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第十二話 -白菊・回-

地下街から地上街に移動し、遂に城に侵入した一行。城で待ち受ける者とは一体…

 飛んでくる木箱やら布やらの飛来物を避けながら、俺たちは城に到着した。正門を開けると、そこはアンデットの巣窟だったが、こっちは75人の精鋭騎士軍。アンデットはあっという間に掃討されていた。

 皆が剣を鞘に収めた瞬間、正面玄関の扉も崩れ落ちた。正確には細切りにされたのだが、俺の目には崩れ落ちたようにしか見えなかった。

 精鋭騎士軍はアンデットだらけの廊下を突破すると広間に辿り着いた。

「ドルフェンス軍隊長。戦況は好調です。このままの状態が続けば、目標地点への到着も容易か…」

 そこまで言った時、突然頭が吹き飛んだ。次の瞬間、前方にいた騎士の頭と肉片と血液がそれぞれ宙を舞った。壁には弾痕のようなものが、床には土で出来た筒状の物が落ちている。いや、正確には茶泥で創造したものだ。茶泥で銃弾のようなものを創造し、それをマドの力で飛ばしたのか。銃や火薬なんて必要ないから弾の大きさも自由なのだろう。俺は直径5センチはありそうな弾を拾う。


「部隊を3つに分け散開せよ!正体不明の飛び道具に注意するんだ!」

 ことの成り行きにより俺はドルフェンスについて行く事になった。

 廊下を進むと階段が見えてきた。階段下は倉庫になっていた。何かを察したドルフェンスが部隊を制止させると、目の前の木箱が動き、中から1人の老婆が出て来た。

 老婆はこちらを見る。それは紛れもなくジャンクその人だった。

「ドルフェンス行ってくれ。ドルーレスを倒すためにはドルフェンスの力が必要だ!」

俺はそう言い、ドルフェンスを先に行かせた。

「まったく、勘のいいガキだね。」

と、ジャンクは後ろを振り返りながら言う。

「どうしてわざわざ隠窟から出てきた?」

と俺は聞く。

「ただ隠窟のタイムリミットがきたからだよ。」

「違うね、あんたの隠窟はもっと自由に使えるんだろう?例えばどこに出口を設定するとか。」

「まったく、年寄りに口答えするんじゃないよ。」

両者は構えた。空気が重たくなっていく。

「やっぱりそういうことになるよな。」

「オヌシも碌な死に方しなそうじゃな。」

霞花葬環(かかそうかん)

 両者は同時に泥を創造し、泥同士はぶつかり合う。

 前方から大量の葉っぱが飛んでくる。反射的に避けると、直後葉っぱは背後の壁に突き刺さった。俺は冷や汗が出た。

「危なかった。葉っぱだからといって舐めてかかると痛い目に遭うな。」

俺は元の立ち位置へ戻るとジャンクをキッと見つめる。

「緑泥、・白菊の舞」

そう唱えると、俺の周りを白菊の花弁が舞い始めた。花弁は俺を包み込んでゆく。

「大層な名前の割には目隠しかよ。」

俺が鼻で笑いながらそういうと、ジャンクは

「目隠しを侮るとオヌシ死ぬぞ」

と脅してくる。

気がつくといつのまにか花弁の目隠しは霧のように濃くなっている。これでは前どころか自分の足でさえ見えるか怪しい。

ジャンクは俺に一息つかせる暇もなくこう唱えた。

「緑泥、アジャンション・プルームッ」

この技はっ…、以前アンデットを掃討した時に使っていた技だ。つまり攻撃が来るのは、『下』から!

 俺は急いで足場を創造し床を離れた。その直後床からは無数の花が生い茂り始めた。よく見ると、花は全て白菊の花だった。

「この技、前も使ったことがあるかの?ワシは年でな。」

「あぁ、本当に殺しに来てるんだな。」

ジャンクは頷きながら言う。

「つまり、オヌシはこの技は知らないんじゃな?」

俺の全身の毛が逆立つような気配が()()にあった。ほんの数メートル先だ。


「緑泥、新華潤蔓(しんかじゅんまん)・白菊の唄」

そう唱えた瞬間、泥が飛んでくる気配を感じたが、霧と相まってどこから飛んでくるか分からない。

 俺は後退し、近くの部屋に逃げ込む。そして、すぐさまハンマーを創造し壁を破壊する。今更だがこの世界に来てから筋力が増加した気がする。

 場所が開けた。ここなら攻撃がどんなものか見極められる。

 攻撃の正体は蔓のように変化した泥だった。しかし手強いのがその蔓が無数にあることだ。しかもその蔓にはアジャンション・プルームのような白菊が無数に生えているのだった。下手に触ったりすると、蔓が内臓を突き抜けたり白菊が俺を喰い尽くすだろう。

 蔓は壁や床などお構いなく、破壊して向かってくる。俺はすぐさま壁を創造したものの、蔓は壁を破壊して向かってくる。また、壁は俺の退路を一つに絞るものでもあるため咄嗟とはいえ愚策だった。

 蔓は退路が一方になった俺に向かってくる。俺は手に持っていたハンマーで天井を破壊し、足場を創造し2階に逃げ込む。そしてとにかく走り、追ってくる蔓から逃げる。

 突然、前からも蔓が迫ってきていることに気づいた。それは階段を利用して蔓を向かわせたのだった。すると蔓が床を突き抜けて迫ってくるではないか。俺は辛うじて避け、ため息を吐く。

「危なかった。もう少しで背骨の代わりに蔓が通るところだった。」

 俺は床を破壊して下に飛び降りた。そこは紛うことなき蔓の海だった。白菊が今にでもかぶりつかんと口を開けている。

 俺は足下に足場を創造し、蔓の海の上をパルクールの様に移動しジャンクに迫る。

 ジャンクは一瞬驚いたようだったが、すぐに冷静に唱え始めた。


「緑泥、瞬花回斬(しゅんかかいざん)・白菊の葬」

その瞬間、回転する白菊の花が全てを切り裂いて向かってくる。あの強靭な蔓でさえ切った程だ。到底俺の壁程度では太刀打ちできないだろう。しかし、蔓を切ってくれたおかげでおかげで動きやすくなった。俺は近くの部屋に逃げ込み、壁を破壊して隣の部屋に逃げる。白菊は壁を切り刻んで向かってくる。

しかしこのままではすぐに追い付かれる。一思いで真っ二つだ。

 そんなことを考えながら逃げていた時だ。白菊が切り刻んだ瓦礫が白菊の上に落ちた。その瞬間白菊は重さに耐えきれず落下し、瓦礫の下敷きとなった。


 俺は近くの壁を破壊し、廊下へ躍り出る。

「終わりにしようぜ。婆さん!」

「名前も忘れたのかい。小童!」

 お互い再び向かい合った。

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