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第一話 -第二の人生-

初投稿です。

鼻をつく濃い土の匂い。

 酸素を求める肺を抑えるように目を閉じた。

 頭の中で記憶のフィルムが回り始める。


 自分の息子が泥遊びを始めるような年頃まで育ったんだな。それに影響されて俺も陶芸を始めたんだっけか。もうすぐ始めて一年だったのにな。まさか、土が俺の人生を終わらせるなんて思いもしなかった。

 妻も息子も巻き込まれなくて良かった…

いつしか記憶のフィルムは止まり、意識が薄れていく。何か言葉を発しようとしたが口はピクリとも動かなかった。

彼は土砂崩れに巻き込まれ窒息死した。


 彼は気が付くと1人の長身男の前に立っていた。そこは目の前にある長机と椅子の他は何もない空間で、その男は玉座かと思う大きな椅子に腰掛け長机で何かを書いていた。

 男はこちらを見ると嬉しそうに笑った。何が嬉しいのか俺には分からないが、一言で言うと不気味だ。

「私はガラ。ここ生定所(せいていじょ)剪定者(せんていしゃ)をやっている者だ。私はちょっとやらかしちゃってね、私に仕事が回ってくるのが2ヶ月ぶりなんだ。2ヶ月も人と話してなかったから寂しくて寂しくて。」

 長身男、ガラはそう自己紹介し厚い本を開き始めた。剪定者?生定所?なんだそれは。鼻の奥にはまだ土の匂いが残っている気がする。俺は確かに死んだ。一体どう言うことだ。

 急にガラは驚いたようにこちらを見た。

「うぉっほ、なんと君は私の100億人目の客だ。普段は、私が勝手に前世とは違う世界に転生させるのだが、君には特別に転生先を選ばせてあげよう。」

転生?!これは所謂異世界転生というやつか。ネトゲもラノベも読まない俺には縁もない話だと思っていたが。

「生前の記憶、ここでの記憶は普段は処理される。だけど、今君は2ヶ月の僕の寂しさを晴らしてくれた。君の顔に免じて記憶は処理しなくて良いや。」

 つまり記憶処理なし。記憶が残るのはいいことだ。妻と子供のことを覚えていられる。それにしても、この人はこんなに自由気ままな人だから2ヶ月も仕事させてもらえないんだな。

 ガラは俺に選ばせてくれるとも言っていた。これから生きていく世界を選ぶ。よく考えればとても大事なことじゃないか。

「思ってたより君は深く考えるみたいだな。特別にアドバイスをしてあげよう。前世で因縁が残るモノ。やり直したいコト。これでも決まらなかったら私が勝手に選んでやることもできるよ。」

 この言葉を聞いた俺の脳はスッキリしていた。

「俺が前世で悔いがあるとすれば、土だろう。上手い例えが見つからないけど、陶芸の経験が活かせる世界がいい。」

「よくここに来る人間は皆、金持ちになりたいとか、女を抱きたいとか、名声が欲しいとか、超能力が欲しいとか、正直しょうもない願いばっかりだった。ただ、君の願いは面白い。よろしい、君の望む世界に転生させてあげよう。。私もたまに様子を観察するよ。」

 そういうとガラは読んでいた厚い本に何かを書き始めた。

「転生の準備はいいかい?」

 俺が頷く暇もなく、ペンを置くとガラは鏡取り出して唱えた。口元には笑みが浮かんでいた、


「転生者、山田健太郎(やまだけんたろう)。其方にはこのガラが転生者として、この鏡の使用者として恥じない生き方を強要する。鏡にこのガラが命ずる。転生者、山田健太郎を転生させ給え」

 転生者、山田健太郎は眩い光に包まれ姿を消した。

「さて、早速様子を見に行くかな」

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