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第九話 -聖騎士ドルフェンス-

遂にジャンクと共に地下街への入り口を見つけ出し、地下街に降り立った2人だったが、途端にジャンクと逸れてしまった健太郎。城に棲まうドルーレスのことを相談するために、聖騎士ドルフェンスに会うことをにした。

 聖騎士宿舎と言ってもそこは豪華絢爛でも優雅でもなく、ただの民家といった感じだった。一つ民家と違うところは入り口に門兵がいることぐらいだろうか。

 しかし、門兵がいるところを見ても俺がズカズカ中に入っていったら捕まるか、殺されるだけだ。どうやったら話ができるだろう。一旦門兵に入れてもらえないか聞いてみることにした。


「騎士ドルフェンスに話があるんです。通していただけますか?」

「ここは通せん。それがドルフェンス殿も認知されている要件でなければな。尚更、我ら騎士以外が聖騎士と付けずにドルフェンス殿を語るなど言語道断!」

 門兵といえば中に入ろうとする不審者を止めるのが役割だ。そりゃあ当たり前だけど、俺は騎士ドルフェンスに会って外の現状を伝えなければならないんだ。なんとしてもドルーレスのヤツを大人しくしなければ、俺の始まりの街が寂しい街になってしまう!

 俺は焦っていたのだろう。マドが波打って流れ始めた。肩から茶泥が湧き出してくる。

 その時だ。一斉に門兵が急に腰を抜かした様に地面に尻をつけた。

「ヒィッ…その邪悪な気配…な、何者だッ…」

 辛うじて立っている者もいたが、全身が震えていた。泥は既に右腕を覆いきっている。

 その時、扉が開き1人の男が出てきた。

「何事だ。騒がしい。」

 その男は門兵の様な鎧を身につけ、腰には豪華な装飾がされた剣を刺していた。胸には何かの花の様な勲章を付けていた。

「君は僕に用があったんだろう?言ってごらん。僕は君が会いたがっていた騎士さ。」

 コイツが騎士ドルフェンスか… 思っていたより温和な人物だな。

「しかし… 君の泥からは恐怖の権化の気配がする。中で話そう。僕とて無用の悲鳴が上がるのは避けたい。」


「まず、君から何故恐怖の権化の気配がするのか。これについて聞きたい。」

「貴方が仰る恐怖の権化の正体をまず教えていただけないでしょうか。私とて正体が分からない限り…」

「その堅苦しい話し方やめようか。君は様子を察するに何らかの事情があって、世界のことを理解していない。ここでは事情を深掘りする気はない。安心しろ。」

 騎士ドルフェンスは恐る恐る口を開き始める。

「恐怖の権化は口に出すのも恐ろしい。そこに宿るマドを認識できた時、常人は恐怖に苛まれ気を失う。君が外で門兵に尻をつかせたように」

 騎士ドルフェンスは続ける。

「その正体は『土』呼ばれる物体だ。おおよそ想像はつくが、君の泥は茶泥なんだろう。」

 そうか。茶泥の力は「泥を土に変化させる力」、意のままに操ることが出来るもの。土はこの世界では恐怖の権化として恐れられてるものだ。だからさっき泥を創造した瞬間に周囲にいた門兵が怯え始めたのか。

「騎士ドルフェンスは怖くないのですか?」

「いや、とても恐ろしい気配だ。今にでも吐きそうなくらいにな。門兵の彼らだって相当鍛えてあってもあのザマさ。コレに、恐れを感じない人など存在し得ないだろう。」

 そういえば、ジャンクさんは泥を見せても怯えていなかった。驚いてはいたが、むしろ喜んでいるようでもあった。

 そういえば、騎士ドルフェンスにはドルーレスのことを相談しにきたんだった。ドルーレスの泥も茶色だった。ドルーレスのあの気配、あれが土の気配だとすれば納得がいく。

もしかしたらジャンクさんはドルーレスのことを何か知っているのかもしれない。

「本題に入ります。この街にある城にはドルーレスという王と自称している者が棲んでいます。」

「ふむ。あの城にアンデットが棲みついてからこの街の住人は此処、地下街へと避難したが、君の言い方だとドルーレスとやらがアンデットの王の様なものであり、其奴が棲まう様になってからアンデットが棲み始めたと、そう考えているようだな。」

 俺は騎士ドルフェンスの的確な考えに感心してすぐには言葉が出なかった。

「そこまで発展した考えまでは及びませんでしたが、大方同じような考えです。また、確証はありませんが、ヤツも茶泥の力を使えます。」

「君は実際に見たということかな?」

「はい、城で実際に見ました。ヤツの腕は茶色の泥で覆われていました。」

「ふむ、君1人で城に行ったということか。どうやってアンデットの群れを払ったんだ?」

「俺1人で行ったわけではありません。ジャンクという人がアンデットを倒してくれました。その後、その人と地下街(ここ)の入口を探しながら泥の扱い方を教えてもらいました。」

 そこまで言うと騎士ドルフェンスは血相を変えてこう言った。

「そのジャンクという人はどこにいる!」

「俺も見失ってしまったんです。気が付いたら居なくなっていて…」

 騎士ドルフェンスは顔を青ざめた。俺も察しがついてしまったが、念のため聞いた。

「つまり騎士ドルフェンス、あなたはジャンクさんが黒だとお考えですか?」

「あぁ。最もそう思うと感じた根拠は、地下街を見つけた途端、姿を消したことだ。」

 騎士ドルフェンスは淡々と話す。

「おおよそあちら側の狙いは住民全員に消えてもらうことだろう。住民全員か一箇所にまとまっているとなるとあちら側にとっては都合がいい。そのジャンクとやらは偵察目的で君と接触した。君も彼女の言動や行動に不信感を感じたことはあったはずだ。」

 思い返してみると、ジャンクさんの言動や行動には不審な時が度々あった。

「つまりだ。今すぐにでもドルーレスとかいうヤツらを叩いておかないと皆死ぬ。なんせ場所は割れてるからね。」

 ドルーレスは俺ごと消すつもりだろうか。今回ばかりはガラが守ってくれるとは限らない。自分の身は自分で守らなければ。


「叩くのは明後日の明朝にしよう。君は明日の夜までに、泥の簡単なコントロールくらいはマスターして貰いたい。本当はもっとコントロールできるようになって貰いたいが、今無理をしても当日戦えなければ意味がない。頑張ってくれ。」

 俺は深く頷いた。

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