かわいい僕のつがい 1
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「僕の番は可愛すぎる」
「はあ」
「僕の番は可愛い上に、優秀すぎるんだ」
「そうですか」
「何故、僕の番はあんなに可愛いんだ・・今すぐに会いたい・・ああ・・会いたい」
「だったら、王宮から離れたこんな離宮までやって来ずに、番に会いに行ったらいいんじゃないですかね?」
「それが出来ないんだよ!怒られるから!」
これがあの兄なのか?
帝国軍を退けた際には、オストラヴァの鬼竜とも言われたあの兄なのか?
父と母を幽閉した離宮に自分自身が幽閉される事になったこの国の第二王子でもある私、ルクレッツィオ・オストラヴァは、目の前で惚気続ける自分の兄であり、この国の王太子となったエリアルディオ・オストラヴァを、呆れた眼差しで見つめていた。
「番制度の法案が無事に通ったから、次は、竜化が可能な子供達を集めた学校を設立するんだろう?何処から金を出すのかで一悶着しているみたいだけど、その事について私に相談に来るという事自体が腹立たしいよ」
主力の派閥貴族は文字通り溶けてなくなり、今の私には何の後ろ盾もない。離宮でただ飯を食わせるわけにはいかないと言って母上に山のような仕事を与えられているが、幽閉中の今の私には、国庫を動かすほどの力があるわけではないのだから。
「お前は番制度についてどう思う?」
兄の質問に、私は思わず満面の笑みを浮かべた。
「素晴らしい制度だと思うね!」
がくりと項垂れる兄を見ながら、思わず腹の底から大笑いしそうになってしまった。
この度、王国は、番の習性についての研究結果を発表した。
番とは竜人が持つ特性でもあり、生涯の伴侶とも言われているが、今の世の中では希少と言われる存在でもある。
今回、伝説で語られていた異界の龍の復活を前に、それに対抗する手段として多くの先祖返りが生まれたわけなのだが、世界の破滅は免れる事となり、今後は先祖返りが生まれる事も減っていく事になるだろうと発表された。
番を見つける事は素晴らしい事ではあるが、それによって生じる問題も多いことから、この度、制度として以下の事を義務付ける事となる。
(1)番を見つけた場合には、役所にて番の認定を受けなければならない。番は魂の伴侶であり、匂いで判別できるものである。番判定員による正式な認定を受けなければ結婚は出来ない。(番判定は厳粛に行われるものであり、複数名の判定員で判断する。また、万が一にも不正が発生した場合は、重犯罪として処分する事となる)
(2)番による監禁禁止について。重度な愛着行動により相手を監禁した場合、即座に番の保護を行う事とする。両者の話し合いの末、監禁行為に改善が見られない場合は五年の禁固刑を命じる。
(3)重い愛着行動による番の精神的被害について。番の重度な愛着行動によって精神的負担が生じた場合は、役所の相談窓口にて相談をする権利が発生する。窓口の番担当員は夫婦カウンセリングを行い、必要時には番の隔離、保護を行うものとする。
番のカップルを目の前にした私たちは常に、
「どうだ!俺たちは幸せカップルなんだぞ!魂の伴侶万歳!愛する番がいる俺様、世界で一番幸せー〜!羨ましいだろ〜!羨ましいだろー〜!」
と、マウントを取られ、上から目線で言われ、番がいない事を常に憐れまれているような被害者意識を持っていた。その為、
『番なんか糞食らえ!番なんて爆死しろー〜!』
という異界の雌龍の叫びを聞いて、清々しい思いを感じていたのかもしれない。
だけどこの法案の内容を見るに、そんなに番って良いもんでもねえぞと、改めて言われたような気分になって、
「番じゃなくても、それなりに愛する妻がいればそれでいい。平和が一番、それがいい!」
と、思えるようになっていったわけだ。
番の愛に比べれば、それなりの愛は弱いかもしれないが、弱くたって愛があるんならそれでいいじゃないか!強すぎるのも問題があるみたいだぞー!と声を大にして言いたいわけだ。
ちなみに、この法案を作成したのがアンジェラ妃であり、この法案を押し通したのが王妃である母上らしい。国王である父上と兄上は、法案成立に待ったをかけようとしたものの、女竜二人の威圧に負けて黙りこんでいたという話は聞いている。
「実際に、番でもないのに番だと言い出して無理やり女性を自分の物にして、飽きたら勘違いだったと言って捨てるような輩も多かったんだろう?そんな被害が目に見えて減ったっていう報告は受けているから、必要な法案だったと思うね」
役所の番相談員は年配の番夫婦が受け持っているらしく、相談窓口の評判は想像以上に良いらしい。そのうち、番以外の夫婦の相談なんかも来るようになって、世の中にはさまざまな問題が隠れていたのだなと、対応する職員も驚いているらしい。
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