第六話 -城の有様-
ガラは静かに口を開いた。
「君には私の真称号を授けたいんだ。」
ドルーレスは驚きが隠せないようでガラを見張った。
「貴方の真称号を我が!?」
「私の真称号では品格が足りぬと言うのか。強欲なヤツめ。」
「ご無礼をおかけしました。そう意味ではございません。貴方の真称号を頂けるとは何と有難き幸せ。」
「真称号の力は君には有り余るモノだろう。使いこなせるまで多少時間は掛かる。私を超える真称号の使い手に成ることを楽しみにしているよ。」
ガラは笑いながら闇夜に消えた。
気がつくと俺はベッドの上で横になっていた。頭を上げると、肺の辺りがズキズキと痛む。やはり肋骨は確実に折れている。腹の虫も大声量で鳴いている。相当長い時間寝ていたようだ。ここまで誰が運んだのだろう。
「起きたのかい。」
辺りを見回すと1人の老婆の姿があった。
「ばあさんが俺をここまで運んできてくれたのか。」
「ワシの名前を忘れたのかい?肋骨だけじゃなくて脳も怪我してるみたいじゃな。」
「覚えてるよ、ジャンクさん。ジャンクさんこそ怪我はないのか。」
「ワシはピンピンしとるぞい。なんせ崩れた床の下は玄関じゃったからな。急いで城から出たのじゃ。」
床の下は大広間だったぞ。何を言っているんだ。
「オヌシこそ城で何かあったようじゃな。」
俺は城であったことを多少はぐらかしながら話した。
「要するにそのドルーレスとか言うヤツがあの城には棲んでいるのじゃな。」
ジャンクは納得したような顔をした。
「さっきからずっと気になっているんだが、この街は明らかに寂れすぎている。何があったんだ?」
「あの城にアンデット共が棲みついてからこの有様じゃ。ワシが城にいたのもアンデット共がスポーンした理由を突き止める為じゃ。まぁ、そのドルーレスとやらが原因の可能性が高いが。」
「この街から出るためにはどうすればいい?」
「街から出ることはできん。泥の壁で出入口が塞がれているからじゃ。そこらの道具では壊すことは無理じゃ。」
「というと住民も出られなさそうだが、住民はどこに行ったんだ?」
「住民は地下街で暮らしているようじゃ。じゃが、ワシは入口を知らんのでな、まず探すことからじゃ。」
今俺がヤツに挑んでも返り討ちに遭うだけだ。泥の力の使い方を知らない限りはこの世界では生きていけない。
ただ、地下街への入口も見つけなければ野垂れ死ぬだけだ。
結局、どちらも同時に行わなければ生きていけないと言うことだ。
―俺はこの世界で生きていくと決めた―
―こんなところで死ぬわけにはいかない―