第七話 -泥とは-
この街では城を中心として覆っている暗雲によって昼夜分からない。どちらかといえば常に夜だ。
自分が朝だと思う時間に起きて、ジャンクさんに泥やマドの使い方について教えてもらう。
一区切りつくと、今度は地下街への入口を探す。
そんな日々を1週間ほど繰り返した。
段々と体の中のマドの動きの感覚が掴めるようになってきた。泥の創造はまだ出来ない。ジャンクさんにアドバイスをもらうと、「全身のマドを波打つように流すのじゃ。そうすると、肩からマドが溢れて具現化する。これが泥の創造のやり方じゃ。」
マドは自分の体だけではなく、空気中にも存在する。空気中からマドを取り入れることもできるが、体内のマドと大気のマドの中和が追いつかず、キャパオーバーを起こすと全身のマドが血と一緒に口と鼻から吹き出し、死ぬとジャンクさんに脅された。
探し始めて1週間。未だに地下街への入口は見つからない。
探し始めて3週間が過ぎそうだったその日。俺は初めて泥の創造に成功した。
まだまだ少量だが、全身のマドを波打つように駆け巡らせることで泥を創造できる、というアドバイスは間違っていなかった。とにかくコツを掴むのに苦労した。
「ジャンクさん、泥の創造に成功した。」
「どれ、見せてみぃ。ワシが泥の色を判断しよう。」
泥は色によって俗に言う属性が変わる。ジャンクさんの緑泥は、主に草木を操る泥だ。
「オヌシの泥を出してみぃ」
全身のマドを波打つように流す。すると肩から溢れたマドが泥に変化する。
俺は自分の泥をジャンクさんに見せた。するとジャンクさんの顔は驚いたような顔に変わった。
「オヌシ、これは茶泥じゃ!茶泥を発現する者はとても少ないんじゃ。」
なんと、俺はそんなレアな色を引いたのか。もしかしてこれはガラが授けた超能力なのか。
「茶泥の力ってどんななんだ?」
俺は興奮気味に質問した。
「茶泥の力は」
チカラは!!
「土を操り、様々な物を創造することができる力じゃ。」
それは強いのか?
「茶泥の力の強さはその創造性の多彩さじゃ。文字通り何でも創造できる。」
土を捏ねるなんて陶芸じゃないか。生前一年かけて練習した甲斐があったな。
ただし、物事は良いことだけではない。何と食糧が尽きてしまったのだ。
話し合いの結果、街の商店から調達することにした。無人だから勝手に取ってくれば良いというジャンクさんからお金を取り上げ、無人のカウンターに置いてから商品を取った。
ブドウのような物を取った時に、房から実が落ちてしまった。実は転がり、壁にぶつかり止まる、はずだった。しかし、実は壁の中へ転がっていった。壁を観察すると下の方が穴になっていた。壁を押すと手応えがない。中が空洞になっている様だ。強く押すと、壁は90度回転し扉となった。先には下へと続く階段があり、階段の下にはさらに扉がある。もしかしたらここが地下街への入口なのかも知れない。
「ジャンクさん!ここに地下へと続く扉の様なものが」
ジャンクさんと共に扉の前に立つ。
ドアノブを握り、ドアを押した。