスと、パスワードを入れる画面がある。
小説投稿サイト、「文筆家になろう」。そこの片隅で、俺も趣味で書いた小説をアップロードしていた。しかし、ふとした拍子に誤ってサイトからログアウトしてしまった。そこまでならよくある事だ。また、ログインすれば良い。
だが、何とした事か、よりによって俺は、再ログインに必要なパスワードを忘れてしまったのだ。
「それで、私に泣きついてきた、と」
「頼むよ。パスワードを思い出すのを手伝ってくれよ」
最終的に俺が頼ったのは、血の繋がらない姉。小塚原幸である。
俺の母は、俺を生んですぐに、他所に男を作って、俺達を置いて出ていってしまった。後に父は、同じくパートナーに捨てられた女性と再婚したが、その際、連れ子として姉になったのが、彼女だ。
俺より1歳年上の彼女は物静かだが、いざという時頼りになる。俺に対しても、かなり好意をもっているみたいだ。俺も幸姉を憎からず思っている。彼女と恋人になれたら。いや、義姉相手に何を考えてるだ俺は。
「覚がつけそうなパスワード……オネエチャンダイスキとか」
「違うよ」
「よく思い出して、一応、復唱してみよう? リピートアフターミー」
「オネエチャンダイスキ……違う」
「ツキアッテクダサイ」
「ツキアッテクダサイ……これも違う」
「キスシテ」
「キスシテ」
「よしきた」
そういうと、幸姉は俺に唇を重ねてきた。俺は咄嗟の事に、対応できず、唇を奪われた。
「!? 何してくれるのさ!」
「ごめんなさい。……でも私、覚の事が好きなの。男の人として」
「え……」
「という訳で、このチャンスにワンチャンいけるかなって、咄嗟に唇を奪ってみた」
「仮にも告白が、そんな雑な方法で良いのかい?」
「無理矢理キスした事は悪いと思ってる……。覚はどう? 嫌なら、拒絶していい」
「……俺は」
正直、幸姉に恋慕の念を抱いていないと言えば嘘になる。
「良いよ。告白を受け入れる」
幸姉の顔がぱあっと明るくなった。かくして、俺と義姉は恋人同士になった。パスワードを探していただけなのに、凄い事になったな……。
「ところで、パスワードは再設定すれば良いんじゃない?」
「地味にめんどくさいじゃん。アレ」
読了、お疲れさまでした。これにて、本作は完結です。
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