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第十話 -天才の半分の半分-

聖騎士ドルフェンスによる打倒ドルーレスの作戦会議。

健太郎の泥の鍛錬と新たな出会い。

作戦決行まであと1日!

 その日の晩は作戦会議だった。

「城の大広間のような場所にドルーレスはいました。」

「その広間はどこにあったか覚えているか?」

 あの時は2階に大広間があったが、大広間が2階にあるなんて普通はおかしな話だ。

「その時は2階にありましたが、大広間が2階にあるのはとてもおかしな話だと思いませんか?」

 さらにジャンクさんと共に落ちたのにジャンクさんは大広間に現れなかった。もし、敵がそのような能力を持っていたとすれば…

「仮定の話に過ぎませんが、もしかしたら敵は城の部屋の位置を変えられるような能力を持っているのかも知れません。」

「確かにそれは厄介だな。前もって敵の能力を大方知り、対策できるのはかなりいい作戦を練れそうだ。」


「これで今夜の作戦会議は終わりだ。明日の晩また集合してくれ。」

 作戦会議が終わり、騎士30人程が宿舎の自分の部屋へと戻って行った。明日の作戦にはこの人たちに合わせて後方支援班など、のべ75人が参加する予定だ。

「君は明後日までに、鍛錬という重大な任務が残っている。くれぐれも気を引き締めてくれ。」

「了解です。」

 結局この人と話す時は敬語が一番話しやすい。


 作戦までは、聖騎士宿舎に泊まっていいと言われたがその日の晩は眠れず、泥を土に変化させ土での造形の練習をしていた。

 細かいコントロールはまだ難しいが、簡単な造形なら出来るようになった。どうやら茶泥での創造した物は普通の陶磁器よりも強度が段違いで上がるようだ。鉄くらい、もしかしたらそれ以上硬いかもしれない。

 この街は地上でも地下でも朝か分からないな。

「君、寝ないで鍛錬していたのか。しっかりとした睡眠を取らないと、体の中にあるマドの変換器がおかしくなってしまう。睡眠はしっかり取りなさい。」

 と、騎士ドルフェンスは言った。まるで母親のようだ。

「ところで、マドの変換器って体のどの辺にあるんだ?」

 前世では体の中にマドの変換器なんてものはなかったはずだ。ここの世界に来て備わったのか?

「鳩尾の辺りにあるよ。肺と心臓に直接繋がっている。」

 騎士ドルフェンスは鳩尾を摩りながら指で示した。

「肺で取り入れられた空気からマドを取り出して体のマドと中和するのが変換器の役割だ。心臓は全てのマドの通り道。そこで体のマドと混ざり合う。」

 なるほど、ここに転生した時に勝手に追加されたのか。

「じゃあどうして泥は肩から出るんだ?」

「心臓を出発したマドはまず、肩を通って腕へ向かう。優れた泥術士はマドを肩から出さないらしいが、そんなことは私にだってできない。」

 ジャンクさんも肩から出していた。彼女もまだ一人前ではないということか。世界は広いな。

「最後に君の名前を聞きたい。私も正式には名乗っていなかったな。世間一般では聖騎士ドルフェンスと呼ばれている。ドルフェンスと呼び捨てで構わない。」

「俺は健太郎です。呼び捨てで構いません。」

 とにかく今日は助言通りに寝ることにした。あとどのくらいで朝か分からないが。


 目覚めると、皆はもう朝食を食べ終わった後だった。俺はドルフェンスに挨拶をするとすぐに鍛錬を行いはじめた。

 肩から出していると余分な泥が多く、コントロールが難しい。この泥と相性が悪いのかもしれない。

「やっぱり指先かなぁ…」

「なになにどうしたの??」

 いきなり話しかけてきた女の子はドルフェンスのような勲章を付け、こう名乗った。

「私は聖騎士隊副隊長ミーリエ。聖騎士ドルフェンス隊長の右腕ですっ。」

「よろしく。ドルフェンスから話は伺っていると思います。俺は健太郎、よろしくお願いします。」

「知ってるよ〜っ。茶泥を使える人でしょ?ケンタローくんすごいねっ。」

 ロリっ子に褒められるっていいかも。とはいえ、ドルフェンスの右腕という言葉だけでも強そうだと思ってしまう。とはいえ俺アイツの実力見たことないんだよな。

「泥を別のモノに変化させる時のコツってなんかある?できれば肩から出したくないんだ。」

「私は泥で形作る系じゃないからよくわからないけど〜、私は指先からマドを出す感じでやってるよっ!」

 この子、指先から出せるのか?歳からは想像できない程相当な手練れだ。

「なるほど。できるように頑張ってみる。」

「うんっ!頑張ってっ!」

 ミーリエは小走りで去っていった。


指先から出すイメージ… 指先から出すイメージ……

「集中しているところ悪いな。昼飯食うか?」

 集中し過ぎていて隣にドルフェンスがいても気づかなかった。

「もう昼か、いただきます。」

 ドルフェンスからサンドウィッチのような食べ物を貰い、ドルフェンスの隣に腰掛ける。

「何やら困っている様子だね。」

「リーリエからアドバイス貰ったんですけど、指先から泥を出す感覚ってどうやるんですかね。」

「リーリエは半分才能だから。あれは俺にも真似できない。」

「じゃあもう半分は何ですか?」

 ドルフェンスはサンドウィッチを飲み込む。

「半分の半分が感覚。もう片っぽが努力。」

 最早、天から授かった力のような。

「つまり、天才…」

 俺の呟きは無かったかのように彼は無視する。そして、ドルフェンスは立ち上がり、こう言った。

「君がそれを会得するのにはこの先何年後か分からない。今は今できることを磨くべきだ。」

 ドルフェンスが言うことはもっともだったが、俺は肩から泥を出すことに限界を感じてるんだ。

 俺は指から泥を出す鍛錬に戻った。

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